2007-12-31

排出権取引で儲けるのは誰か?

今年もあと数時間を残すのみとなりましたが、京都会議の議長国である日本は、いよいよ来年から議定書の排出削減義務の約束期間に突入します!
今回は、前回の 「クリーン開発メカニズム(CDM)が途上国の環境を破壊?」 に続いて、これら排出権取引のシステムの儲かる仕組みについてちょっと調べてみました。
中国は排出権の世界一の原産国であり、その権利は国家管理されている。政府自身も「わが国は、排出権の世界最大の輸出国になる」と宣言しているほどだ。
これは、京都議定書で定められたCDMと呼ばれるプロジェクトから生み出され、現在では下図のように中国が世界の43%超を占めている。
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一方、中国は今年、アメリカを抜いて世界一のCO2排出国となったらしい。その中国がCO2を出す権利の最大の輸出国で、それを売って利益を上げているというのは、どういうことだろうか?
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CDMとは、そのプロジェクトが行われる発展途上国と、技術・資金を供出する先進国の、両政府の承認が必要で、その上で、最終的に国連がプロジェクトを承認する、というプロセスをとる。
中国はCDMの国連への申請を中央政府でコントロールするだけでなく、それから生まれる排出権の輸出価格をコントロールしているのである。
    
一方、日本政府は2006年予算で、排出権の購入予算122億円を計上した。実際に排出権の購入の実務を行っているのはNEDOという、いわゆる太陽光発電を始め、省エネが図れる新エネルギーシステム等の補助金を出しているところ(新エネルギー・産業技術総合開発機構)である。
これらの予算は当然税金で賄われ、税金の支払い先は、日本の大手商社や中国企業やEUの企業であったりする訳である。
ところで、日本はご存知のように、京都議定書のCO2削減目標を自助努力で達成するのはほぼ不可能に近い状況にある。従って、この排出権の購入が必死の情勢となっている。
こうした日本の状況は、当然、排出権取引に携わる世界中の金融資本家達に知れ渡っている。
これらの金融資本家達にとって、売らざるを得ない人、或いは、買わざるを得ない人がいる状況は、最も金儲けの源泉となる。これに最も長けた一群が、所謂「ヘッジファンド」達である。
日本では、ヘッジファンドはいかがわしいもの、というイメージがあるが、日本の生損保、都銀・地銀など金融法人の約70%近くはこのヘッジファンドへ投資を行っている。
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上図を見て分かるように、イギリスは日本を上回る世界一の排出権の買い手である。そのイギリスは、既に京都議定書の削減目標12.5%に対し、14.1%の削減を実現している。つまり、自国のCO2削減という目的は一切なく、ヘッジファンド達の金儲けが目的である
知られる通り、イギリスのシティは世界中から金融機関と、ありとあらゆる金融情報が集まり、アメリカのウォールストリートと並び世界の金融の中心地である。CDMに資金を貸し、排出権売買の仲介をする金融基地として、シティをその排出権取引の中心地にしようとイギリスは狙っているのである。
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上図の通り、EU域内排出権の価格は半年余りで2倍程度上下している。つまり、これだけ価格が変動しているということは、ヘッジファンドにとって収益機会に恵まれている市場である、ということである。
現在のところ日本は、このEU域内排出権(EU-ETS)を購入しても京都議定書上の削減効果は得られないことになっている。しかし、中国などCER(京都議定書排出権)を持っている途上国はこのEU市場での取引が可能である。
今、京都議定書の約束期間が終了する2011・12年頃には価格が高騰する、ということが金融家達の間で言われ、それに向けてヘッジファンドなどは売り惜しみを始めている。その時、日本政府はやむなく高騰した価格での購入を行うため、さらなる支出=臨時予算の編成を余儀なくされる事態が想定される。
日本は現在、1990年比6%の削減目標に対し、現時点で13.8%の削減を達成しなければならない。京都議定書に定める削減義務は2008~12年までの約束期間の平均値で測られる。仮に、5%だけ排出権で賄うとしても、1990年の総排出量は12.61億CO2tで、5%は6305万tである。つまり、6305万tを5年間毎年買い続けると、50ユーロ/CO2t(EU域内排出権取引価格は将来80~90ユーロまで高騰すると言われている)とすると、2.6兆円となる。さらに厳しく10%未達成とすると、5兆円もの税金を我々は負担することになる。
1990年代、ハゲタカと言われた投資ファンドが日本の大手銀行から担保不動産を簿価の1~2割の安値で購入し、その後転売、ボロ儲けした。当時、欧米金融資本が決めたBIS規制や不良債権比などのルールで日本の銀行は縛られ、二束三文で不良債権を売らざるを得なかったのである。その前に、日本人の税金が8兆円も投入されたことを忘れてはいけない。(詳しくはシリーズ「不動産投資ファンドの成長は続くのか?8」を参照して下さい)
この排出権取引の問題は、もはや環境問題ではなく、日本企業・日本市場が外資に狙われという市場の問題であることを我々ははっきり認識する必要があるのだ!
図及び文章の一部は「温暖化がカネになる~環境と経済学のホントの関係」北村 慶 PHP研究所 より引用させてもらいました。

List    投稿者 simasan | 2007-12-31 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題12 Comments » 

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コメント12件

 kaho | 2008.06.06 3:09

水の枯渇の問題が、赤道付近に偏っていることに意味はありますか?

