2016-09-08

太陽フレア(→プラズマと磁場の放出)による地球環境への影響

太陽フレアによる地球環境の影響2016.09.08

太陽表面で起こる現象のうち、最も激しいのは太陽黒点の近傍で発生する「太陽フレア」と呼ばれる巨大爆発現象。

太陽フレアが起こると、そこからバラバラになった原子核(プラス電荷)と電子(マイナス電荷)の高エネルギー荷電粒子の塊(プラズマ)が、指向性を持って飛び出す。プラズマは磁力線の動きに敏感に反応し、逆に磁力線はプラズマの動きに敏感に反応するので、どちらかが動けば、それにつられて片方も動くという関係にある。そのためプラズマが放出する時、強い磁場も一緒に放出される。

太陽フレアによってプラズマと磁場の塊が放出されると、大きく膨張しながら宇宙空間を移動し、地球を含む太陽系の惑星周辺の宇宙環境を大きく乱す。その大きさは、太陽を出発後すぐの状態ですら地球の大きさの数百倍の大きさで、もし地球に飛んできてしまった場合は、地球全体がプラズマの巨大な塊にすっぽりと包み込まれ、地球を含む周辺の宇宙空間の磁場が大きく乱され放射線環境も変わる。

太陽フレアの発生機構は解明しきれていないが、その影響は、大気圏外の人工衛星の通信障害、地球上のインフラ障害や、放射線による人への健康被害にも及ぶことが報告されている。

(これは推測だが)高エネルギーのプラズマと磁場による宇宙規模のエネルギー変動を考えれば、地球の異常気象や長期気象、さらには地震・火山噴火などへ大きく影響している可能性はある。

これは今後追求していくが、今回はまず報告されている現象について。

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【1】プラズマ(荷電粒子)による影響

①人工衛星

宇宙衛星、GPS衛星、通信衛星、放送衛星など、地球周辺の宇宙には数多くの人工衛星が周回している。太陽フレアによって降ってくる荷電粒子は大気が受け止めるが、大気外の宇宙空間を飛行している人工衛星には荷電粒子が直撃することがあり、精密な電子回路を破壊し人工衛星を故障させてしまうことがある。

太陽フレア後にBS放送がしばらく中断するというようなことも実はたびたび起こっている。人工衛星の操作は地球から指令(コマンド)を送信することによって行うが、荷電粒子が当たって電流が流れてしまうことで、地球から何か指令が送られてきたと勘違いし、想定外の動作をしてしまうことがある(ファントムコマンド)。そのほかにも、人工衛星の電力源として使われている太陽電池パネルの発電効率を落とすこともある。

②人への放射線被爆

地球には、太陽から飛んでくるプラズマや磁場に対し、楯の役割をする地磁気や大気があるが、太陽フレアによる高エネルギーの荷電粒子(すなわち放射線)は、地上にいる人への放射線被爆に影響する。特に、地磁気の磁力線が根を下ろしている「極域」は放射線が降り注ぎやすくなっている。

極域は、厳密には北極・南極からずれており、北極よりアメリカ側に少し南下した位置にあるが、地磁気の極は常に一定ではなくゆっくりと移動しており、例えば、数百年前には日本や韓国にオーロラの記録がたくさん出てくる時代がある(※オーロラは、地球の極域に向かって降り注ぐ荷電粒子を大気が受け止めることによって発生する)。人への放射線被爆は、北極・南極地域だけの影響とはいいきれない。

【2】磁場による影響

① 1989年3月、カナダ・ケベック州、大停電、被害は600万人

太陽フレアによって磁場が地球に押し寄せると、地球を取り囲む地磁気全体が大きく揺さぶられ(磁気嵐)、地球大気の上層に強い電流が流れる。その影響が強い場合、地表近くにある電気を通しやすい物質に電流が流れてしまうことがある。たとえば、パイプラインに電流が流れ劣化を早めたり、変電圧器に想定外の強い電流が流れ送電網システムが停電してしまうことが知られている。

②2000年7月14日、X線天文衛星「あすか」の落下

地球大気の上層に強い電流が流れると摩擦熱が発生し、大気の上層が加熱によって膨張する。その場合、宇宙空間の大気すれすれを飛行している人工衛星は、飛行している軌道の高度が下がってしまう。これにより人工衛星「あすか」は姿勢を崩し、太陽電池パネルが地球側を向いてしまい、姿勢をもとに戻そうにも電力が確保できずに落下した。

③2001年、成田空港の通信障害

GPSシステムは、人工衛星から発信されている電波をキャッチして現在地を推定しているが、磁気嵐の影響で、大気の上層にある電離圏が変わり電波が届きにくくなると、人工衛星から電波が届くのに余計な時間がかかり、人工衛星から実際よりも離れたところにいるとシステムが勘違いしてしまうことが起こる。太陽フレアの影響でGPSシステムの誤差が大きくなると、正しい現在地が表示されなくなる。車の場合はそれほど影響は大きくないが、GPSシステムを使っている航空機などへの影響は甚大になる。

④1986年2月、カナディアンロッキー列車事故

短波を用いた通信は、大気の上層にある電離圏で短波が下向きに反射され信号が伝わるが、X線や紫外線が電離圏の状態を変えてしまうことで短波が吸収されやすくなり、通信の信号が届かなくなってしまうことがある。単線をふたつの列車が走っていたカナディアンロッキー列車の事故は、太陽フレアにより無線信号の通信やりとりがうまくいかくなって、正面衝突の事故が発生してしまった。

 

 

※参考文献:「地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか」宮原ひろ子 著

 

List    投稿者 asaoka-g | 2016-09-08 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題No Comments » 

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