【自然に学ぶエネルギー!?省エネ編】科学を身近に☆NewStream
旬の話題から自然の摂理が学べる!科学を身近に☆NewStreamです。
今週の科学ニュースを紹介します。
(画像はコチラからお借りしました。)
今年の冬は「気候シリーズ:2012年の気象を振り返る」で紹介した通り、寒い冬が続きそうです。
寒い日が続くとついつい、家にこもって暖かい鍋をつつきたい気分になりますね。
一方で1月に入って電力需要が90%を超える日が続き、最高需要を記録しています。
原発事故以降の節電意識もあいまって、エネルギーに対する関心が高まっているように思います。
そこで今回は「自然に学ぶエネルギー」と題し、自然界を生き抜く生物たちの持っている機能を模倣することで、高い効果を上げている事例を紹介します。
この考え方はバイオミミクリーと呼ばれています。
バイオミミクリー(biomimicry)とは、単語を分解してみればわかるとおり、bio(生物の)+ mimicry (模倣)ということで、生体の機能を模倣することです。
いつも応援ありがとうございます。
第一回目は省エネの事例について紹介したいと思います。
アリ塚と空調、自然に学ぶエネルギーより引用
シロアリのアリ塚(写真上)は、いわば小さな都市である。地下にまでトンネルが縦横に張り巡らされ、数十万匹が暮らす。さらに、内部の温度をほぼ一定に保つ仕組みが備わっているという。アフリカ南部のジンバブエでは1996年、シロアリの知恵を空調に応用したビルが建設された。
首都ハラレにある複合商業施設、イーストゲートセンター(Eastgate Centre、写真下)は、同国の郊外で見られるアリ塚の構造を取り入れているという。
イーストゲートセンターは「パッシブクーリング(受動的冷房)」システムを完備した初の建築物。冷却装置のコストは従来の10%で済み、エネルギー消費もハラレ市内の同規模の施設と比べて35%も少ない。日中に建物の壁で熱を吸収し、夜間にファンを使用して内部へ送り込む仕組みだ。
しかし同施設の設計から20年の間に、アリ塚の機能についてさらに多くの発見があったという。アメリカ、ニューヨーク州シラキュースにあるニューヨーク州立大学環境科学森林学カレッジ(College of Environmental Science and Forestry)の生物学教授スコット・ターナー(Scott Turner)氏は次のように話す。
「イーストゲートセンターの建設に採用されたアリ塚の構造は、約50年にわたり標準的なモデルと考えられてきた。しかし、実はほとんど間違っていたのだ」。ターナー氏は施設が「非常に効果的」と認めているが、アリ塚内の空気の移動は一方向ではなく、肺の吸入と吐出のサイクルに近い。正しい構造の理解を深めれば、「風を取り込んで温度調節を行う今までにない画期的な手法の確立」につながるという。コンクリートの壁に小さな通気孔を設置して風を取り込み、そのエネルギーを既存の換気システムで利用する方法を同氏は考えている。
冷却装置のコストは従来の10%で済み、エネルギー消費もハラレ市内の同規模の施設と比べて35%も少ない。という効果には驚きですね。
ではどのような仕組みなのか?
シロアリ塚に学ぶ自然換気1より引用
その仕組みは2つに分けて捉えることができる。そのひとつは流体力学において、スタック・イフェクト、煙突効果と呼ばれる垂直方向の空気の動きをつくる仕組みである。一般に暖められた空気は上昇する。暖められた空気は密度が下がり比重が軽くなり上昇する。煙突のように垂直に伸びる空間の中を空気が上昇しているとき、それによって減少した気圧、すなわち負圧はより下部の空気を引き上げる。この現象が煙突の全長に渡って働くことで、煙突の空気はその下から空気の供給を受け続け、上昇し続けるのである。(中略)
もうひとつの仕組みは、負圧を利用した自然換気である。(中略)
風が地上を吹くとき、上空の風速よりも地面に近いところでの風速の方が遅い。地面表面の「荒れ」が風を妨げるからだ。地面の風への影響は上空にいく程弱まる。概ねそれは対数関数的に減少する。このように地面からの風速への影響が無視できない高度の領域を境界層と言う。境界層では高度が高いほど風速が速くなるのであるから、シロアリ塚の同じ側面上であっても、高さが高い部分の方が低い部分に比べて、圧力が低くなることになる。なぜならベルヌイーイの定理から流速が速いほど圧力が低くなるからである。シロアリ塚はまさしく「タワー」となることによって、負圧の部分にさえ相対的な圧力の違いを生み出す。そして塚の表面は穴だらけである。こうしたシロアリ塚はその表面に生まれたどんな圧力の違いも見逃さない。表面に生まれた圧力のエネルギーを最大限に自然換気のエネルギーへと変換していると言える。
シロアリは環境の変化にとても弱い生物であるため、とても狭い範囲の温度や湿度でしか生きることができない。温熱環境を自分に有利に保つことができる環境を見つけることができなければ生存できない。また、塚の中に強制的に酸素を吸入する装置が無ければ、シロアリも窒息死してしまう。これは人間が建物を作るのとまったく同じ状況です。
人間とは違い観念機能を持たないシロアリは本能のみで巣を作っているにもかかわらず、自然の摂理の観点からみても機能的な巣になっていることには驚きです。
■ポイント
①動物は本能で自然の摂理に沿った本能を持っている
②動物の生態を模倣することで、効率の良いシステムとすることができる。
このバイオミミクリーという自然の摂理に学ぶという姿勢は、上記の事例以外にも様々な分野で応用できそうです。
明日は発電に関するバイオミミクリーを紹介します。
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