2014-05-14

【「アルコール」「睡眠不足」「テレビ」中毒が、過食・肥満を生む】科学を身近に☆NewStream

旬の話題から自然の摂理が学べる!科学を身近に☆NewStreamです。
今週の科学ニュースを紹介します。

坊さんビア

画像は彼岸寺さんからお借りしました。

今回のテーマは、食べ過ぎ

「過食・肥満は成人病につながる。だから、ファーストフードや高カロリーの食事は極力控えよう」。そんな健康志向が世界的に高まっています。一方で、「わかっていても、美味しいからついつい食べ過ぎてしまう」という声も聞こえてきます。

では、なぜ人は食べ過ぎてしまうのでしょうか?

そんな素朴な疑問に科学的に答えているブログ記事がありましたので、紹介します。

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以下、ロハス・メディカルの記事「食べ過ぎを招く お酒・寝不足・テレビ」からの引用です。

 

 最近、アルコール、睡眠不足やテレビなどの行動パターンが、食べ物による報酬の感受性を高め過食となり、肥満を増やすことがわかりました。例えば、アメリカ人成人の58.9%が1日2時間以上テレビを観ていて、それらの人はエネルギー摂取量が多く、太っています。睡眠不足は、脳の食事に対する快楽の反応を増やし肥満となります。同様に、アルコールも肥満の原因と考えられてきました。

今回、スウェーデンの研究者たちは、これまでに報告された4759もの「アルコール」「睡眠」「テレビ」と食事量に関する論文の中から、最終的に23の適切な論文(アルコールが10論文、睡眠は5論文、テレビは8論文)を絞り込み、解析しました。

(中略)

その結果、アルコール>睡眠不足>テレビの順で、これらの生活習慣が過食に影響することがわかったのです。アルコール、睡眠不足やテレビは肥満の原因ということだけではなく、食べ過ぎの原因なのです。

これら3つに共通することは、私たちの脳内報酬系に関係することです。以前このブログでも甘みと脳内報酬系※1の話題がありましたが、脳内報酬系は環境によっても変化します。

アルコールは、g ‐アミノ酪酸(g-aminobutyric acid: GABA)※2およびオピオイド神経系※3に影響します。脳の脳内報酬系のGABAの変化は、食欲を刺激します。オピオイド神経系は、味覚を通して報酬系の調節をしています。こうした理由で、食前に、アルコール摂取した場合と同じカロリーの炭水化物を摂取した場合では、アルコールを摂取した場合が空腹感が強くなるのです。

睡眠不足でも、脳内の被殻※4、側坐核※5、視床※6、及び前帯状皮質※7といった部分が活性化され、アルコールと同じような現象が証明されています。

テレビに関しては、テレビを観ながら食べていると、より高カロリーな食べ物を食べる傾向にあることが報告されています。理由は、テレビを観ていると、胃から産生されるペプチドホルモン※8であるグレリン (ghrelin)※9 が分泌され、過食になるともいわれています。ただし、グレリンが食事と関係のない映像でも分泌されるかどうかは、まだわかっていません。

こうした脳内報酬系の喜びを繰り返し感じていると、そのうちにこの環境因子と食べ物がつながった記憶を形成します。食べ物によって喜びを感じるだけでなく、食べ物とペアになった環境因子によって、喜びを期待するようになるのです。これは習慣的に繰り返せば繰り返すほど、その記憶は強くなり、食べる欲望が掻き立てられるようになります。つまり、日常的に睡眠不足の状態で食事をしたり、飲酒しながら、あるいはテレビを見ながら食事をしている人ほど、より食べることで脳内報酬系の喜びが強くなっていくのです。特に、飲酒しながら食事したり、テレビを見ながら食事をしている人は、アルコールやテレビそのものが食べる喜びの合図になります。こうした環境因子による食べる喜びの合図は、依存的な過食においても大きな役割を果たしていることが考えられます。

(中略)

※1・・・ヒトや動物の脳において、欲求が満たされた時、あるいは満たされると判断した時に活性化し、「快い」という感覚を与える神経系。

※2・・・アミノ酸のひとつで、主に抑制性の神経伝達物質として脳内の血流を活発にし、酸素供給量を増やしたり、脳細胞の代謝機能を高める働きがある。

※3・・・オピオイドは「脳内麻薬様物質」とも言われ、オピオイド受容体と結びついて神経伝達系を抑制する働きをもつ物質。疼痛に対する鎮痛効果のほか、心血管、呼吸器、消化器等へも作用が認められる。

※4・・・脳の中央部に位置する脳構造で、学習強化に大きく関わっていると考えられている。

※5・・・脳の中でも前脳の両側に1つずつ存在する神経細胞の集団で、報酬、快感、嗜癖、恐怖などに重要な役割を果たすと考えられている。

※6・・・脳の構造のうち、間脳の一部を占める部位。視覚、聴覚、体性感覚などの感覚(嗅覚以外)入力を大脳新皮質へ中継する重要な役割を担う。

※7・・・脳の左右の大脳半球の間の神経信号を伝達する線維(=脳梁)を取り巻く襟のような形をした領域。血圧や心拍数の調節など自律的機能の他、報酬予測、意思決定、共感や情動といった認知機能に関わっているとされている。

※8・・・内分泌機能を持っているペプチド類(アミノ酸がつながったもの)。細胞の核内で作られた後、血液を通し体の細胞のすべてに拡散、それらの標的細胞の表面で固有の受容体と相互作用して働く。

※9・・・1999年に国立循環器病センターの児島博士、寒川博士らによって発見された胃から産生されるペプチドホルモン。脳の下垂体に働き成長ホルモン分泌を促進し、また視床下部に働いて食欲を増進させる働きを持つ。

以上をまとめると、

①「アルコール」「睡眠不足」「テレビ」の生活習慣は、脳内にある快感を与える神経系に影響を与え、食欲を刺激し、それが過食につながる。

②影響力は、「テレビ」<「睡眠不足」<「アルコール」の順で強くなる。

③これらの生活習慣が、相乗的に快感の記憶とつながることで、やがて中毒状態になる。

動物であれば、本能に従って一定おなかが膨れればそれ以上は食べることもなく、むしろ食べれなくなります。

でも、人間の食事は本能以外の様々な要素を含んでいます。単におなかを満たすだけではなく、一緒におしゃべりを楽しんだり(共認の領域)、また、食に関する経験や記憶、知識や評判(観念の領域)も一緒に“食べて”“味わって”います。

アルコールや夜更かしやテレビもその一要素ですが、度を過ぎると過食や肥満、ひいては病気という機能不全につながる恐ろしい存在である、と言えそうです。

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