2021-02-17

ウイルスこそ私たちの遺伝子を構成している存在

地球上には1000穣(10の31乗)個以上ものウイルスが存在すると推定されています。ウイルスは、エネルギーを生み出したり蓄えたりする能力を持っておらず、他の生物の細胞に寄生し、その細胞が生み出すエネルギーを利用して生きています。


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構造はシンプルで、自らの設計図「ゲノム」(全遺伝情報)と、それを包むたんぱく質でできた殻で構成させています。細菌との大きな違いは、細菌は自ら増殖できるのに対し、ウイルスは細胞に感染しないと増殖できないことです。

ウイルスにはたんぱく質を合成する装置がないため、宿主の細胞に感染して装置を乗っ取り、増殖に必要なものを作って外に飛び出し、次の宿主に感染します。ひたすら効率良く設計図を増やす機械のような存在として、地球上にあふれているのです。

人とウイルスの闘いの痕跡は、私たちのゲノムに残っています。ゲノムはあらゆる生物が先祖から子孫に受け渡してきたものだ。ゲノムの一部には、細胞が必要とするたんぱく質を作るための設計図が書き込まれています。

すべての生物のゲノムはDNAからなるが、ウイルスのゲノムはDNAまたはRNAからなり、DNAウイルス、RNAウイルスと呼ばれています。

ヒトゲノムの中にウイルスのゲノムが埋め込まれているとは?
ウイルスは病原体だという認識は間違っている。それよりもウイルスこそ私たちの遺伝子を構成している存在と考えると、内在性ウイルスに介入している可能性がある現状が導く人類の未来は』より引用します。

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ウイルスで人に病気を引き起こすものは全体の 0.00002%以下

新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来のこの約一年間ほどはいろいろと学習しました。

こんなに学んだ時期は、これまでの人生でなかったと思います。内在性レトロウイルスだとか逆転写酵素だとか、それまでの人生で考えたこともなければ、普通であれば「これからも考える必要などなかったであろうこと」を調べたり考えたりしています。

何のために学んでいるのかというのは難しいですが、もしかすると、「サバイバルに必要だからかもしれない」ということなのかもしれないですし、全然関係ないかもしれないです。まあ調べることがサバイバルかどうかはともかく、純粋な意味として、この一年はいろいろと学びました。

しかし、この一年で最も知ったことは、

「私を含めて、いろいろな真実を教えられていないかもしれない」

ということでもあるかもしれないということをさらに知ったというような感じなのかもしれません。

今はウイルスというものが話題となることが多いです。

それで「ウイルスとは何?」というような話となりますと、その定義や性質はともかくとして、多くの場合、無条件に、

「病原体」

というような概念を何となく共に思い浮かべることになると思うのです。

しかし、最近知ったことであり、まあ私が知らなかっただけで、多くの方々はご存じのことなのかもしれないですけれど、事実としては、

「ヒトに病気をもたらすウイルスはごくごく一部」

であることを知りました。

それがどの程度の率の可能性があるかといますと、病原体になるウイルスは、ウイルス全体のおおむね「 0.0002%以下」などのようなんです。実際にはもっと低いと思われます。

以下は、米コロンビア大学の微生物学および免疫学部の教授であり、医師でもあるヴィンセント・ラカニエッロ (Vincent R. Racaniello)さんという方の 2013年の記事からの抜粋です。当時の新しいウイルス研究を紹介しているものです。

地球上にはどれほどのウイルスがあるのだろうか

How many viruses on Earth?
Vincent Racaniello 2013/09/06

地球上にはどれくらいの数の異なるウイルスが存在するのだろうか。今から 20年前、米コロンビア大学の私の同僚でもあるスティーブン・モース博士は、脊椎動物のウイルスが約 100万個あることを示唆した。モース博士は、地球上の 50,000の脊椎動物のそれぞれに約 20の異なるウイルスがあることを想定して、この計算に到達した。

最近(2013年時点)の新しい研究(「哺乳類の未知のウイルス多様性を推定するための戦略」という科学論文の結果は、少なくとも 320,000の異なるウイルスが哺乳類に感染することを示唆している。

哺乳類の未知のウイルス多様性を推定するために、1,897のサンプル(尿、喉の綿棒、糞便、ねぐらの尿)をインドオオコウモリから収集し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってウイルス配列を分析した。