 エコわらしべ長者@清輔 | 2008.06.06 17:42

はじめまして(^^)
初コメントです!
エコはエコでも「楽しいエコ」⇒エコわらしべ長者☆をしている清輔なつきと申します♪
エコわらしべ長者とは・・・
「マイ箸」から物々交換を始めて、トヨタのエコカー「プリウス」を目指す~って企画です(笑)
http://www.web-ecology.com/
kahoさんのブログはマジメな環境問題をわかりやすく書いていて、さらにランキング上位なのはすごいですね!
普通にびっくりしました!!
僕のほうもネット上の企画なので、たくさんの人に見てもらうことにかかっています(切実。笑)
これから参考にさせてもらいます☆
ステキなブログをありがとうございました♪

 basha | 2008.06.06 22:25

kahoさん、清輔なつきさん、コメントありがとうございます!
>kahoさん
地図は過剰揚水の地域を国ごと色づけしているので横一列みたいに見えちゃってますが、北京などは結構北の方で、赤道付近かどうか、は直接の原因となるような意味はありません。
今回取り上げた地下水の枯渇は、主に降水量の少ない乾燥地で灌漑農業を地下水に依存していることが直接の原因になっています。
>清輔なつきさん
エコわらしべ長者☆???そちらのページにも今度お邪魔して除いてみますね。色んなテーマで追求しているのでまた宜しくお願いします。

 にほん民族解放戦線^o^ | 2008.06.07 2:56

「コモンズ(共有財産)」のことごとくを商品化し、収奪構造を創り出す連中

前回の続きで、今回も「水商売」について書いてみる。
この話題に関する、『「水」戦争の世紀』(モード・バーロウ & トニー・クラーク,集英社新書)という書…

 カルビ☆ | 2008.06.09 22:38

>改めて、現状を前提とした持続可能性の模索や、更なる開発による水資源確保⇒市場拡大に活路を見出そうとする限り、水資源は枯渇していると言っても良い状態に来ているのではないかと感じました。
水資源の問題はすでに、国家レベルを超えた、偏在の調整が必要な段階なんですね。
この方が、二酸化炭素よりはるかに深刻な問題だとおもいます。

 y.suzuki | 2008.06.09 23:02

 中国は別として、アメリカやアフリカ諸国は、GM作物に切り替えたがために、水不足を招いているともいえませんでしょうか?
 収量は増えるけれども、その前提となる水も肥料も大量に摂取しなければならないという悪循環に陥っているように思います。

 basha | 2008.06.10 15:30

カルビ☆さん、コメントありがとうございます!
既に食料の輸入などによってある程度水の偏在の調整が行われていて、その状況を前提に暮らしている国も多い為、一筋縄ではいかない問題ですね。
淡水化や食・水の輸送はエネルギーの問題にも関るし、水の偏在性の調整一つとっても、ジャンルや現状の各国の利権を超えた地球規模の視点で答えを見つけていかなければ、個々に進む水資源開発の加速などで一層問題が深刻化してしまいそうだと感じました。

 basha | 2008.06.10 15:45

y.suzukiさん、コメントありがとうございます!
おっしゃるとおり、GM作物による大量生産・大量消費の影響は大きいと思います。今回は水の大量使用と不足に絞りましたが、大量の農薬による地下水の汚染、塩類集積や自然の循環を超える養分の収奪による土地の荒廃が、悪循環を加速しています。
食糧生産のあり方などもこれまでのやり方は限界を迎えつつあるのではないでしょうか。環境に恵まれている日本などは、いち早く自然の循環に則った生産様式に方向転換できるポテンシャルを秘めているとも感じます。
今後とも宜しくお願いします。

 アベベ2世 | 2009.08.28 15:09

はじめまして。 アベベ2世です。アベベ選手を尊敬しているのでこのペンネームをつかいます。パソコンは初心者です。  北アフリカに興味があります。それで知ったのですが、リビアの人工河川計画は随分馬鹿げていますね。 沿岸部に降った雨を貯留せずに捨ててしまい、消滅しそうなオアシスの地下水に頼っています。この計画を阻止することはできないのでしょうか。                        コメントを入力してください

 アベベ2世 | 2009.08.28 15:09

はじめまして。 アベベ2世です。アベベ選手を尊敬しているのでこのペンネームをつかいます。パソコンは初心者です。  北アフリカに興味があります。それで知ったのですが、リビアの人工河川計画は随分馬鹿げていますね。 沿岸部に降った雨を貯留せずに捨ててしまい、消滅しそうなオアシスの地下水に頼っています。この計画を阻止することはできないのでしょうか。                        コメントを入力してください

 アベベ2世 | 2009.08.28 15:09

はじめまして。 アベベ2世です。アベベ選手を尊敬しているのでこのペンネームをつかいます。パソコンは初心者です。  北アフリカに興味があります。それで知ったのですが、リビアの人工河川計画は随分馬鹿げていますね。 沿岸部に降った雨を貯留せずに捨ててしまい、消滅しそうなオアシスの地下水に頼っています。この計画を阻止することはできないのでしょうか。                        コメントを入力してください

 アベベ2世 | 2009.08.28 15:51

先ほど、手違いで3回も入力してしまいました。ごめんなさい。まあ、年寄りの道楽だと気にしないでください。  コメントを入力してください

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