2007-12-09

クリーン開発メカニズム(CDM)が途上国の環境を破壊?

12月6日の読売新聞に次のような記事がありました。
環境途上国「クリーン事業 裏の顔」インド報告
主な内容は以下のとおりです。
金儲けの欲望を推進力に温室効果ガス削減を進めよう、と編み出された炭素ビジネスが盛んだ。中心となるのは、クリーン開発メカニズム(CDM)先進国の企業が途上国での削減事業に投資し、そこでの削減分を自国での削減分として使える。(中略)
インド北西部のグジャラート州パンチマハル地区の農村地帯にあるグジャラート・フルオロケミカルズの化学工場。ここで昨年、国連への申請第1号プロジェクトが始まった。
工場では、エアコンなどの冷媒を作るが、その過程で温室効果ガスのハイドロフルオロカーボン(HFCs)を大気中に出していた。グ社は日本の商社、英国の化学会社、オランダの銀行による融資や技術を得て焼却施設を新設。HFCsが焼却処理されて大気中に放出されなくなった分を削減分として、事業に参加する日英オランダ各社に売る

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図はYOMIURI ONLINE より引用
ちなみに、京都議定書による削減対象となっているHFCsは、CO2の140~11,700倍の温室効果があると言われており、国連環境計画の推計によると、世界のCDMによる08~12年の削減量の過半数がHFCsプロジェクトによるものらしい。
なんと、これにより、インドプロジェクトでは先進・途上国双方の企業が莫大な利益を得ていると言う
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ところが、ここで、大変な問題が起こっている。以下、続けて記事を紹介します。
工場の東隣のナットクーバ村(約130世帯)の前村長、ラケシュ・ラトワさん(60)は2年前の出来事を忘れられない。
夜中に気付くと、白いガスが家の中に入ってくる。のどが締め付けられるようで息ができない。皮膚がヒリヒリし、気が遠くなる。隣村まで走り、避難した。
 村人は夜が明けると、工場正門前に抗議に押しかけた。守衛ともみ合い、多数が警察に逮捕された。州公害規制委員会の2005年12月7日付文書は「工場敷地内で発煙硫酸10m3が漏れ、周辺に拡散した」としている。村人には今に至るまでの何の説明もないという。(中略)
州の機関が2年前、同村の二つの井戸で行なった検査は有害物質を調べていないが、硬度や塩素が許容基準を上回り、「飲料に適さず」と判定している。同州のNGO「環境の友」が情報開示請求で入手した文章は、州が01~06年に25回の立ち入り調査を行い、「適切な措置を怠っている」と工場に警告したことを示す。

