2016-01-15

歴史を変えた火山噴火

もし仮に今富士山が噴火したらどうなるでしょう? 富士山山麓周辺が火砕流や溶岩流などで壊滅的な打撃を被るのは間違いない。しかし被害はこれで終わりではない。真の破局は噴火の後に訪れる。上空に巻き上げられた火山灰は日光を遮断し、地球を寒冷化させる。一般的に、寒冷化の後局地的な豪雨が訪れ、次に大旱魃が続き、雹や霰も降る。穀物の生長は阻害され、飢饉が起こり、人々は慢性的な栄養不足で病気に対する抵抗力が衰え、疫病が流行します。飢饉と疫病で人々が死ぬと、追いつめられた人々は、奪い合いや政治的な変革へと向かっていく。では、歴史を変えた火山噴火にはどのようなものがあるのだろうか。

 にほんブログ村 環境ブログへ

 

【7万年前から7万5千年前】トバ火山(インドネシア)※火山噴火の噴出物量は9000立方kmと過去200万年で最大。

 

いまから7万-7万5000年前に、トバ火山が火山爆発指数でカテゴリー8の大規模な噴火を起こした。これがきっかけとなり、劇的な寒冷化はおよそ6000年間続いたとされる。その後も気候は断続的に寒冷化し、地球はヴュルム氷期へと突入する。トバ事変の後まで生き残ったホモ属はネアンデルタール人、デニソワ人と現世人類のみで、現世人類も、総人口が1万人にまで激減したという。人類史を揺るがした大事件であったといえるだろう。

 

【7300年前】鬼界カルデラ 火山噴火の噴出物量は100立法km

 

今からおよそ7,300年前、鹿児島市の南方およそ100kmの島で激しい噴火が発生し、島の大部分が失われて海底に巨大なカルデラが形成。活火山のない四国も厚い火山灰で覆われ、南九州から四国にかけて生活していた縄文人は死滅するか、食料を求めて火山灰のない地域に移動し、1,000年近く無人の地となった。その後、縄文海進が進んでおり、九州だけでなく環太平洋火山帯全体に大きな地殻変動があったことは間違いない。

 

【紀元前17世紀】サントリーニ島(ギリシア)火山噴火の噴出物量は60立方km

 

高さ30mの津波がギリシア本島やクレタ島を襲ったという。このためクレタ島を中心に栄えていたミノア文明が大打撃をこうむった。ギリシャ文明が戦争的色彩を強めるきっかけになったといえるかもしれない。またこの噴火の噴煙は世界を覆い寒冷化を生みだした。中国でも異常気象の記録があり、ちょうどこのころ夏王朝が滅亡した。

 

【535年】クラカタウ(インドネシア)

 

NASA研究員が発表した仮説で、過去3000年間で最大という説あり。火山噴火の噴出物量は不明だが、かなり広範囲な影響と中国の歴史書記録から、クラカタウ爆発が推定されている。この巨大噴火による気候変動を発端として、東ローマ帝国の衰退やネズミを媒介とするペストの蔓延、さらにはイスラム教の誕生やマヤ文明の崩壊にもつながったとされる。

 

【1783年】ラキ火山(アイスランド)火山噴火の噴出物量は16立方km

上空高く舞い上がった1億2000万トンもの有毒な二酸化硫黄などの火山灰は、ヨーロッパはおろか大西洋を超えてアメリカ大陸にまで覆う。二酸化硫黄によりイギリスだけで、2万3000人もの人が中毒死した。翌1784年の冬は寒波が押し寄せ、アメリカ南部のミシシッピ川が凍り、メキシコ湾に氷が浮いた。フランスでは、それから数年間、食料不足が発生したが、1788年に襲った猛烈な嵐が決定打だった。農作物の被害が甚だしく、これにより生じた飢饉は翌1789年に起きたフランス革命の原動力の一つとも言われている。同時期に日本の浅間山も噴火しており、その後の江戸幕府の衰退にもつながっている。

 

主だったものを整理してみたが、本当の災害は、地震や噴火そのものよりも、その後の気候変動によってもたらされる食糧難や飢饉であり、それに伴う国家秩序崩壊と略奪→戦争である。その点では時代が下がり、文明度が上がるにつれて、噴出量が少なくても、フランス革命につながったり、社会秩序が大きく揺らいでいる点を見落としてはいけないだろう。過去は、人々は災害があっても、新天地を探し、着の身着のまま、流動していった。ところが、文明度が上がるということは、自然災害に対する免疫力or抵抗力を低下させるということでもある。また文明度の上昇は、人類の縄張りの拡大をもたらしたが、その結果、天変地異に伴う民族移動はすなわち、戦争や革命を伴い、周辺地域へも伝播していく。さらに地殻変動は、局地的なものではなく、ある程度、火山帯は連動して活性化するので、争いは相乗的に深刻化していく。

 

しかし可能性はある。既に世界は本質的には絶対的な貧困を克服した。つまり金融資本による収奪と人工的な格差社会さえ打破できれば、仮に天変地異があっても、東北大震災のように、世界中から支援物資と人的救援を相互に送りあい、災害を耐え忍ぶことはできるのではないだろうか。勿論、フリーエネルギー技術によるエネルギーの自給も不可欠であろう。しかし、それも、金貸し支配からの脱却→事実共認による世界共認の転換が間に合うかどうかにかかっているのではないだろうか。

List    投稿者 tutinori-g | 2016-01-15 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2016/01/3151.html/trackback


Comment



Comment