2019-12-26

太陽活動の変動はどのような影響を及ぼすのか①~・太陽活動の変動が及ぼす直接的な影響・~

陽に、太陽黒点数の増減によって計測される活動の変動があることはよく知られています。
しかし、太陽活動の変動が地球の気候や人類社会にどのような影響を及ぼすのかはまだよくわかっていません。

太陽が地球に届ける電磁波は一定ではなく、時間とともに変動します。電磁波の中でも、可視光放射はあまり変動しませんが、それよりも波長が短くて、振動数が多い、つまり、エネルギーが大きい電磁波(紫外線、X線、ガンマ線)の変動率は大きく、これが直接的または間接的に、地表に存在する私たちに影響を与えていると考えられています。

まずは、太陽活動の直接的な影響を取り上げます。

太陽活動の変動はどのような影響を及ぼすのか』より引用します。

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高エネルギー電磁波の変動が与える影響

太陽活動は、太陽黒点の出現度であるウォルフ黒点数で示される。太陽黒点とは、太陽光球面に出没する黒い斑点で、強い磁場を持つ。以下の図に描かれているように、太陽表面上には多くの磁力線が出入りしている。磁力線が密集している箇所は、磁力線の圧力で表面のガスが外側に押し出され、凹む。ガスの圧力が下がれば、密度も下がり、温度も下がる[1]。そうした箇所は可視光では黒く見える。それが黒点である。

sun-magnetic-fields-nasa-goddard-2016図1.太陽の磁場のイラストレーション。磁気的に強い活性領域である明るい場所が可視光では黒点と見える場所である。多くの磁力線が一つの活性領域を別の領域にリンクしている。Source: NASA/SDO/AIA/LMSAL. “Picturing the Sun’s Magnetic Field.” Uploaded on March 16, 2016. Licensed under CC-BY.

磁力線の束が対流層から光球に浮上すると、黒点が磁力線の出入り口として光球に現れ、磁力線の浮上とともに大きくなり、磁力線の拡散で磁場が弱くなると消える。黒点数が増える時は、太陽からの紫外線が強くなる。また、太陽フレアが発生して、X線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子を放射しやすくなる。高いエネルギーを持つ電磁波と荷電粒子が地球に届くことで、デリンジャー現象(突発性電離層擾乱)、磁気嵐、オーロラが起きる。磁場の乱れは通信障害の原因となる。また電線に誘導電流が流れることで、高圧変圧器が故障し、停電につながることもある。1989年3月にカナダのケベック州で磁気嵐によって起きた大停電は有名である。

こうした太陽活動の変動がもたらす影響はよく知られている。もとより、もし話がそれだけのことなら、電気が普及する以前の人類の社会には、あまり大きな影響を与えることはなかったであろうが、実はそれ以前から人間に対して、もっと直接的な影響を与えている。人間の脳の神経には、脳波(Electroencephalogram)という微弱な電流が流れており、地磁気の乱れは、私たちの情報処理能力に悪影響を与える。太陽フレア活動の急激な増加とそれによって惹き起こされる磁気嵐が脳波に摂動効果をもたらすことは、2012年に、北極圏にあるロシアの都市、ムルマンスクで19〜37歳の10人の健康な男性に対して行われた実験によって確かめられている[2]。磁極の磁場強度は磁気赤道の約2倍で、磁気嵐の影響は、高緯度地域ほど大きく、北極圏ではその影響は顕著に出る。

生体電流は、脳だけでなく、心臓をも動かしている。だから、磁気嵐は心臓にとっても攪乱要因である。1992年から1996年にかけてイタリアのピサで診断目的でモニタリングを行った高血圧外来診療所に通う447人の測定値によると、24時間の収縮期および拡張期血圧は、磁気嵐により約6〜8 mm Hg上昇した[3]。1968年から1996年にかけてのミネソタ州のデータによると、太陽活動の極大期は、極小期と比べて、心筋梗塞による死者の発生率は5%増加した[4]。ただし、磁気嵐が皆無だとかえって心臓に有害[5]というホルミシス効果もあり、情報システムとしての人間の身体は、平均的なノイズ環境下で作動するように最適化されていると言うことができる。

太陽定数の変動が与える影響

地球が太陽からの平均距離にあって、地球大気の吸収がないという条件下で、太陽光線に直角な地表の単位面積に単位時間当たり入射する太陽放射のエネルギー量を太陽定数(solar constant)という。実際には、太陽からの距離が一年を通して変化するので、太陽放射照度(solar irradiance)は年間を通して比較的大きく変化する。しかし、太陽定数も、定数と銘打っているにもかかわらず、以下の図からもわかるとおり、太陽黒点数の変動に伴って、少しではあるが変化する。

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図2.過去四十年間の太陽放射照度(A)と太陽黒点数(B)の推移。太陽放射照度(A)における2003年2月28日までのデータは、PMOD(Physikalisch Meteorologisches Observatorium Davos)によるもので、その後の更新は、コロラド大学のSORCE(Solar Radiation & Climate Experiment)によるものである。Source: Solar irradiance and sunspot number in the era of satellite data in Hansen, James, Pushker Kharecha, Makiko Sato, Valerie Masson-Delmotte, Frank Ackerman, David J. Beerling, Paul J. Hearty, et al. “Assessing ‘Dangerous Climate Change’: Required Reduction of Carbon Emissions to Protect Young People, Future Generations and Nature.” PLOS ONE 8, no. 12 (December 3, 2013): e81648.

