破壊される人類に共生する細菌
ヒトの 体は約 60 兆個の細胞から構成されていますが、一方、我々の腸管、口腔、体表などには 100〜1000兆個 もの共生微生物が生息し、我々に利益を与えてくれている。数の上では共生微生物の数がヒトの細胞数を圧倒しているのです。
人間をヒトと共生微生物から構成されている超生物と見なせば、この超生物、即ち、 人間の体は 9 割が細菌ということになります。
そんな細菌ですが解明されているのは断片的で、そのほとんどが解明されていません。どのような細菌がどのように共生し合って我々に影響を及ぼしているのでしょうか。
『病気の子どもが多すぎる。そしてさらに肺疾患が増え、アレルギーが増え、骨折する子どもたちが増えていくのを看過しろと?』より引用します。
「新しい日常のどの部分から破棄していくか」
~・前略・~
新型コロナウイルスのパンデミック以来、日本を含めて世界中に広がる「新しい生活様式」について、このウイルスの正体が明らかになってきた3月頃から、私はそのほとんどを否定しています。
それでも、大人は「自己責任」ということで好きになさればいいと思います。一日に何度も何度も手を殺菌しようが、高温多湿の中でマスクをし続けようが、それがご本人のご希望なら、それでいいのだと思います。
しかし、現在の日常の世界を見ている中で、
「子どもたちの未来がかわいそう」
だというのはあるのです。
何も意味のないことをさせられているだけなら構わないのですが、この「新しい生活様式」は、子どもの健康を蝕んでいる。
最も良くない点は、
・太陽光を浴びる機会が減ったせいで徹底的に免疫が弱くなっている
・過度な消毒習慣で、常在菌の死滅と、腸内細菌環境の破壊が進行している
・恒常的な低酸素状態のために、脳の発達が阻害され続けている
などですが、他にもたくさんあります。
まあしかし、「それを改善しろ」と私のような人間が言ったところで仕方ないわけで、もはや時すでに遅しといった感じもありますが、それでも、たとえば、先ほど挙げたうちの「太陽光不足の問題」と「過度な殺菌による腸内細菌の死滅」については、過去記事でも取りあげていますので、少し振り返らせていただきます。
太陽光の必要性について
たとえば、2019年10月の過去記事「カナダの研究で「太陽の紫外線は腸内細菌環境に極めて良い状態を与える」ことが判明。難病の治療にも応用できる可能性」では、カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究についての報道を載せていて、そこには以下のようにあります。
太陽の光への曝露と、ビタミンDのレベル、そして腸内細菌の分布の状況は、それぞれ多発性硬化症や炎症性腸疾患のような炎症状態のリスクと関連していることを示す。このことから、科学者たちは、この太陽光、ビタミンD、腸内細菌の3つは連鎖的に関連していると考えている。
日光への曝露は、皮膚のビタミンD産生を促進することでよく知られており、そして、最近の研究では、ビタミンDがヒトの腸内微生物叢を変えることを示唆している。
簡単に書きますと、
・太陽光に当たることで、腸内細菌環境が改善され、それは、多発性硬化症や炎症性腸疾患のような炎症性疾患の回避につながる
というようなことになり、また、「認知症を避けるための最低限の準備のひとつは松果体を守ること」という記事では、認知症を避けるための必要な物質にメラトニンというホルモンがあり、これは「太陽光が目に入ることで作られる」ものだということなどを記しています。
つまり、「太陽光の極端な不足は、良好な睡眠を阻害し、脳活動に悪い影響を与える」ということも言えるのかもしれません。
いずれにしましても、太陽光を避けた生活は、人間の免疫力と脳活動をかなり悪くしてしまいますので、少なくとも子どもには太陽光が必要だと考えます。
過度な殺菌による腸内細菌への影響
この「過度な殺菌」については、数年前からずいぶんと記事にさせていただくことがありますが、そのような中、現在の「異常殺菌日常」が始まり、これもまあ、大人は、もはやいいですが、子どもたちに対しての過剰な殺菌は、その子たちの未来に取り返しのつかない禍根を残す可能性があり、大きな問題だと感じます。
たとえば、「単なるうがいや歯みがき」にしても、2019年12月の「全身の健康を守るためには「殺菌のためのうがいや殺菌のための歯みがきをしてはいけない」」という記事では、アメリカの医療サイトの記事をご紹介していますが、以下のようにあります。
口腔内は、人間の体内で腸の次に大きな微生物叢を持っている。口の中には 700種以上の細菌が含まれている。歯、舌、頬、扁桃腺、硬口蓋および軟口蓋などの真菌から原生動物に至るまでのさまざまな微生物が成長することができる場所がたくさんある。
そして、口内細菌環境の不均衡は、歯の問題だけではなく、全身の病気や不調につながる可能性があるのだ。腸内細菌環境と同じように、口内細菌環境が個人の全体的な健康に影響を与えるという。
従来の多くの殺菌性のうがい薬は口腔内細菌叢を傷つける可能性がある。
