2014-01-22

【気象シリーズ】宇宙気候から気象変動を考える8~紫外線説

太陽活動による地球の気温への影響について、諸説を紹介するシリーズ。
宇宙線による雲の形成で説明する「スベンスマルク説」、太陽の明るさの変化で説明する「可視光線説」に引き続き、今回は「紫外線説」を紹介します。
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※画像はこちらからお借りしました。
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◆紫外線説とは?
現在、太陽活動による気温への影響を説明する一つの有力な説が、紫外線説です。
一体どんな内容なのでしょうか?
以下、「太陽で何が起きているか」(文藝新書・2013年・常田佐久著)からの引用(※強調は引用者)です。

・・・太陽の明るさという場合、可視光のことだけを問題にしがちですが、太陽から地球へ届く電磁波には可視光以外に赤外線、紫外線、X線、電波などいろいろあります。といっても地球大気が通すのは近赤外線や可視光ばかりで、遠赤外線より波長の長い電磁波や、遠紫外線より波長の短い電磁波の大部分は大気が吸収してしまいます。
 波長によって、変動幅には大きなちがいがあります。大きく変動する波長の電磁波もあれば、ほとんど変わらない波長の電磁波もあるのです。
 変動幅の少ない波長の代表が、可視光です。可視光は、極大期でも極小期でもほとんど変わらない放射エネルギーを地球にもたらしています。
 一方、紫外線やX線など波長の短い電磁波は大きく変動します。紫外線で4%、X線では200%も変わります。紫外線やX線は、可視光を発する光球より変動の激しい彩層やコロナから放射されるからです。
 ただし太陽放射量に占める可視光と近赤外線の放射量が圧倒的に多く、紫外線やX線の放射量は、いくら激しく変動したとしても、全体の放射量に寄与する量は決して大きくありません。太陽放射量の変動はほとんど可視光と近赤外線の変動によって決まってしまうのです。その結果、先ほども述べたように、太陽放射量の極大期と極小期での変動幅が0.1%という低い値に抑えられています。
 しかし、紫外線それ自体は非常にエネルギーの高い電磁波で、地球の成層圏の上部を電離したり加熱したりすることが知られています。詳しい仕組みは明らかでないものの、紫外線が大気の性質を変え、気温に影響を与えている可能性もあります。

【太陽光線の波長スペクトル】

※画像はこちらからお借りしました。
以上の紫外線説をまとめると、
紫外線など波長の短い電磁波は、太陽活動に連動して大きく変動する。
太陽放射量における紫外線の量は圧倒的に少ないが、非常にエネルギーの高い電磁波で、成層圏の上部を加熱する作用がある。
気温に影響を与えている可能性があるが、詳細はわかっていない。
となりますが、成層圏における気温変化システムは解明されています。
◆成層圏における加熱と冷却のバランス
では、紫外線が成層圏に与える影響とは、一体どのようなものでしょうか?
以下、「成層圏からの気候・環境研究」からの引用(※強調は引用者)です。

1. オゾン層と成層圏の気温
ご存知のように、オゾン層と呼ばれる大気中のオゾン濃度の高い部分は高度10kmから上の成層圏にあり、全大気中のオゾン量の約90%がここに存在します(残りは10km以下の対流圏に存在します)。オゾン層の重要な役割として、地表に到達する有害紫外線を吸収することが挙げられます。オゾン層で吸収された紫外線のエネルギーは大気を暖めることに使われます。成層圏では、大気が非常に薄いので(地表の1/10~1/1000の密度)、成層圏の気温は、オゾンによる太陽紫外線・可視光の吸収による加熱効果と、主に二酸化炭素からの赤外線放出による冷却効果との間でのその場の釣り合いでほぼ決まります(対流圏とは異なり、上層からやってくる赤外線は非常に小さい)。従って、オゾンがなくなると成層圏の気温は低下します。オゾン層が成層圏の気温を決めています。

【成層圏のオゾン濃度と気温】
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※画像はこちらからお借りしました。
このように、成層圏における気温は、オゾンが紫外線等を吸収することによる加熱効果と、二酸化炭素からの赤外線放出による冷却効果のバランスの上に成り立っているようです。
◆オゾン層破壊をめぐる議論
どうやら成層圏におけるオゾン層の存在が、紫外線による気温変化のひとつのカギを握っているようです。そして、オゾン層と言えば「地球温暖化説」の有力な原因としてよく話題にのぼる、フロンによるオゾン層破壊説があります。
それは、「オゾン層破壊が進むと、これまでオゾンで吸収されて地表に到達しなかった波長300nm以下の紫外線や、弱いですが同じくオゾンが吸収していた500~700nmの可視光線(緑色、黄色、橙色)も地上に届くようになる。これが地球温暖化を促進する」という説です。
【フロンとオゾン層】

※画像はこちらからお借りしました。
確かに、フロンによるオゾン層破壊が事実だとすれば、成層圏における気温のバランスに影響が出るのは明らかですが、紫外線や弱い可視光線量の増加がどの程度、地上の気温上昇に影響を与えるのか?については、まだはっきりしていないようです。また、オゾン層破壊・フロン犯人説に対する疑い(参照)も出されている中で、更なる事実追求が必要なテーマと言えます。
以上、紫外線説について見てきましたが、「可能性はあるが、詳細のしくみはよくわからない」というのがその実態です。
というわけで、この太陽活動と地球の気温の関係というテーマは、今後も継続的に追求していくことになりそうです。
※参考サイト
紫外線についての基礎知識
成層圏突然昇温

List    投稿者 seiichi | 2014-01-22 | Posted in D02.気候No Comments » 

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