この図のBは月ごとの太陽黒点数とその移動平均線で、11年程度で増減を繰り返している。このサイクルは、発見者のハインリッヒ・シュワーベ(Heinrich Schwabe, 1789年 – 1875年)の名を冠して、シュワーベ周期(Schwabe cycle)と呼ばれている。図2のAは、衛星測定による太陽放射照度の変動で、赤色の曲線は31日移動平均、黒色の曲線は365日移動平均である。地球と太陽の距離の変化による影響は、365日移動平均でならされるはずだが、見てのとおり、黒色の曲線も11年程度の周期で上下している。そして、図2において、太陽定数の変動を表すAの黒の曲線と太陽黒点数の変動を表すBの赤の曲線が相関していることに注目したい。

なぜ太陽黒点数や太陽定数が約11年の周期で変動するかに関しては、太陽に働く潮汐力で説明するか説が有力である[6]。地球に、月や太陽との間で働く万有引力により潮汐力が働くことはよく知られている。太陽にもまた、近いあるいは大きな惑星である金星と地球と木星との間で働く万有引力により潮汐力が働き、その配置の周期が約11年や約22年などで、それが地球における気候変動の周期にもなっているという主張が1952年の段階で出されている[7]

22年周期に関してはまた後で取り上げることにしよう。11年のシュワーベ周期の極大期では、極小期と比べて太陽定数は1.3ワット/平方メートル(0.1%)ほど上昇する[8]。このエネルギー量の増加は、地球の気温を約0.1度上昇させる。5年強で約0.1度の上昇は、大した変化ではないように見えるが、現在騒がれている地球温暖化は、1世紀(100年)で約0.6度の上昇であるから、必ずしも小さな値とは言えない。2004年にNASAゴダード宇宙研究所が行ったコンピューター・モデリングの結果によると、太陽エネルギーの変化による気温上昇は、100年間で0.6度の上昇のうちの25%(約0.15度)を占めている[9]

以下の図は、北半球における気温(点線)と太陽放射照度(実線)の変動の11年移動平均線を重ね合わせたグラフである。11年移動平均を採用したのは、シュワーベ周期の影響を取り除くためである。産業革命以降、つまり18世紀半ば以降であっても、長期にわたって太陽放射照度の変動が気温を左右していたことが観て取れる。

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図3.北半球における気温の11年移動平均(点線・右目盛り)と太陽放射照度(実線・左目盛)の変動。Source: Douglas V. Hoyt, Kenneth H. Schatten. The Role of the Sun in Climate Change. Oxford University Press; 1 edition (April 3, 1997). p. 196. Fig. 10.21.

これに対して、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、産業革命以後の気温上昇の主要因を温室効果ガスに求めようとする。2007年に発表されたIPCCの第四次報告書は、温暖化/寒冷化をもたらす要因を以下の図のようにまとめ、太陽放射照度の変動のような自然現象よりも、温室効果ガスの排出など、人間活動による要因の方がはるかに大きな影響力を持つと主張した。

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図4.IPCCが見積もった1750年から2005年までの気候の放射強制力。各棒グラフにある直線は、不確定性の範囲を表す。この図は、FAQ 2.1にあるものだが、政策決定者向けの要約にも同じような図がある。Source: IPCC. Changes in Atmospheric Constituents and in Radiative Forcing. Figure 2. Summary of the principal components of the radiative forcing of climate change. p.136.

図中の放射強制力(Radiative Forcing)とは、対流圏の圏界面で出入りする放射量の変化量のことで、太陽定数と同様に、1平方メートルあたりのワット数で表す。放射強制力がプラスだと、宇宙から地球への放射量が増えて、気温が上がり、マイナスだと、その逆が起こり、気温が下がる。温室効果ガスは、地表から放射された赤外線の一部を吸収するので、その増加は、宇宙への放射量を減らすことになるので、プラスの放射強制力があると言うことだ。

図4を見ると、IPCCがNASAなどよりも太陽放射照度の変動による影響を小さく見積もっていることがわかる。IPCCは、2013年に発表された第五次報告書で情報をアップデートし、1745年から2008年までの太陽放射照度の変動による放射強制力を0.05 Wm-2(誤差:0.0 ~ 0.10 Wm-2)[10]とさらに低く(第四次報告書のおよそ半分に)見積もっている。IPCCとしては、自然原因を過小評価し、人為的原因を強調することで、政治家たちに対する働きかけを強めようとしたのだろう。しかし、クライメートゲート事件を惹き起こしたIPCCの主張を素直に受け取ることはできない。

List    投稿者 asaoka-g | 2019-12-26 | Posted in C01.宇 宙, D.地球のメカニズムNo Comments » 

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