2008-10-25

地球環境の主役~植物の世界を理解する~④植物の地球開拓史その1 酸素に覆われた地球づくり

地球を生命豊かな星にしてきたのは、ひとえに光合成細菌・植物の働きによります。
光合成細菌・植物は、地球環境を作り変えていった、地球の開拓者です。 
 
2回にわけて、光合成細菌・植物が、酸素を生成し、自身が動物の餌となり、生物進化の基盤を作り上げてきた事を扱ってみます。 
 
図は、植物進化と地球大気の酸素濃度の推移をみたものです。 
 
●植物進化と地球大気の変遷 ポップアップ  
 
 
 
出典:『植物が地球をかえた!』(葛西奈津子著、2007年、化学同人発行)より 
 
・地球誕生は46億年前、最初の生命誕生は38億年前。 
 
光合成細菌の出現が約35億年前です。 
 (光合成細菌は、光を利用して有機物を合成しますが、酸素は放出しません。) 
 
ラン藻(シアノバクテリア)の出現が27億年前です。
 (ラン藻類は、光合成で有機物を合成する際、酸素を放出します。) 
 
25億年前から、酸素の大気への放出が始まる。
 (ラン藻類が発生させる酸素は、最初は岩石成分に取り込まれますが、25億年前位になると、取り込む岩石が無くなり、海中の酸素濃度が上昇し、大気中へ放出され出します。) 
 
・海中の酸素濃度が上昇し、酸素優位の海中環境に適応した真核生物の出現15億年前。
植物真核生物が、真核藻類です。真核藻類は、現在の海草・のり・コンブをイメージしたら良いです。(この海中植物・真核藻類を餌として、海で動物が繁茂し、進化する。)
真核藻類が繁殖することで、光合成・酸素放出が一層高まり、大気中の酸素濃度はズンズン高まって行きます。 
 
・大気中の酸素濃度が高まる事で、地球大気の最上層にオゾン層が形成され、地表にまで達する紫外線が大幅に減少する。
(紫外線殺菌装置があるように、紫外線は生命にとって猛毒です。オゾン層で紫外線がカットされる段階で、初めて、地表が生命の環境として開かれました。) 
 
4億年前に、光合成生物・植物が地上進出します。
(最初に、地上進出した植物はコケ類といわれています。)
・地上進出植物は、コケ類、シダ類(石炭紀の巨大なリンボク)、裸子植物、被子植物と主流が入れ替わって行きます。
・この植物側の主役交代を前提として、地上動物の主役交代が行われます。 
 
植物進化と動物進化の関係は、常に、植物進化が先行し、植物が開拓し形成した地球環境を前提として、動物進化が起こるという関係です。 
 
今回は、<植物の地球開拓史、その1>として、光合成細菌の誕生から真核藻類の繁茂までを扱います。 
 
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何故、光合成細菌が生まれたのか? 
 
最初の生命体は、原始地球の海中に含まれている素材とエネルギーを使って生きていました。
素材は、海中に溶けている様々な物質です。では、どんなエネルギーを使ったのでしょうか?
地殻から湧き出してくる硫化水素(2つの水素と1つのイオウ)などのイオウ化合物からエネルギーを取り出しています。イオウ細菌という名前を聞いたことがあるでしょう。 
 
原始地球の海の中で、イオウ化合物がある場所は限られていました。その限られた場所で、イオウ細菌が繁殖して行きます。
しかし、原始地球の地殻から湧き出してくるイオウ化合物の量がだんだん少なくなってきます。
イオウ細菌達は大ピンチですね。 
 
他にエネルギー源を見出せなければ、絶滅です。 
 
その時、細菌達が目を向けたのが、地球に降り注ぐ太陽光です。光は大きなエネルギーを持っていますので、このエネルギーを旨く使えれば、生き延び、かつ、大繁殖できます。 
 
光エネルギーを使い、炭酸ガスなどの水中素材を原料にして、有機物(生命体の餌)を生成する構造を作りました。これを『光合成』といいます。 
 
原始地球の利用できるエネルギー源が枯渇したので、生命体は、光という新たらしいエネルギー源の使い方を発明しました。光合成細菌の誕生です。但し、光合成でも、旧来のイオウ化合物を媒介物として必要とします。制約の大きな光合成でした。 
 
なお、光合成細菌が登場しますと、自身では光合成できなくても、光合成細菌を餌とする細菌が登場します。(この捕食細菌がその後の動物ですね。) 
 
光合成細菌の進化、酸素を放出するラン藻(シアノバクテリア)の登場 
 
イオウ化合物がなくなるという危機ですから、イオウ化合物を必要としない光合成の獲得が急務ですね。これに成功したのが、ラン藻(シアノバクテリア)です。
光合成は、炭酸ガスと水だけを素材にして、有機物を合成します。その時、余った酸素を放出します。 
 
酸素放出の現象を、簡単な比率で、確認してみましょう! 

