2019-10-16

気候変動の海洋への影響が、この地球を“破滅”に導く?

人類に落日が訪れるとき、死をもたらすものは地球を焦がす小惑星ではない。わたしたち人類のあとに登場する誰か、あるいは“何か”は、人類を定義する文書を発見することだろう。その文書とは、マグナカルタをはじめとするさまざまな国家の憲法や国際条約、古典的な物語などです。

そこに最近になって加わったのが、国際機関である気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の一連の特別報告書です。

最新の「変化する気候下での海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書(海洋・雪氷圏特別報告書)」では、この地球の気候変動は南極の氷を溶かして海面上昇を招き、海の生態系に影響を及ぼす。気温上昇によって永久凍土が溶ければ温室効果ガスが放出される悪循環になる──。と警鐘しています。

『気候変動の海洋への影響が、この地球を“破滅”に導く? 国際機関の特別報告書から明らかに』より引用します。

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加速する海面の上昇

「海洋・雪氷圏特別報告書」の主旨は、気候変動とは海洋の変化であるということだ。海が大気中の熱を吸収し続けると、海の熱波が生態系を破壊し、雪や氷が減って水の供給が危うくなる。

海の温暖化の勢いは1970年から衰えず、気候システムに加えられた過剰な熱の90パーセント超を海が吸収している。IPCCのコー・バレット副議長は記者会見で報告書について言及し、「自然や人類に与える影響は広範かつ深刻である」と述べた。

海洋における気候変動の最も顕著な影響から見てみよう。それは世界の平均海面の上昇である。世界の平均海面は1902年から2015年に16cm上昇した。だが、この上昇率は年々、増加している。2006年から15年は1年当たり約3.6mmで、1901年から1990年の1年当たりの値の2倍を超えている。

また、いまのところ沿岸部の低地の人口は総計6億8,000万だが、今後30年間で爆発的に増え続け、10億を超えると予想される。そしてその30年に、多くの低地の大都市や島々で、かつては100年に一度だった海面水位の極端現象、例えば生命を脅かすような高潮が、なんと毎年発生し始めるかもしれない。

 

南極の氷や凍土が溶け、雪が減りつつある

海面上昇のペースが速くなっているのは、氷床が主にグリーンランドや南極で加速度的な速さで溶けているからだ。南極の氷床について、わたしたちは非常に憂慮せざるをえないだろう。南極の氷床は温暖化という破壊的な影響のせいで崩壊しかねないのである。

南極の氷床が崩壊したら、どうなるか。「今後2~3世紀で海面が数メートル上昇する可能性があります」と、「海洋・雪氷圏特別報告書」の統括執筆責任者レジーネ・ホックは記者会見で語っている。

「現時点で予想される上昇は1mまでです。しかし温暖化のあらゆる過程において、いまだにさまざまな不確実な要因があるせいで、フィードバックメカニズムが作動して温暖化のサイクルが増すと、海面上昇の具体的な数値を予測するのは極めて困難になります」

永久凍土も迫り来る危機である。報告書によると、北極と寒帯の永久凍土は1兆6,000億トンの有機炭素を封じ込めている。これは大気中の炭素量のほぼ2倍に当たる。

そして永久凍土の温度は記録的な高さまで上昇している。永久凍土が広範囲に溶け出すと、悪循環が始まる。永久凍土に封じ込められていた炭素が放出されてさらに温暖化が進み、永久凍土が溶け出すのだ。北極は地球上のどこよりもすさまじい勢いで、温暖化に見舞われている。

それから雪の問題もある。「山岳地域のほぼ全土、特に低地で、積雪の深さ、面積、期間がいずれも減少しています」と、報告書の統括執筆責任者ハイジ・ステルツァーは記者会見で説明している。「雪は素晴らしいものですが、少なくなっています。以前よりも遅く降り、早く溶け、地面に積もらなくなっています」。溶ける雪が少ないと、飲料水や農作物のかんがい用水が不足し、水力発電ダムの出力が減りかねない。

 