特に、「 99.9%殺菌」と主張しているうがい薬に関しては、大きな危険が伴うと述べる専門家は多い。アルコール、過酸化水素、クロルヘキシジンを含む洗口液は、すべて口内の微生物叢を傷つける可能性がある。過剰な口内の殺菌には注意を払うべきだろう。
これは、口内の常在菌の話ですが、人間の身体は「全体がこのようになっている」のです。つまり「内部も表面も含めた人間の身体に過剰な殺菌をして良い部位はない」と。
異常な殺菌が単に「意味がない」のならいいのですが、「害が多すぎる」のです。たとえば以下の二つの記事のタイトルは、その危険性を現していると思います。
子どもの白血病を作り出しているのは「過度な殺菌」であり、肺の疾患を作り出している主要な原因も「過度な殺菌」なのです。
過度に清潔な環境が子どもの白血病のほとんど(99%)を作り出している
In Deep 2018/05/28
過剰な消毒と殺菌が「人間の肺を破壊するメカニズム」がわかった
In Deep 2020/05/25
おそらく、今現在の社会全体で行われている「過剰な殺菌行動」は、人類史上で見たことがないほどの「人間への破壊行為」だといえると思いますが、これ以上この影響が子どもたちに及ぶと、本当に取り返しのつかないことになってしまうと思うのです。
「肺が壊され」
「免疫系が壊され」
てしまったら、簡単には元には戻らないのですよ。
大人になってから壊れるのなら、それは仕方ないことかもしれないですが、若い人たちにそのような残酷な未来を渡してはいけないのではないかと。
実は、今回は本当は、ここまで書いたようなことを書こうと思っていたわけではなく、
「もともと子どもたちの健康は阻害されていた」
ということにふれたいと思っていました。
それを思ったのは、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の子どもの健康についてのウェブサイトに「病気の子どもが多すぎる」というページがあり、そこには以下のようにありました。アメリカの例ですが、主要国はすべて同じような状態ともいえます。
病気の子どもが多すぎる
アメリカの子どもたちの 54%以上が 1つまたは複数の慢性疾患に苦しんでいる。1980年代後半から 1990年代初頭がこれらが始まった時期とされている。
自閉症、ADHD、喘息、アレルギーの子どもたちの数は、その時期から現在までに倍増しており、自閉症はアメリカの一部の地域では今は 34人に 1人の割合だ。子どもの自己免疫疾患も増加しており、特殊教育サービスを利用している公立学校の子供たちの割合は、学校人口の 13%から 25%と推定されている。
このような子どもたちの状態が増加している背景には、重金属、殺虫剤、除草剤などの環境毒素が主な要素としてあるとも言われる。 (childrenshealthdefense.org)
アメリカでは、約半数の子どもたちが何らかの慢性疾患を持っている。
もう少し具体的に書きますと、以下のようになっています。
アメリカの子どもたちを悩ませている慢性的な苦痛のリストには、生まれついてのものも含めて、神経発達障害、自己免疫疾患、アトピー性障害、メンタルヘルスの問題などが含まれる。
多くの場合、複数の状態が重なるか、1つの状態がその後の疾患のリスクを高めることになる。慢性疾患状態の子どもたちは現在、小児集中治療病院入院の 70%以上を占めている。
2011年の調査では、アメリカの子どもの 5分の2( 43%)が 20の慢性的な健康状態の少なくとも 1つを抱えており、これに、肥満と発達の問題および行動リスクを含めると、この割合は半分(54%)を超えた。ここには、学習障害から糖尿病、うつ病まで含まれる。(childrenshealthdefense.org)
もともとすでに、心身の健康に問題が生じる子どもたちが増え続けている中で、今のような信じられないような「過剰な殺菌による不健康な生活」を子どもに強いている。
それが問題なのだと思います。
上の文章ではふれられていないですが、これらのように子どもの病気が多くなった原因には確かに「生活毒」というものもあるかもしれないですが、もっと普遍的な、つまり、
「日常的な殺菌」
が含まれていると思われます。
新型コロナウイルスの登場以前から、すでに私たちの日常は衛生的すぎたのです。
アレルギー、自己免疫疾患、メンタルヘルスの問題と、「腸内細菌環境の状態」が密接な関係を持つことはほとんど確立されている医学的見解であり、子どもの健康を守るために特に大切なことのひとつが「子どもの腸内細菌環境を損なわないこと」だと認識しています。
なお、最近、「学校再開後に、子どもたちの骨折が相次ぐ」という以下の報道を見ました。
・子どもの骨折、学校再開後に相次ぐ 外出自粛や長期休校で体力低下 (福井新聞 2020/07/03)
ここでは、その理由を「長期にわたる休校による運動不足など」というように解説されていましたが、そのように安直に考えることには問題があります。
この骨折の増加にも「過剰な殺菌」が関係していると考えられるのです。
これを考えるには、
「骨の生成を促進するものは何か?」
という根本を考える必要がありますが、そこを知りますと、この問題にも「過度な殺菌」が関係していると考えるが妥当な気がするのです。
骨の生成を促しているのは何かご存じですか?