PCRは、9つのウイルスファミリーからのウイルスを検出するように設計され、7つのウイルスファミリーから合計 985のウイルス配列が得られた。これらには、11のパラミクソウイルス、14のアデノウイルス、8のアストロウイルス、4つの異なるコロナウイルス、3つのポリオマウイルス、2つのボカウイルス、および多くの新しいヘルペスウイルスが含まれていた。

次に、統計的手法を使用して、インドオオコウモリが 58の異なるウイルスを保有している可能性が高いと推定し、そのうち 55がこの研究で同定された。

5,486の既知の哺乳類種がそれぞれ 58のウイルスを保有している場合、哺乳類に感染する未知のウイルスは約 320,000になる。

しかし、この研究の対象となったウイルスファミリーは 9つだけであるため、この数でも過小評価されている可能性がある。さらに、PCRは、私たちがすでに知っている既知のウイルスと同様のウイルスのみを検出するため、他の DNA シーケンシングなどの手法によるアプローチにより、さらに多くのウイルス検出が行われる可能性がある。

正しくないかもしれないが、この分析を追加の種に拡張してみれば、62,305の既知の脊椎動物種がそれぞれ 58のウイルスを保有していると仮定すると、未知のウイルスの数は 3,613,690 (361万) に増加する。これはモース博士の推定 の3倍以上だ。

ここに脊椎動物、無脊椎動物、植物、地衣類、キノコ、既知の褐藻の種 1,740,330を含めると、ウイルスの数は 100,939,140 (1億93万)に増加するのだ。この数には、細菌、古細菌、およびその他の単細胞生物のウイルスは含まれていない。

文章はまだ続きますけれど、ここまで書かれてありますのは、この地球には、細菌、単細胞生物などの「最も多く生息している可能性のある生物」を含まない状態で、

「推定で 1億種類以上のウイルスが存在する」

ことになります。

細菌や単細胞生物を考慮すれば、実際にはそれをはるかに上回る種類のウイルスが存在すると見られますが、しかし、ここではこの「 1億種」ということでもう少し進めます。

では、この中で、「人間に感染して感染症を起こす、つまり病原菌となるウイルスはどのくらいか」ということについて、以下は、2012年12月の英エジンバラ大学などの科学者たちによって書かれた論文の冒頭です。

ヒトに感染するウイルス:その発見と出現

Human viruses: discovery and emergence

人間に感染することができることが知られているウイルスは 219種ある。

これらの中で最初に発見されたのは 1901年の黄熱病ウイルスであり、毎年 3〜4つの新種がいまだに発見されている。

発見曲線の外挿は、未発見のヒトウイルス種がまだ存在していることを示唆してはいるが、異なるファミリーからの種の発見率は明らかに減速しており、多様性の潜在的な範囲への限界を示している可能性がある。

実際にはこの最初の一行だけで引用は済むのですけれど、つまり、

> 人間に感染することができることが知られているウイルスは 219種

なのだそうです。

これは 2012年までの時点であり、「毎年 3〜4つの新種がいまだに発見されている」ということですので、今は増えていると思いますが、それでも今でも 200種代だと思われます。

ここから考えますと、大ざっぱな計算では、「ヒトに感染するウイルス」は、すべてのウイルスとの比率で、

200 / 100,000,000

となり、「人間の病気の原因となるウイルスはウイルス全体の 0.0002%以下(あるいはそれよりはるかに低い率)」ということになります。

先ほども書きましたけれど、この数字の根拠となっている推定には、細菌や単細胞生物のウイルスが含まれていないですので、現実の比率はもっと下がるはずです。

この「ウイルスは病気を引き起こすもの」という考え方は、19世紀のパスツールやコッホなどの「病原菌が病気を引き起こす」という理論から始まり、1890年代に実際にウイルスが発見されたことで確定的となりました。

しかし現実には、その後の遺伝子研究、特にヒトの遺伝子の解析が登場して以来、「私たちの体内に常在する(内在性)ウイルス」の存在がわかってきたこと、そして、その種類と量は膨大なものになることがわかるにつれて、「ウイルスは主に病原体」という観念は、少なくとも科学の世界では消えていきました。