以上
HFCsは焼却処置により大きな削減が計れるが、このプロジェクトの場合、恐らく、排ガスの適切な処理を怠った為、焼却と共に二酸化硫黄、窒素酸化物等の汚染ガスが大気に放出され、これらが大気中で硫酸や硝酸に変わり酸性雨となった結果、大きな環境破壊をもたらしたと考えられる。
しかも、工場は今年夏までにCO2換算713万tを削減し、2006年度の利益は日本円で98.2億円、前年度利益の約3倍、CO2削減分の売却収入は111.2億円と、本業の冷媒ガス売上高の2.3倍になったそうである。
現在、欧州市場での取引価格は4,000円/CO2・tが相場だと言われる。現地企業からの買取価格(実際、議定書ルールで、現地企業は販売できないので、先進国企業が得た売却益の一部が還元されている)は逆算すると1,500円/CO2・t程度。従って、このインドのプロジェクトでは先進国企業は差し引き2,500円/CO2・tの差益を得ることになる。事業投資額を差し引いてもかなりの儲けを得ているに違いない。
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排出権価格の推移(売り渋りケース)より引用「わが国の温暖化対策と排出権模擬実験の結果について」
地域の環境破壊となる有害ガスは処理しなくても、温暖化ガス削減は金になるので、そちらは無視というのは、全く都合の良い論理である。 
ところで、日本は、既に環境省が2007年7月に法的な排出規制の検討を中央環境審議会(環境相の諮問機関)で始め、来年の通常国会に地球温暖化対策推進法改正案を提出している。排出規制に関しては東京都が既に来年度にも大型ビルに対して導入を決めており、環境省はこれを参考にしながら削減義務の対象を詰める考えであるらしい。
これは、各企業に排出規制を掛けないと、京都議定書の削減目標達成が達成不可能なところまで来ている日本政府の苦しさを物語っている。欧州では既に企業毎に排出規制が掛けられている国もあるが、全体としてみれば日本ほど厳しくない。なぜならば、欧州は既に京都議定書の排出義務がほぼ達成可能な域まできているからだ。
そうなると、欧州の企業がCDM事業などで得た排出権を売る格好の的は、まさしく日本企業や政府である。 ちなみに、日本政府は近頃、ハンガリーからCO2約1,000万tを200億円で購入することが決まったらしい。 「日本、温室効果ガス排出権購入へ ハンガリー政府から」を参照
既に、東南アジア10か国の他、オーストラリア、中国、インド、日本、韓国、ニュージーランドは、アジアサミットで、2012年以降の国際的な枠組を巡り話合いを行っているが、日本は、欧州企業の格好の餌となる前に、これらアジア諸国と協力し、EUに対抗する枠組みを構築するなどの戦略が必要と考えられるが、日本の政治家や官僚はどこまで真剣に考えているのだろうか?
インドのように途上国は先進国の都合の良い論理で環境を破壊され、日本のような既に環境対策が進んでいる国は排出権だけ買わされ続ける京都メカニズムは全く欠陥だらけのシステムである。 

List    投稿者 simasan | 2007-12-09 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題17 Comments » 

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コメント17件

 30代会社員 | 2008.05.17 18:55

なるほど!
すっかりダマされていました(>ロなるほど!
すっかりダマされていました(>ロ<)

 ぶいにゅ | 2008.05.17 19:24

そうだったんですか!!
わたしも完璧に騙されてたひとりです・・・。
やっぱり、事実を知ることって大切ですね。勉強しなくては!!

 ケリ太 | 2008.05.17 21:01

確かにビタミンC=柑橘系のイメージは強いです。というかほとんどそのイメージです。色と味は市場商品で固定化されてしまった訳ですね。
飲み過ぎるとかえって身体に悪いというのもショックです。

 きらきらぼし | 2008.05.17 21:02

ちょっとでもカラダにいいかなって、お菓子とかジュースとか選ぶときの一つの判断としていましたが、必ずしもカラダに良いわけでないことを知って、ちょっとショックです。やっぱり、果物とか、自然に含まれているものでないとダメですね。もっとも、お菓子とかジュースとかを摂取している時点で、カラダに悪いのだけども...

 たいしばしいまいち | 2008.05.17 21:34

 果汁飲料のボトルの外側に、「一日当りの摂取目安量を守って下さい」とあるのを、今までは、必要以上に摂っても意味がないのだ、という風に読んでいました。実際は「消化も吸収もされないものを飲み過ぎると体に悪いですよ」という意味だったのですね。以後気をつけます。

 egisi | 2008.05.17 22:30

んー、やはりそうでしたか!。
人間の体は単純な化学反応の結果でつくられるわけではないと実感です!。
これからも人工物質と自然の恵みの違いが、鮮明になればなる話を期待してます!。

 匿名 | 2008.05.17 23:25

私は数年前、突然、腎臓結石になり、医者に「なぜか、かなり大きいですね」といわれました。
その原因は、ずいぶん後になって思い当たったのですが、「カルシウム+マグネシウム」のサプリメント継続的にとったせいに違いないと断定しています。それだけとっては「有害」な例ですね。

 ビタミン好きのおじさん | 2008.05.18 9:12

一般的に、ビタミンは摂りすぎても 腎臓から出てしまうので問題ないと言われています。ところが過剰に摂取した場合は、排泄能力の限界を越えてしまい過剰症がおきるそうです。
健康維持の為には、ビタミンに頼らずバランスの良い食事をする事が大切なんですね!

