【地震のメカニズム】現代マグマ説の原点となる石田理論
少し前に、元鹿島建設の技術者、野尻氏が書かれた著作で、「地震は、マグマに溶存した熱解離ガスによる水素爆発である」という記事を書きましたが、同じ様な理論を提唱している著書【巨大地震は「解離水」の爆縮で起こる(石田昭)】を見つけたので紹介します。
著者の石田昭氏は、名古屋大学の元教授で専門は土木。そういう意味では、地盤を専門とする野尻氏とも出自が近い。
いわゆる地震の研究者ではなく、「地盤=現実」を扱う方たちだからこそ辿り着く理論なのかもしれません。
石田氏の理論の前提にあるのは、
・爆発にはexplosion、implosionの2週類がある。
・マントルは溶融している。
・水は、磁力をかけたり、高熱に接触させたりすると「水」は「酸素」と「水素」に「分離(解離)」される
の3点。Explosionは外に向かって爆発する現象。Implosionは内側に向かって爆発する現象で「爆縮」と呼ばれます。。Explosionは僕らがイメージするいわゆる爆発です。Implosionについては後ほど説明します。
石田理論の誕生
上記の考え方から、氏は、
地下水がマグマと出会うような「地球深部」では、相当程度の乖離が進んでいるに違いない。そして分離した酸水素の爆発が地震の正体ではないか?
地震発生の原因は、地中内部のマグマから放出される熱によって、水が酸素と水素に分離すること、そして再び結合して水にもどることで発生する。
と仮説を立てます。分離した水素の爆発は【爆鳴気爆発】と呼ばれますが、これを式に表すと、
【2H2O+(マグマの)熱⇔2H2O+O2】
となります。注目点は体積変化で、爆鳴気爆発は、ダイナマイトのような爆発ではなく体積が3モルから2モルへと変化する、体積の減少を伴う「爆縮(Implosion)」現象となります。
また、地震が発生する場所は、マグマを蓄えている貯留庫(マグマ溜まり)、またはガスを充満させている地下の空隙で、高圧に耐えるボイラーの内部のような場所で発生すると推測します。
もう少し細かく見ると、
・ボイラー内部は水の熱解離が進めば圧力が上昇
・そこで、爆鳴気爆発(Implosion)が起きると一気に体積が減少するため、「ボイラーが破壊される」
・ボイラー破壊はExplosionで、ボイラーの最初に破壊される部分によって、Explosionの方向が決定する(地震の種類が決まる)
との説。
・断層は、爆発の結果、地殻が耐えられなくなって、破断した傷跡。
・余震が継続するのは、水の乖離する度合いが熱と圧力の関係によって変化するために、解離水が安定するまで爆鳴気爆発の化学反応が繰り返される現象。⇒熱解離現象が止まるまでは余震は止まらない。
ディテールは異なりますが、考え方は野尻氏とほぼ同じで、素人の私が読んでいても「なるほど」という内容です。
プレートテクトニクス論に消されたマグマ説
野尻氏、石田氏、そして角田氏が唱えるマグマ説(爆縮説)は、非常に説得力のある理論だと思いますが、現在もなお、プレートテクトニクス論が主流中の主流です。
ところが、歴史を溯ると、ドイツの地理学者フンボルトが19世紀には地震活動と火山活動が同じ現象だと見抜いたり、もっと遡るとニュートンやカントも「地震は爆発現象」だと考えていた。さらにギリシャの科学者でも、地下から「爆風」が噴き出ることを知っていた様です。
一方、日本におけるマグマ説の論文は、今回紹介した彼ら以前は「石本巳四雄博士」のマグマ貫入理論しかない。
~何が原因か分からないが、岩盤の亀裂に爆発的にマグマが貫入することで「地震が引き起こされる」~
これは、戦後にアメリカの地震学会会長も務めたこともあるアメリカ帰りの安芸敬一教授が提起した「断層説」にあるようです。断層説を提起すること自体は悪い事ではないと思いますが、問題はその後「プレートテクト二クス論」が絶対になってしまった事だと思います。力を持った学者が唱えた説がセントラルドグマとなり、他の理論が排除されていってしまう典型でしょう。
この間の追求で、マグマ理論がだいぶ整理出来て来ました。
次回は彼らの理論を整理して、そこから追求ポイントを抽出してみたいと思います。
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