素粒子物理学を基にした宇宙論の危機・・・「超対称性理論」の崩壊か? CERNが検証
画像は『ナゾロジー』様からお借りしました。
素粒子物理学は、量子論にクォークという素粒子が登場するが、発表時期には誰も観測したことなかった。観測事実としては、1960年代に、ある原子核とある原子核を高速(≒光速)で衝突させると、そこからグルーオン(糊という意味)というまったく秩序のない原子核より小さな粒子の“軌跡”が続々と発見された。
その数は、60種類にも及び、その分かり難い観測映像から、素粒子の振る舞いを説明できる仮説(観念)を創りだし対象を理解しようとした。そして、おびただしい数の無秩序なグルーオンに手を焼いた科学者が、まったく観念上で、3種類異なる性格をもつクォークというモデルを仮定した結果、それらに法則性を与えることが出来た(と思った)。
つまり、クォーク自体が現象事実を統合できるだろう観念上の、ひとつの論理モデルであり、実際の観測結果ではない。しかし、その他の観測事実とも整合していれば、仮説も事実として認識される。これは、科学や認識の基本構造である。
しかし、素粒子物理学の理論から観念上で導き出された、超対称性理論は現在のところ机上の計算から数学的に導き出される事象の域を出ていないと評価されている。それは、関連する事実がほとんど発見されてないからだ。
そして、
CERN:『スイスのジュネーヴ西方にある、スイスとフランスの国境をまたぐ地域に、2つの研究地区といくつかの実験施設がある。地下には 全周 27km の円形加速器・大型ハドロン衝突型加速器 (LHC) が、国境を横断して設置されている。LHC は先行実験器である大型電子陽電子加速器 LEP に接続する形で建造されている。』
での実験では、現代の物理学において長らく存在すると考えられている超対称性の粒子が、いかなる条件でも全く観察されなかった。
これで、ビッグバン宇宙論を支える素粒子物理理論が間違いだったという事になれば、新たな宇宙論の事実追求が幕を開ける。
ナゾロジー様の『現代物理学を支えていた「超対称性理論」に崩壊の危機が迫る!CERNが検証』より引用。
事件の当人である素粒子たち
超対称性の話を理解するには、まず素粒子が何かを知らなければなりません。というと、なにやら難しそうな雰囲気を感じるかもしれませんが、内容は極めてシンプル。
結論から言うと
「私たちの宇宙」=「物を作る粒」+「力をつたえる粒」
という簡単な足し算が元になります(ヒッグス粒子は力をつたえる粒子の仲間で質量を作っています)。
例えば地球と太陽の場合。
地球と太陽は「物を作る粒」の巨大な塊です。しかし「物を作る粒」を集めただけでは、地球は太陽の周りをまわってくれません。地球が一定の距離をとって太陽の周りをまわるには「力をつたえる粒」(この場合は重力)が必要になるのです。
具体例を地球と太陽ではなく、磁石と鉄、電池と電球にしても
「私たちの宇宙」=「物を作る粒」+「力をつたえる粒」
は成り立ちます。
実際には「物を作る粒」と「力をつたえる粒」には上の図のように、それぞれ複数種類が存在します。
しかし今回は気にする必要はありません。重要なのはこれらの粒たちに「裏の顔」がある…と超対称性理論が考えていた点にあります。
超対称性とは何か?
超対称性理論とは「物をつくる粒」と「力をつたえる粒」に、それぞれソックリな「裏の顔」が存在するとする理論です。
理論の名前となった超対称の部分も、表の顔に対して鏡合わせのような裏の顔が存在し「対称性」があることに由来します。対象となった裏の顔の粒子たちは「物をつくる粒子」が「力をつたえる粒子」の属性にチェンジし、「力をつたえる粒子」も同様に「物をつくる粒子」になり、真逆の性質を持つようになっています。
しかし私たちの身の回りには、超対称性の粒子はみられません。
超対称性理論はこの点も説明しています。宇宙がうまれた直後、非常に高エネルギーの状態では、表の顔である「物を作る粒」と「力をつたえる粒」とそれと超対称になる裏の「物を作る粒」と「力をつたえる粒」の全てが存在していました。ですが時間が過ぎ宇宙が冷えてくると「対称性の破れ」と言われる現象が起き、裏の超対称性粒子は全て消えてしまった(反物質と話が似ているが超対称性粒子は反物質ではない)のです。
以上が、超対称性理論の基本になります。
なので超対称性理論が正しいかを調べるには、原理的には、宇宙がうまれた直後の高エネルギー状態(光の速度で粒子がぶつかる世界)を再現し、実際に裏の超対称性粒子が生じるかを確かめるのが一番です。
問題は、超対称性理論が発表された当時、宇宙誕生直後の様子を再現する方法がなかったことです。
そこで人類はCERN(セルン)と呼ばれる組織を作り、大型衝突加速器(LHC)を建設しました。
大型衝突加速器は粒子を光の速度まで加速し、衝突させることで初期宇宙を再現します。しかし、いくら装置内部で初期宇宙の様子を再現しても(光速付近で衝突を繰り返しても)、超対称性粒子(裏の顔)は現れませんでした。出力を上げ、条件を工夫し、試行回数を重ねても、結果は「0」「ナシ」「ヌル」でした。
こうなると、結論は一つしかありません。
長年に渡り物理学の常識と考えられてきた超対称性理論が全て、あるいは少なくとも一部に、間違いがあったのです。
これからの物理学は超対称性理論ぬきで進めなければならない
今回の研究により、超対称性理論の牙城にヒビが入りました。
最先端を研究する物理学者たちは、超対称性の基本となる「素粒子に裏の顔がある」とする単純なモデルを、答えから除外するようになっています。
そしてそれは、物理学者たちが50年以上にわたり努力を傾けてきた、超対称性を土台とした数々の理論(数千本の科学論文)が葬られる瞬間でもあります。現在、物理学者たちは超対称性が私たちの宇宙に現れない原因を、必死になって探しています。理論の調整、新しい概念の移植、別の観点からの再構築など様々な試みが行われていますが、決定打とはなっていません。
超対称性が失われた物理学の向かう先は、まさに暗黒。
先を照らしてくれる理論がない現在は、物理学史上、最も混乱している時期とも言えるかもしれません。しかし歴史は、えてしてそのような時期にこそ、新たな素晴らしい理論がうまれることを教えてくれます。古典物理学が座礁した時には相対性理論が現れ、相対性理論が限界にきたときには量子論が現れ後を引き継ぎました。
もしかしたら今は無名の物理学者の頭の中に、超対称性理論の穴を埋めるような、大理論が作られている最中かもしれません。
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