 finalcut | 2008.05.18 10:38

>みなさま
たくさんのコメントありがとうございます。
私も気になって調べてみて「衝撃!」を受けたひとりです。ビタミンって呼び名は物心ついた頃から刷り込まれてきているんだけど、それが一体何者なのかわからずに生活しているんですよね。
だからみんなダマされる。成分表に「ビタミンC」とさえ書いておけばイチコロなんです。
現代の食料品には他にもアヤしいものがいっぱいありそうです。
やっぱ、事実を知って「必要なのか、どうなのか」を判断することが大切です。
何が事実なのか、次の世代にもキチッと伝えていきたいですね。

 わっしー | 2008.05.22 20:35

ビタミンC=体に良い!!
大勢の人が少しも疑うことなく、思い込まされていたことなんですね。
ビックリです!!

 カヲル | 2008.05.24 22:30

非常に興味深いお話でした。
昨今ビタミンCが、それとは無縁の加工食品・・・
例えば、無果汁の清涼飲料水にも含まれていたりしますが、
その目的は「酸化防止剤」です。
ビタミンCは、酸素に触れると、驚異的な速さで壊れてゆきます。
つまり、食品の封を切った直後から、身代わりになって酸素を奪い、
食品の酸化を遅らせているのです。
よって、その商品が栄養に富んでいるかのように表記することは、
語弊があると言えましょう。

 ぷっちょ~ | 2008.05.29 11:36

ビタミンCって“黄色”だと思っていました。が、“透明”なの~?!?!?!?!
これってみんな知らないんじゃないかな!?
いつも新しい気付き(事実)を与えてくれてありがとうございます~!!!

 すっぱいビタミンC | 2013.01.13 14:27

清涼飲料水には、アスコルビン酸だけでなく、DHMOと呼ばれる有害な物質がたくさん入っています。大量接種すると死に至ることもありますので、飲み過ぎに注意した方がいいと思いますよ。

 高濃度ビタミンC療法 | 2013.06.23 2:22

なら、どんなびたみんCを選べばいいの?

 まる | 2013.07.11 17:20

コメントを入力してください
ならどんなびたみんCを選べばいいの?
まさにこれ!
あれが悪いこれは良くないといった情報は
今時わりとあるが、ならこれが良いって情報や意見て少ないですよね。

 noriemon | 2013.10.06 23:04

石油が食品にまでも使われ(薬も含め…)、乳製品、品種改良され大量生産された安価なコーンなどが、私たちの知らない間にいろいろな商品に使われています。安全性より利便性。金儲け主義のなせる業ですよね…。
消費者はいい加減に賢くならなければいけません。
私は自己免疫機能を信じているので、薬には頼りません。(抵抗力の低い人にはお勧めしませんが…)
ワクチンも水銀や不妊剤が入っていると知ってから打っていません。そんな毒物が本当に必要なんでしょうか。ワクチンはセレブな人たちは打たず、貧しい人たちが打つものになっているみたいです…。今の医療は金儲けに走り過ぎてはいませんか…。もちろんそれで救われる命もたくさんあるので一概には悪いとは言えません。病気にさせてから治療するシステムが悪いんです。
昔のように予防医学をもっと発達させていただきたいです。
“医食同源”自然の恵みは病気さえ治してしまいます。ただ、今の食べ物は自然とは言えないものばかり。有機といえども許可されている農薬もありますし、肥料に関しても動物性だったり不安な面もあります。
結局何を信じればいいの?ということになるなら、自分で一から調べるのが一番納得がいくのでしょうけど、簡単なことではないので、私はいろいろな情報の中から自分の中で確信を得たものを信じて選んでいます。本も重要な情報源です。そうしていると自然に自分に必要な情報が集まってくるから不思議です。
まずは真実を知ろうとすることが大事なんだと思います。
サプリメントに関してはニュートリライト社が信頼できると自分で判断し、毎日摂っています。
だいたい個人や自社の利益を追求しているような会社は私は信用できません。

  | 2013.12.13 21:17

人工のビタミンCだと身体に悪影響を及ぼすと誰か証明しましたか?

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