2020-06-25

イナゴに続いて史上最悪の大洪水、中国「三峡ダム」決壊の危機

「新型コロナの次はイナゴ」で紹介したイナゴが中国に迫っています。
以下のマップは、パキスタン特別中期気象予報センターにあるイナゴ警報のリアルタイムマップです。赤いドットの地点が深刻なイナゴの発生が起きている場所で、国別としては、オレンジと黄色の国が、警報レベルとなっています。中国と隣接したパキスタンでは被害が拡大しています。
2020年2月22日のイナゴの発生状況

Desert Locust Situation

更に、中国はそのイナゴの脅威に加えて大洪水が発生し、世界最大のダムが決壊の危機に面しているようです。

In Deep『中国南部で続く史上最悪の大洪水の中、数億人に影響を与える可能性のある「三峡ダムの決壊」は起きてしまうのか?』より引用します。

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近代史上最大の災害になると言われる懸案が浮上

中国南部で観測史上最大レベルの豪雨が続いていまして、中国語の報道によりますと、中国共産党の公式統計で、6月24日までに中国26省で「 1122万件の大雨による災害」が発生していると伝えられています。

6月22日のエポックタイムズは以下のように伝えています。

中国24の省で大規模な洪水 三峡ダムへの懸念が高まる

6月に入ってから、中国各地で集中豪雨による大規模な洪水が発生している。

中国当局の15日の発表では、国内24の省で850万人が被災した。

17日早朝には、中国の三峡ダムの上流にある四川省カンゼ・チベット族自治州丹巴県の発電所の施設と周辺の村が洪水で流された。これにより、三峡ダム決壊への懸念が再燃している。

中国メディアの報道によると、6月16日以降、中国南部、中部と西南部で豪雨が24時間にわたって継続的に降り続いた。

17日には、四川省の丹巴県内で13カ所以上で土砂崩れや地すべりが確認された。県内の発電量2000キロワットの梅龍発電所と発電量3200キロワットの阿娘溝発電所が、土石流によって崩壊し、一部の村が飲み込まれた。梅龍発電所の地元である梅龍溝では、大規模な堰止湖が発生した。

中国国内ネット上では、四川省などの水害で各地の小型ダムが決壊すれば、湖北省宜昌市にある三峡ダムが崩壊する可能性があるとの心配の声が上がっている。

17日、中国人のあるネットユーザーは海外のツイッターで、「宜昌市より(長江の)下流にいる市民たちは、早く逃げなさい」との中国国内専門家の警告を相次いで転載した。この専門家は、中国建築科学研究院の研究員である黄小坤氏だ。同氏は、SNS微信のグループチャットに警告を書き込んだ。

三峡ダムに詳しい中国人の水利専門家である王維洛氏は大紀元の取材に対して、「三峡ダムが崩壊すれば、(長江の中下流にある)宜昌市や湖南省岳陽市から、長江の入り江に位置する上海市まで、甚大な被害をもたらす」と強く懸念した。 epochtimes.jp

記事はさらに長く続きますが、日本語の記事ですので、続きは上のリンクからお読みになることができます。

さて、ここに、

「三峡ダム」

という言葉が出てきます。

これは中国最大のダムであり、さらには「世界最大のダム」でもあります。

そのような世界最大のダムでありながら、この三峡ダムには、長く「懸念」が存在しています。その懸念は、ストレートに「安全性の問題」なのです。

仮に、この三峡ダムが決壊するようなことがあった場合、どのようなことが想定されているかといいますと、最も穏やかな表現としての Wikipedia から抜粋しますと、以下のように記されています。

三峡ダム – Wikipedia より抜粋

ダム決壊の危機

2019年、中国国内のダム専門家がGoogle earthで2009年に撮影したダムの基礎部分の写真と2018年に撮影した写真を比較した際「2009年にはダムの基礎部分はまっすぐな直線になっているが、2018年には数ヶ所が湾曲している」と発表したことで、三峡ダムに決壊の危機が迫っているとする声が高まった。