私たちの DNA コードそのものも基本的にはウイルス配列からできているそうです。

しかし、今でも一般的な観念としては、「ウイルス、あるいは細菌は病気の原因となるもの」という考えは今でも強いのではないでしょうか。実際には「病原体となるウイルスは比率としてはこの世のごくわずか」なのです。

そして、それとは別にウイルスにはもうひとつの側面があります。

ウイルスは、「私たちの遺伝子を構成している重要な要素」だという点です。

ウイルスこそ私たちの存在そのもの

以下は、2019年3月に、スイスのチューリッヒ大学医学微生物学研究所の研究者が記した論文で、「ウイルスの歴史」的なことが書かれているものですが、その途中に以下のようにあります。

ウイルスと進化 – ウイルスが先なのだろうか?

Viruses and Evolution – Viruses First? A Personal Perspective

今世紀で最も大地を揺るがす論文の 1つは、2001年に行われたヒトゲノム配列の発表だった。

ヒトゲノム配列は、その約半分、場合によっては 3分の2が、多かれ少なかれ完全な内在性レトロウイルスと関連するレトロエレメント(※ レトロトランスポゾン = DNA に組み込まれて存在している「移動する遺伝子配列」)で構成されている。

レトロエレメントは、RNA 中間体から DNA への逆転写酵素ステップを含むコピーアンドペースト(複製して貼りつける)のメカニズムを介して増幅する。さらに、DNA 転移因子は、カットアンドペースト(切り取って貼りつける)メカニズムによって移動する。

レトロエレメントの起源は、ゲノムに進化的に固定された古代のレトロウイルス生殖細胞感染の残骸だという議論がなされている。

約 450,000のヒト内在性レトロウイルスのエレメントは、レトロウイルス・エレメントからなるヒトゲノムの約 8%を構成する。

逆転写酵素の発見者の 1 人であるハワード・テミンは、1985年にすでに内在性レトロウイルス様要素について説明しており、これはヒトとマウスのゲノム配列の約 10%と推定されている。

しかし実際の数は、今日推定されているように約 45%になる。

レトロウイルスは、5億5000万年前に哺乳類のゲノムの系統に入ったと推定されている。

「内在性レトロウイルス」というような言い方は面倒くさいのですが、要するにこれもまたウイルスです。

私たちが産まれてからずっと体内に持っている、それ以前に「人間という種(あるいは他の哺乳類を含めて)」が持っているウイルス。

それにしても、人間(そして他の多くの動物たち)の体の中に、なぜ「その個体が感染したこともないウイルス(の遺伝子)」が組み込まれているのか

それは、現在の学説では、上にありますように「 5億5000万年前に哺乳類のゲノムの系統に入った」というように、つまり、

「大昔にそのウイルスに感染した」

ものが、

「遺伝子の継承の中で今に伝わっている」

という学説が主流です。これが正しいかどうかは検証のしようがありませんが。

いずれにしても、そのようなことにより、そのウイルスの遺伝子が私たち人間の「 DNA に組み込まれ続けている」ということが推定されています。

以前の「コロナワクチンと永遠の不妊社会」という記事で書きました、女性が胎盤を作り出すのに必要なシンシチンというものも同じようなものです。人類は「ウイルスの名残によって子どもを作ることができている」のです。

この現在の学説での推定が正しいかどうかはわからないにしても、仮にこのような学説が正しいとしたならば、重要なことは「遺伝子に組み込まれることが起こり得るウイルスは、レトロウイルスと呼ばれているものだけ」ということです。

最近の記事でも、このレトロウイルスについて書くことがありましたけれど、複雑なことはともかくとして、このレトロウイルスというものだけが、

「通常の生物の遺伝情報の流れの動きとは異なる働きにより、RNA から DNA に情報が組み込まれる」

ということが可能となるようなのです。

(まだ見つかっていない未知のレトロウイルスはともかく)このようなことができる現在の地球のウイルスで、人間に感染するウイルスは「 HIV (エイズウイルス)」だけなんです。

なお、遺伝子治療というものには、このレトロウイルスの奇妙な特徴が使われており、つまり、

> 治療用の遺伝子情報を組み込んだレトロウイルスを異常な遺伝子を持つ細胞内に浸入させる手法がとられている (Wikipedia)

