2023-04-22

ナノレベルまで木を資源として活用し、自然循環の中での資源活用へ

前回の記事では世界のエネルギー価格動向と価格決定構造について紹介しました。

(前投稿:『世界のエネルギー価格変動は何故おきるのか?世界の価格決定権構造と今後の動向。』)

エネルギーを始めとして、資源供給が世界の動向に左右されるリスクから脱するため。また、脱炭素社会に向けた取り組みが進む中では、様々な非石油由来原料への転換が必要になります。

近年建築業界でも、コンクリートや揮発性有機化合物のような人工素材が健康に与える悪影響の課題意識、木の特性から、自然循環の理にかなった木素材が再度着目され、木造化や木質化の潮流があります。 (参考:『コンクリート建築信仰の崩壊…自然の摂理にかなった伝統的木造建築への回帰』)今回は木資源に着目してその可能性を探ります。
木を資源とした身近な加工品には、
・建物木建材や家具
・食器や仏壇、楽器、工芸品などの日用品
・エネルギー資源としての木質バイオマス
などがありますが、身近な製品はまだまだ石油由来原料の加工品に頼っているのが現状です。

●非石油由来原料、木質バイオマスなどの非可食性バイオマスを原料とした化学品の可能性
 

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非石油由来原料への転換のひとつとして、非可食性バイオマス(草や樹木を原料とした資源)の利用が挙げられます。非可食性バイオマスを基幹化学品に加工し、様々な化学製品の生産につなげる基盤技術開発が進められています。

リンクより画像をお借りしました。

木質バイオマスのうち、製材工場の残材や住宅解体材は90%以上再利用されていますが、間伐材などの未利用材は運搬にかかるコストの面や林道などの路網の未整備などで、活用されているのは発生量の3割程度にとどまるといいます。

こうした未利用材を木質バイオマスエネルギー活用のほかにも、木材の新たなマテリアルとして利用する技術開発が進んでいます。そのひとつとして注目されているのが、「セルロースナノファイバー(CNF)」です。
木材などの植物繊維の主成分であるセルロースをナノサイズ(1mmの百万分の1)にまで細かく解きほぐすことにより得られる木質バイオマス資源です。

リンクより画像をお借りしました。

 軽量・頑丈・寸法が安定といった特徴を兼ね備えることから、新たな機能を持つ素材として期待され、その製造方法の研究及び用途開発が国内外で盛んに行われています。環境省リンク
現在、水系用途(親水性)CNF の用途では、複数の用途が製品・実用化されています。例えば、住宅・建設用途では漆喰壁材など。
そして、プラスチックへの添加など CO2 削減効果の高いと考えられる複合材料用途においては、実用化に向けて実証等が進められている段階のもの。例えば、自動車NCV(Nano Cellulose Vehicle)リンク
などがあり、その他家電用途、医療用途、食品用途で実用や実証の取り組みが広がっています。

しかし、CNF等の非可食性バイオマスの普及に向けた最大の問題は、既存材料と比較すると高価(3,000~10,000円/kg)であることです。CNFの価格を下げるためには、量産効果が得られるレベルで大量に消費する用途を見つける必要があります。

●ナノレベルまで木を資源として活用し、自然循環の中での資源活用へ

木は原始より人間のくらしと共にあり、日本では、生活の基盤となる家をはじめ、生活の道具である家具、工芸品など、それぞれの時代の生活文化や生活様式を代表するものの多くが木製でした。私たちの生活に深く根付き、文化として受け継がれています。

一方で、近年に至るまで、木の活用は木を切って加工するのに留まっているのも現実課題としてあります。木の特性や、木の状態によって、エネルギー資源として活用するのか、ナノレベルまで分解して活用するのか。適材適所を検討し、木を持続可能な資源として使いつくすことが、世界の情勢に左右されない資源の安定供給と国内の豊富な森林資源を活用したカーボンニュートラル実現につながるひとつの可能性なのではないでしょうか。

List    投稿者 tutizawa | 2023-04-22 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題No Comments » 

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