2008-10-02

石油による硫黄処分問題の深刻化

化石燃料からの排CO2による温暖化が社会問題化する中で、前回、「石油より石炭火力が問題とされる理由、それは本当か?」でも書いたが、排CO2量が大きい石炭火力の建設中止を求める圧力が高まっている。
石炭はかつて(1960年代)、特に煤塵、硫黄分や窒素分による酸性雨が社会問題となったが、2度のオイルショックを受け、採掘や輸送技術の向上、高性能脱硫・脱硝装置の開発などで環境面では格段に改善した。価格面でも石油の1/4で入手できることもあり、政策的にも経済的にもすぐに生産を縮小するという訳にはいかないようだ。
一方、石油は石炭に比べ
①貯蔵や輸送が容易で車や航空機などの燃料として利用し易い。
②プラスチックやビニル製品など副産物としての利用価値が高い。
③原油の段階から硫黄・窒素分を除去し易く、発電量当りの排CO2が少ない
④単位重量あたりの発熱量もの2倍

という利点から、金融資本の現物確保や石油メジャーの価格操作での高騰はあってもまだまだ一次エネルギー源としての王座は譲らない状況である。
ところが、ここ最近、この石油から回収されてくる硫黄の最終処分問題が深刻化し、欧米の専門家の間でも指摘され始めている。

硫黄から製造される硫酸は化学工業上、最も重要な酸で、希硫酸、脱水剤や乾燥剤に用いられる濃硫酸など、種々の硫黄を含んだ化合物が合成されている。第一次世界大戦で化学兵器として硫黄マスタードガスが使用され、多くの死傷者を出すほど危険な物質でもある。
今回は、この石油から回収される硫黄の現状と問題点について調べてみた。
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日本では、軽油などの低硫黄化の為の脱硫装置開発はほぼ完了し、硫黄分10ppmのクリーン軽油導入の目処は既にたっている。
これに伴う回収硫黄の生産量は約200万tである。ちなみに世界で生産されている硫黄の67%が化石燃料から回収され、石油が4割、5割は燃焼後の回収分である。石炭は硫黄の重量成分比は石油に比べ多いが、二次製品での利用も含め石油の方が圧倒的に消費量が多いことから回収分も多い。
これまで日本の製油所から回収された硫黄は、環境規制の問題から日本国内で処分されることはなく、中国に肥料原料用等として輸出されている。ちなみに、日本では消防法で硫黄の野積みは安全上禁止されている。かつて、バンクーバーでは爆発事故があったようです。
また、欧米の製油所から回収された硫黄は、主にカナダ・アルパータ州に膨大な量が個体のまま野積みされている。
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写真はPnoramio より引用
しかし、近年、中国など石油製品需要が急増しているアジア諸国でも同様に、環境規制が強化されつつあり、回収量の急増と野積みに対する安全性の問題から、この処分問題は深刻化しつつある。
一方、日本は世界で唯一溶融硫黄のみ取り扱い、危険物である成型・固形硫黄の輸入船の入港が禁止されている。今、この溶融硫黄はかろうじて輸出と貯蔵のバランスを保っているが、万一硫黄の輸出が制限されるようなことが起きると、直ちに石油精製会社の硫黄貯蔵タンクは溢れ、脱硫装置自体の操業に重大な影響を及ぼす危険が迫っている。
日本国内の硫黄の需要は約75万tであり、近年は石膏ボードなどにも利用されているが、何せ酸が強く利用できる製品は限られている。
需要が多い中国やインドでは6~7割が農業用燐酸肥料向けである。しかし、この中国も輸入量の増加から作付け面積が減少し硫黄の輸入が減少しつつある。
世界の硫黄在庫量は2,000年の2,480万tから2007年には5,760万tに増加し、今後ますます、未処理硫黄の形でカナダ及び旧ソ連諸国等に野積みされていくことになるのだ。
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「硫黄処分問題の深刻化が東シベリア原油への追い風に」渋谷 祐 より引用
今後、環境・安全に対する意識の高まりから、野積み硫黄の状況はいずれ法的規制或いは強制的な処分が不可欠と考えられ、積み残った硫黄はもはや商品とは言えず、不法投棄など多くの問題が発生すると予測される。
かつて酸性雨が社会問題となり科学技術の進歩により問題は消えたかのように見えるが、化石燃料の大量消費は、こうして二次問題から再び環境問題として浮上しつつある。皮肉なものである。これはそもそもエネルギー転換や科学技術だけで解決できる問題の域を超え、消費活動そのものを見直さなければならない時が来ているということを物語っている。

List    投稿者 simasan | 2008-10-02 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題4 Comments » 

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コメント4件

 finalcut | 2009.04.25 23:30

なるほど。この偉業(藻と菌の共生)のおかげで現在まで地球上に多数の生命が生存できてきたわけですね。
>さらに驚くのが、この菌根菌が菌糸でつながり多種多様な植物が共存する地面の下で、ネットワークを築いているという事実です。近年では、この菌根菌のネットワークを通じて、実は植物同士も情報や物質のやり取りをしている可能性が議論されています
アレロパシー(他感作用)も植物の情報交換のひとつでしょうか?ネットワークと関係があるのかな?

 kasahara | 2009.04.26 20:21

finalcutさん、コメントありがとうございます!
>偉業(藻と菌の共生)のおかげで現在まで地球上に多数の生命が生存できてきたわけですね。
そうなんです!地衣類は現在でも以前本編で扱った<遷移>という森林構築システムの一次遷移のトップランナーなのです。
火山活動などで新しく陸地が生まれたとき、地衣類はいち早く荒れ果てた地に最初に根付き、岩石を砕いていきます。
その後も継続してより進化した植物によって、土壌改良は引き継がれ行われていきます。バトンタッチで次々と選手交代した他種植物により、長い時間をかけて塗り重ねられ、無機質な岩の世界が肥沃な腐葉土の地になり、やがて陰樹の森が完成するのです。
そういった意味では森林自体も、種間を超えた植物同士の共生によって作り上げられる。と、いえるのかもしれませんね。
>アレロパシー(他感作用)も植物の情報交換のひとつでしょうか?ネットワークと関係があるのかな?
アレロパシーは植物の情報交換の一つですね。ただ、地下菌類ネットワークとの関係はまだ未明です。また、調べてご報告させていただきますので今後ともよろしくお願いします♪

 hihi | 2009.04.27 19:32

地衣類って、コケを含むものだと思ってました!
全然違うんだ!

 kasahara | 2009.04.27 21:53

hihiさん、コメントありがとうございます!!
そう!全然違うんです☆
地衣類は陸上性で背の低い光合成生物です。その点でコケ植物と見た目的にも似ていて、生育環境も共通しています。(ややこしいですね)一般には、この両者は混同される場合がとても多く、本文にも書きましたが実際に地衣類の多くに○○ゴケの名が使われています。
・・・・と、でもあくまでこれは専門学的・植物学的なお話。
日常用語では、苔(コケ)は、実は植物であるコケ植物のほかに、菌類と藻類の共生体である「地衣類」もさしています。虫(ムシ)が、日常用語では昆虫のほかにミミズや蜘蛛も含めるのといっしょですね。
地域によっては、キノコの類をコケと呼ぶこともあるそうですよ。

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