ということになっていますが、今回、ファイザーやモデルナの新型コロナワクチンに使われている方式も、おおむねこれと同じと言えます。大ざっぱにいえば、「遺伝子情報を、遺伝子を持つ細胞内に外部からワクチンと共に浸入させる」わけです。

全体を通して、何を言いたいのかがよくわからないと思われるかもしれないですが、先ほどのような学説、つまり、人間の中にあるレトロウイルスが「大昔に哺乳類のゲノムの系統に入って以来、現在まで遺伝子に存在し続けている」という主張が仮に正しいとして、そういう性質があるとするならば、

「一度、ヒト(あるいは哺乳類)の DNA に組み込まれた遺伝子情報は、《継承される遺伝子として世代を超えて受け継がれる可能性がある》のではないのだろうか」

というようなことです。

遺伝子治療あるいは、mRNA ワクチンによって体内に入れられた遺伝子情報が DNA に組み込まれ、「次の世代、また次の世代へと伝わる」ということはないのだろうかと。

実際、先ほどのチューリッヒ大学の研究者は、同じ論文で、以下のように書いています。「 HIV もいつかは人類が本来的に体内に持つ内在性ウイルスになるのではないか」というような意味です。

2019年3月の論文より

レトロウイルスの統合は、通常、ウイルスのライフサイクル中の必須のステップとして、感染後の体細胞で発生する。生殖細胞の感染は次世代への感染につながり、最終的には遺伝性の耐性をもたらす可能性がある。

内在性レトロウイルスは、外因性の対応物に対する耐性を引き起こした可能性があり、同様に、いくつかのサル種におけるサル免疫不全ウイルス(SIV)に対する耐性も、内在化によって説明することができる。

HIV も最終的にヒトゲノムに内在化する可能性があると推測される面がある。HIV がヒトの生殖細胞に感染し、胚のゲノムに感染する可能性があるという証拠がいくつかある。このようになるまでどのくらいの時間がかかるかは不明だ – 10世代などになるだろうか。 (PMC

さて。

そして結局、示したかったことは最近のいくつかの記事でご紹介した以下の論文と関係します。この論文の内容が正しいかどうかは現時点ではわかりません。ただ「可能性はある」ということになります。

SARS-CoV-2 (新型コロナウイルス)の RNAは 逆転写され、ヒトゲノムに組み込まれる
SARS-CoV-2 RNA reverse-transcribed and integrated into the human genome

以前の記事「地球は巨大な実験場に…」に、この概要を翻訳したものを載せましたけれど、

「新型コロナウイルスがレトロウイルスである可能性」

をこの論文は書いているのです。

論文には、以下のようにあります。

SARS-CoV-2 感染のこの新しい特徴は、患者が回復後もウイルス RNA を産生し続けることが可能である理由を説明し、 RNA ウイルス複製の新しい側面を示唆している可能性がある。 biorxiv

完治したとされた後も、コロナウイルスを作り出し続けるという可能性を示しているもので、これに関しては、「あまりにも多い多彩な症状の後遺症の事例」なども思い出しますが、それはともかくとして、現在の学説のように、「ヒトの中に存在しているレトロウイルスが過去の感染から来ている」という可能性があるのだとしたら、

「現在のヒトに感染することのできるレトロウイルスは、何世代か超えた後に、生まれつき持つものとなっている時代が来るのかもしれないという可能性」

を思ってしまったのです。

先ほどのスイスのチューリッヒ大学の研究者は、

「 HIV も最終的にヒトゲノムに内在化する可能性があると推測される」

と記していますが、もし仮に新型コロナウイルスも、 HIV と同じレトロウイルスだった場合は今後どうなるのだろうと。

現在、「ヒトの DNA に遺伝子情報を外部から注入するコロナワクチン」が、すでに数千万人、あるいはそろそろ一億人ほどに使用されています。

RNA そのものはすぐに消えるでしょうが、仮にそれが逆転写を起こすものであった場合は? その場合、「組み込まれた遺伝子情報」は?

直後の副反応や副作用は、その懸念からみれば、大きな事象とは考えられないかもしれません。

今回ご紹介したようないくつかの論文や学説から、このような暗い人間社会の未来を思い浮かべることは良いことではないと思いますし、これが単に理論的に破綻した私的な戯言だといいのですが…。

人類社会全体が極度に緊張した局面にあるような雰囲気も感じなくはないです。

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