温暖化が海の生態系にも混乱

海洋では、温暖化が生態系に混乱を引き起こしている。報告書によると、海洋熱波の発生回数は過去40年間で2倍になり、激しさも増している。海洋生物の系統樹に及ぼす影響は恐ろしいことになっている。

海水は温度が高くなると酸素量が減り、酸欠海域が発生する。現在の生息地から避難する能力がある生物は新たな生息環境を見つけることを余儀なくされる。事実、さまざまな生物種が熱を避けて極地へ移動している。1950年代以降、10年当たりで計算すると、水深200mまでの海の表層に生息する生物は52km、海底の生物は29km移動している。

事態をさらに複雑にしているのは、海の生物はいずれも孤立して生息できない点だ。ある種にとって最適な獲物が死に絶えたり、遠くに離れていったりすると、新たな食物源を見つけられず、苦境に陥る。

「わたしたちが観測する限り、海の生物種はかく乱されています」とエミリー・ピジョンは言う。環境NGOコンサヴェーション・インターナショナルの海洋プログラムを率いるピジョンは、今回の報告書には関わっていない。

「海の酸性度は変化しています。温度も変化しています。そして海の構造も、例えば塩分の度合いや、表層から深海までそれぞれの水深での温度も変化しているのです。生物によって獲物にする生物が異なるので、被食者が新しい場所へ移動すると捕食者も移動しなければなりません。海の中で生物の大移動が起こっているようなものです」

 

脅かされる魚類資源

海洋生物のこのような移動は、水平方向にも垂直方向にも生じている。北極あるいは南極へと水平方向に移動するほか、変化する海洋の水柱の中で最適な場所を見つけるために垂直方向に移動するのである。

 こうした移動は、わたしたち人類の主たる食料源である魚類資源を脅かす。「魚類の生命が海洋や雪氷圏とどれほど密接につながっているかについて、人々が理解しているとは思えません」と、コロラド大学ボールダー校の海洋科学者カサンドラ・ブルックスは話す。ブルックスも今回の報告書には関わっていない。

「人間が吸収している酸素は事実上すべて、海の植物プランクトンから生じていることをわかっていないのです。海の生物がもたらしてくれるそうしたすべての恩恵をわたしたち自身が妨げるなら、気候はいまよりもっと温暖になってしまいます」

資本主義のせいで実際にはそうするはずはないが、仮に明日、温室効果ガスの排出をやめるとしても、海の温暖化は止まらないだろう。温室効果ガスの排出を低減したり、低排出の筋書きに従ったりしても、温室効果ガスの熱はますます猛烈な速度で海に注がれることになる。

「この報告書は実に気がめいる内容ではありますが、正直な話、行動を起こす実際のきっかけになると考えられるとも思います」とブルックスは続ける。

 

海を守ることが急務に

何よりもまず、わたしたちはできるだけ速やかに二酸化炭素の排出をゼロにしなければならない。だが、もっと積極的に海の環境を改善することもできる。具体的には、沿岸のマングローヴの生態系や湿地帯を元の状態に戻すことである(人類は20世紀にマングローヴなどの半分を破壊した)。マングローヴも湿地帯も高潮の天然の防波堤になり、二酸化炭素を封じ込める。

また、農業廃水をこれまでよりも巧みに処理しなければならない。汚染された農業用水が海に流れ込むと、大量の青粉を発生させる栄養源となる。青粉は水中の酸素を吸い取り、海の生物を大量に死滅させる。

「この報告書を読んでいるとかなり落ち込みます」とピジョンは言う。「わたしにとって、報告書のメッセージは明らかです。気候変動は海洋の変化なのです。いままでわたしたちは、海が気候システムの一部であるとは考えませんでしたが、考えを改める必要があります」

この最新のIPCCの報告書が誇りをもって後世に残せる文書ではないことは、明らかだろう。

List    投稿者 asaoka-g | 2019-10-16 | Posted in D.地球のメカニズム, D02.気候, G.市場に絡めとられる環境問題No Comments » 

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