それは腸内細菌なのです。
以下は、大学や研究機関などの論文等のタイトルです。
内容はリンクしていまして、すべて日本語の資料ですので、ご確認下さればと思いますが、タイトルだけで十分におわかりいただけるのではないでしょうか。
・腸内細菌叢に由来する酪酸が宿主の骨形成を促進する (武庫川女子大学薬学部生化学Ⅱ講座)
・腸内環境改善により骨密度低下が抑制される可能性を閉経後骨粗鬆症モデル動物において示唆 (国際科学雑誌 Nutrients)
・世界初!生きた微生物の摂取によりヒトの骨密度が増加 (アサヒグループホールディングス)
おわかりでしょうか。人間というのは、「骨の生成」までも、腸内細菌が担っている存在なのです。
今のような過剰な殺菌生活が続けば、子どもたちはさらに骨折し続け、高齢者たちは次々と骨粗鬆症になるでしょう。
なお、「日常で使用している消毒剤」だけでも、その使用は、十分に子どもたちの腸内細菌環境を破壊することが、2018年のカナダの研究でわかっています。以下は、「ヒポクラテスが述べた「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」ことをますます示す最近の研究」という過去記事でご紹介したカナダの研究のご紹介となります。
家庭用消毒殺菌製品は子どもの腸内微生物叢を変える
カナダ政府の研究プロジェクトで、一般的な家庭用の殺菌剤、消毒剤や洗浄製品が幼児の腸内細菌叢(腸内フローラ)を変えてしまい、それによって、肥満が増加することがわかった。
研究では、家庭で使用される消毒剤、洗剤および環境にやさしい製品への曝露の状態と、3〜 4ヵ月齢の乳幼児、および 1歳、および 3歳の子どもたち 757人の腸内細菌叢を分析した。
生後 3〜4ヶ月の乳児における腸管内細菌叢の変化は、万能クリーナーなどの家庭用消毒剤の頻繁な使用に対して最も強く、消毒剤や殺菌剤を頻繁に使う家庭の子どもでは、ヘモフィルス(いわゆる善玉の腸内細菌)およびクロストリジウム(いわゆる善玉の腸内細菌)の量は少なく、しかし、ラクノスピラ(いわゆる悪玉の腸内細菌)は高いレベルを示した。
研究者たちはまた、消毒剤で頻繁に洗浄している家庭であるほどラクノスピラ細菌の腸内での増加を観察した。
以前行われた子豚での研究では、消毒剤に暴露された場合、腸内微生物に同様の変化が見られていた。
通常の洗剤や、環境に優しい洗浄剤では、このような腸内フローラの変化は見出されていない。 (sciencedaily.com)
つまり、今の社会で行われているような「過剰な殺菌と消毒」は、じわじわと子どもたちの腸内細菌環境を破壊していると言っていいと思います。
それが短期間ならともかく、こう長期間に及んでは・・・。
今おこなわれているほぼすべての衛生に関しての行動が、ほぼ完全に悪い影響にだけ向いているということを認識してもいい段階だと思うのです。
なぜなら、このままでは今後もずっとこの状態が続いてしまうからです。
病気の子どもたちだらけの社会という暗い未来しか想像できないことになるからです。
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