炭酸ガス(炭素1:酸素2)と水(酸素1:水素2) = 炭素1:酸素3:水素2
          ↓
必要な有機物(炭素1:酸素1:水素2) 
 
酸素が2つ余りますね。この余った酸素2つを酸素分子として放出します。

 
ラン藻の登場で、地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーを効率的に使えるようになりました。 
 
放出される酸素は、物質として活性度が高いのです。そして、物質を燃焼(酸化)させることで、エネルギーを生み出す媒介物にもなります。 
 
ラン藻の登場で、生命圏は2重のエネルギーサイクルを確立しました。1つ目が、地球に降り注ぐ太陽光エネルギーを効率的に使う『光合成サイクル』です。2つ目が、『呼吸サイクル・酸素燃焼サイクル』です。 
 
ラン藻は偉い! 
 
 
真核藻類の登場と繁殖 
 
ラン藻の放出する酸素は、活性度が高く、生命体の諸成分を燃やしてしまいます。燃焼=成分の解体です。 
 
成分解体されたら生命体は死んでしまいますので、この活性度の高い酸素をなだめて活用する方法が必要になりました。 
 
これが、真核生物です。DNAを核に集めて酸素から防護しながら、ミトコンドリアでは、逆に活性度の高い酸素を使って、様々な有機物を合成する構造に進化しました。 
 
真核生物への進化は、光合成そのものを行う細菌類とそれを餌とする細菌類の両方で起こりました。
光合成を行う真核細菌類が、真核藻類です。 
 
真核生物の段階になると、一つの細胞が体積で千倍位まで大きくなり、より高度な機能を組み込めるようになります。この高度な機能を使い、一層、光合成と諸物質生成を効率化し、繁殖していったのが真核藻類の系統です。 
 
真核藻類が大繁殖することで、放出する酸素総量が爆発的に増え、大気の酸素濃度が100倍にもなります。次が、紫外線防護のオゾン層の形成ですね。 
 
真核藻類が大繁殖すると、それを餌とする真核動物も大繁殖します。そしてお馴染みの『カンブリア大爆発』へ繋がります。 
 
動物界の大事件・カンブリア大爆発は、真核藻類が、先行して生育圏を開拓して行ったからですね。 
 
植物の地球開拓史のイメージが少しはもてたでしょうか? 
 
最後に、光合成細菌、ラン藻(シアノバクテリア)、真核藻類の代表的な写真を載せておきます。 
 
●光合成細菌(赤い色をした光合成細菌) 
 
hikarigousei.bmp 
 
「光合成細菌と私達の仕事」というインドの農業サイトから借用。光合成細菌は今、注目されています。
リンク 
 
●ラン藻(シアノバクテリア) 
 
sianobaku.bmp 
 
●真核藻類の一種・ジャイアントケルプ 
 
kerupu.bmp 
 
上記2点は、『植物が地球をかえた!写真館』からお借りしました。
リンク 
 
参考図書、参考サイト 
 
植物が地球をかえた! 
 
光合成とはなにか/生命システムを支える力(園池公毅・そのいけきんたち著、2008年講談社ブルーブック) 
 
光合成の森 
 

List    投稿者 leonrosa | 2008-10-25 | Posted in D.地球のメカニズム3 Comments » 

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コメント3件

 ホイホイ | 2009.05.14 22:16

お米の流れって、こういう風になっていたんですね!!
>大坂にはそれぞれの藩の蔵屋敷があり、ここに蔵米として届けられます。そこには藩お抱えの商人がおり、ここでさらに1/3は蔵屋敷に蓄えて、2/3がお金と交換されます。
この蔵米のシステムにビックリです!!
1/3は蔵屋敷に蓄えられるっていうことは、大坂に置かれたまんまっていうことですよね??
蔵米って何なんでしょう??
蔵米=備蓄米だとしたら、遠く離れた地に蓄えておくって何か変な感じが・・・
飢饉時などの食糧対策ではなく、財政危機が来た時のための、(今でいう)貯金感覚??
・・・ナゾです!!

 めんた | 2009.05.16 12:48

ホイホイさん、コメントありがとうございます!
>1/3は蔵屋敷に蓄えられるっていうことは、大坂に置かれたまんまっていうことですよね??
蔵米って何なんでしょう??
蔵米=備蓄米だとしたら、遠く離れた地に蓄えておくって何か変な感じが・・・
飢饉時などの食糧対策ではなく、財政危機が来た時のための、(今でいう)貯金感覚??
・・・ナゾです!!<
確かにナゾです!いつでも売れるように、大坂においておいたと僕は考えているのですが。。。
さらに追求していきます!!

 papada | 2009.05.21 23:36

市場という切り口で流通をみると新しい発見がありますね。
面白かったです。
さらに、江戸時代には貨幣はあるものの、大部分が現物流通で、信用創造を膨張させなかった点が、同時代の西洋の市場と大きく異なっていたところではないかと考えています。

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