中国当局はこの指摘に対して事実を否定している。

なお、万が一決壊した場合は上海市や武漢市などの下流域の大都市に大きな被害をもたらし、中国経済に大ダメージを与えるとともに、中国国内の電力供給がストップすることで大規模な停電を引き起こす可能性がある。Wikipedia

というようなことが懸念されています。

この記述に、

> 2009年にはダムの基礎部分はまっすぐな直線になっているが、2018年には数ヶ所が湾曲している

とありますが、写真で比較しますと、以下のようになります。

2009年2018年の三峡ダムの衛星写真の比較

soundofhope.org

明らかに「ダムの基礎部分が激しく湾曲している」ことがわかりますが、このことが判明した 2019年時点で、懸念とされていたのですけれど、そこに今回の、

「中国の観測史上最大級の洪水が押し寄せている」

ということなんです。

仮に、三峡ダムが決壊した場合の「影響の範囲」ですが、シンガポールにある南洋理工大学のハリー・チェン教授は、SNS に以下の地図を投稿していました。

三峡ダムが決壊した場合の影響があると予測される範囲

Harry Chen PhD

もちろん、この範囲すべてが影響を受けるということではなく、低い土地や大河川の流域が大きな影響を受けることになるのですが、上の地図の範囲を、日本列島を含めた地図で示しますと、それはもう、とんでもない範囲の影響であることがわかります。

以下の地図で赤いライン内が、上のハリー・チェン教授の示した影響の範囲のエリアです。

三峡ダムが決壊した場合に影響が及ぶと予測される範囲

Google Map

日本列島がそのまま入るような範囲に渡る大変に大規模な洪水災害となる可能性があるようで、想像していたものをはるかに超えた災害になる可能性があることを知りました。

そして、現実として、「すでに三峡ダムの水位は、警戒水位を大幅に超えている」のです。

以下は、6月23日のエポックタイムズの記事からです。

重慶市「史上最大規模の洪水」を警告 三峡ダムは警戒水位2m超

中国四川省重慶市の水利当局は6月22日午前11時50分、危険度の最も高い「洪水紅色警報」を出した。市は豪雨や長江水系の河川である綦江(きこう)の上流側での急激な増水により、重慶市の綦江の部分で、今後8時間以内に「史上最大規模の洪水」に見舞われると警告した。

中国メディアによると、1940年に設置された重慶市水文監測総站が「洪水紅色警報」を発令したのは、開設以来初めてのことだ。

市内江津区の水位は、警戒線より5.7メートルから6.3メートル上回ると予測した。市民4万人が避難したという。

中国水利省の最新発表では、全国各地の198本の河川の水位が警戒線を超え、洪水が発生した。

一方、中国国営中央テレビと中国紙・北京青年報は21日、湖北省宜昌市の三峡ダムの水位が引き続き上昇していると報道した。

長江上流での豪雨の影響で、21日までに、同ダムの水位が147メートル上昇した。

三峡ダムを運営する三峡集団によれば、ダムの洪水防止最高警戒水位は144.99メートル。現状では、警戒水位を2メートル以上超えた。

中国中央気象台によると22日、22日から25日にかけて、長江中下流の地域では引き続き大雨になると予想される。 epochtimes.jp

このように、現在の三峡ダムは、警戒水位を 2メートル以上超えている上に、今後さらに、今まで以上の量の大雨が降るという予測がなされています・・・。

うーん・・・。

まあ、今は…というか、今年は…というか、なんというか、今は時期が時期ですからね。

今年は、もう「何でもあり」といった感じが強い年のようになっていまして、世界が全体として混沌としています。その 2020年の混沌は、パンデミックとその対策としてのロックダウンから始まりましたが、そのロックダウンが最初に始まったのが中国でした。

