2023-02-10

不安定な国際情勢にも災害にも強い「合成燃料」、脱炭素の石油を増やす・つくる。

前々回の本ブルグの記事「世界のエネルギーの動き~日本が中東諸国に依存するのは何故か?~」では、日本の石油の92.5%を中東諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦UAE他)から輸入していることが分かりました。また、前回の記事「これからのエネルギー覇権は?世界、そして日本のエネルギー動向のいま。」で、エネルギー自給率の低い日本が今後目指す方向は、「自給型エネルギー国への転換」であることがハッキリしました。
ここ最近、電気やガス料金等が高騰する中で、省エネルギー庁も「みんなで考えよう、エネルギーのこれから」等のCMを流し、今後の日本のエネルギー問題への提起を行っています。

また、海外を見るとロシアのウクライナ侵攻による欧州を中心とするエネルギー問題から始まり、現在、イスラエル(+サウジアラビヤ)VSイランの戦争の火種が大きくなりつつあります。もしこの戦争が勃発すれば、石油の大半を中東の輸入に頼っている日本は、エネルギー費高騰どころではなく、産業も家庭も物流も大打撃を受けます。

一方で、世界的な脱炭素の圧力の中で日本の新エネルギー技術への追求も進んでいます。今回は、その中で石油を中心に新たらしい技術「合成燃料」の研究開発状況を紹介します。
(トップの画像は、こちらからお借りしました。)

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●中東と日本、昔からの硬い信頼関係

日本は石油の9割以上を中東から輸入しています。またその契約も長期契約であり、通常の2~30年長期契約を超えて、最近では更なる長期契約へと延長され関係が強固になっています。→リンク

この関係は石油ショック前後の頃から、日本の資金と技術でUSEの石油採掘を行った頃から継続しています。

アブダビ海上油田 (画像は、こちらからお借りしました。)

●イスラエル(+サウジアラビア)VSイラン戦争勃発??

イスラエルとイランは1979年のイスラム革命以降、対立状態にあります。今回、前首相のネタニヤフ氏が首相に復帰し、サウジアラビアのムハンマド皇太子を巻き込み、対イランとの関係が急激に悪化しています。

参考:「イスラエルがいま戦争の準備を整えている! ネタニヤフ首相のIRGC包囲網が始動でイラン暴発寸前                        画像は、こちらからお借りしました。

仮に戦争に突入した場合、日本は、中東からの輸入がストップし、日本の家庭・産業・物流は大打撃を受けます。エネルギー費高騰どころではなくなります。

日本の現在の原油備蓄量は239日分(産油国共同備蓄量:5日分共)です。→リンク

この限界を超えると、すべてが止まってしまいます。今後の中東状況に注視が必要です。

*このような不安定な状況から脱出する新しい動きについて紹介します。

 

●「合成燃料」の可能性と開発・実用化への期待が急上昇!

日本はこの間、脱炭素の圧力の中で、2050年カーボンニュートラルを目標に、太陽光・風力から地熱、SAF、合成燃料、メタネーション、微生物発電等の再生可能エネルギーや核融合等の研究・開発が急ピッチで進んでいます。その中で特に今回注目したいのが「合成燃料」

水素とCO2をもとにガソリンや軽油、灯油、重油等を作り出す技術です。

上図にある合成燃料は、「水素」をどうやってつくるか?が重要となります。太陽光等の再生可能エネルギーの電力を使った電気分解から水素をつくればグリーン水素として認められ脱炭素技術として有効ですが、大量の太陽光等による電力が必要となります。また、CO2をCOに還元する逆シフト反応やFT合成反応等の技術の確立が重要となります。

以下、省エネルギー庁HPより今後の課題。→リンク

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○合成燃料の課題とこれから

現在、合成燃料がかかえている課題のひとつは、製造技術の確立です。今の製造技術には製造効率の問題があり、効率の向上が課題となっています。革新的な製造技術としてさまざまな方法が研究開発の段階にあり、今後の実用化が期待されています。

合成燃料のもうひとつの課題はコストです。現状では化石燃料よりも製造コストが高く、国内の水素製造コストや輸送コストを考えると、海外で製造するケースがもっともコストをおさえることができると見込まれています。しかし、合成燃料のコストは、「脱炭素燃料である」という環境価値をふまえて考えるべきものです。既存の燃料と単純な比較をおこなうことは適切ではなく、将来性のある代替燃料として研究開発を続ける必要があります。
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*この製造技術とコスト問題を根本的な部分から解決するのが、以下の2つの技術です。

今ある油をCO2を使って増やす⇒【ドリーム燃料製造装置】

ここで注目したいのが、先月大阪で実証実験を行った「ドリーム燃料製造装置」

参考:「大阪市:水と大気中のCO2等から生成する人工石油(合成燃料)を活用した実証実験を支援します。」→リンク

大阪での実証実験の様子は、こちらのビデオ→リンク

(資料:サスティナブルエネルギー開発 )

この技術は、今ある油(軽油、灯油、重油等)を種油として水とCo2と光触媒による反応により油の量を増やす技術です。水素をつくる大量の電力も不要であり、製造過程で空気中のCO2を吸収し脱炭素燃料となります。コストについても既に十分実用化レベル。

興味にある方はこちら参照。→ドリーム燃料製造装置:石油製造の全工程のビデオ→リンク

(株式会社 アイティー技研 京都大学名誉教授 工学博士 今中忠行氏)

製造した油の利用は、自家消費に限定しているため、脱炭素油を自家発電や冷暖房、輸送に利用でき、石油危機を含めた災害時にも強いインフラとなります。

 

●藻が下水中の有機物を食べて石油になる。バイオ原油

この技術は、下水中の有機物を藻が食べて、その藻がバイオ原油になるという技術です。

筑波大学共同研究フェロー:渡邉信氏が研究開発。

                       上記図は、こちらからお借りしました。

 

下水処理では、有機物や窒素、リンを取り除くために膨大なエネルギーが必要となります。

この処理をまず「藻」が行い、その藻を使って原油を作る技術です。

日本には2000か所以上の下水処理場がありますが、仮に3分の1の処理場で藻類を培養し、原油生産の生産ができれば、日本の年間輸入量に相当する1億3600万トンの原油が生産可能となります。

 

■まとめ

・日本のエネルギー資源(原油、天然ガス等)は主に輸入に頼っているため、

 諸外国の政治状況に直接・間接的に今後も大きく左右される。

・エネルギー安全保障面でも、より安全な新エネルギーシステムの構築が急がれる。

・またそのエネルギーシステムには、世界的な脱炭素圧力を避せる能力が必要となる。

 石油:合成石油(液体合成燃料)の製造、天然ガス:メタネーション(気体合成燃料)

 石炭:アンモニア混焼→専焼、水素燃料の製造etc

・どの分野でも、日本は先頭を走る追求力と技術、能力をもっている。

・完成した新技術は、実証実験から実用への動きが今後重要となる。

List    投稿者 yooten | 2023-02-10 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題No Comments » 

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