もちろん、三峡ダムに関しては、今後どうなるかは予測できるものではないのですけれど、ただ、三峡ダムに問題が起きないとしても、今の洪水の影響は大きくなりそうです。

中国の長江という大河川は「ダム」というようなものがない時代でも、考えられない大洪水を起こす可能性のある河川でした。

たとえば、20世紀最大の自然災害は、この長江の洪水によるものでした。

1931年中国大洪水

1931年中国大洪水は中国で起きた一連の洪水である。

この洪水は記録が残る中で最悪の自然災害の一つと一般にみられており、また疫病と飢饉を除いて、20世紀最悪の自然災害であることはほぼ確実である。

推定死者数は、14万5000人とするものから、400万人とするものまである。 Wikipedia

そして、現時点の洪水に対して、「史上最悪の洪水」だと中国当局から警告されているわけでして、ダムの決壊等がなくても、大きな被害が発生する可能性が高くなっているところに「三峡ダムの問題」があるということになります。

三峡ダムが決壊した場合に影響を受ける人口はよくわからないですが、先ほどの地図で示しました大都市である武漢(人口 1100万人)と南京(人口850万人)、そして上海(人口 2500万人)だけでも、数千万人という人口になるわけで、影響というだけなら、億単位となることは避けられなさそうです。

中国では他にもいろいろ起きていまして、以下の記事など、何度かふれていますイナゴ (サバクトビバッタ)ですけれど、「中国でもイナゴの大群が発生した」ようなのです。ただし、中国で発生したこのイナゴは、サバクトビバッタではないです。

~・中略・~

以下は、6月12日のエポックタイムズの記事です。

中国、吉林省・黒龍江省でイナゴ発生 食糧危機の恐れ

新型コロナウイルスの感染者が増えている中国東北部では、6月に入ってから、イナゴの大群が発生し、農作物の被害が広がっていることが明らかになった。

東北部は中国の主要食糧生産地である。パンデミックで食糧の輸入が激減し、また、中国各地では異常気象が起きており、今後国内で食糧不足が発生する可能性が高いとみられる。

黒龍江省林草局は、6月1日に各関係部門に送った通知において、同省ハルビン市周辺の5つの区、県で深刻な蝗害が発生し、面積約244万2744平方メートルの農作物が被害を受けたと明らかにした。

また、吉林省吉林市農業農村局も6月5日、各部門にイナゴなどの害虫調査実施や被害防止強化を要求した。同局の通達によると、4日までに吉林市管轄下の蛟河市、樺甸市、永吉県、龍潭区などの荒れ地や林を含む13.4ヘクタールに及ぶ場所で蝗の群れが観測された。

イナゴの密度は、1平方メートルあたり10〜20匹だが、場合によって1平方メートルあたり50匹もいる。現在、イナゴの状態はまだ幼虫だという。 epochtimes.jp

この記事では、

> イナゴの状態はまだ幼虫

とありますので、イナゴの発生が本格化するのは、夏になるこれからのようです。

この中国東北部は、今回の大雨や洪水の影響は受けていないと思われますが、皮肉なことに「洪水被害が避けられたために、イナゴの幼虫も守られている」という結果となりつつあるのかもしれません。

いずれにしましても、中国南部の大雨が今後も長く続くようなことがあった場合、三峡ダムの周辺流域の洪水の状況が悪化すればするほど、三峡ダム自身の危機も近づくことになるのかもしれません。

もちろん、中国当局にとって、三峡ダムの決壊は絶対に避けたいところですので、さらにダムの水位が上昇した場合は、「過剰な放流」が行われる可能性もあり、それはそれで、別の側面での危機にもつながりそうです。

なんだかんだと、中国はいまだに影響の大きな国ですので、この国に大きな問題が起きた場合、周辺の国にも甚大な影響が出ると思われます。

List    投稿者 asaoka-g | 2020-06-25 | Posted in D.地球のメカニズム, G.市場に絡めとられる環境問題No Comments » 

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