2012-09-29

【地球のしくみ】15~大気編(1)~核融合による元素の生成過程

みなさん、こんにちは。
これまで【地球のしくみ】シリーズでは、地球の内部構造や海における生物の起源を追求してきました。
地球と他の惑星の大きな違いは、この生命誕生を起こす海の存在ですが、この海と生物が他の惑星と異なる「大気」の形成に深く関わることになります。そして、この大気の形成が生物の進化を促すことになります。
今回からは、地球全体を覆い、生物の進化を促した地球特有の大気の謎に迫ります。
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(画像は、コチラからお借りしました。)

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◆ ◆ ◆ 太陽系の中でも特異な地球の大気

太陽系の主な惑星の大気の化学組成は、3つのタイプに分類できます。
1つ目は、木星のような「水素(H2)とヘリウム(He)」からなる大気。
2つ目は、金星・火星のような「二酸化炭素(CO2)」を主成分とする大気。
3つ目は、地球の「窒素(N2)、酸素(O2)」を主成分とする大気。
 
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        木星            金星            地球
(画像は、コチラコチラコチラからお借りしました。)
地球の大気は、同じ岩石型惑星(地球型惑星)である金星や火星のような二酸化炭素(CO2)を主成分とする大気と異なり、窒素(N2)と酸素(O2)を主成分とする大気です。
(もちろん、ガス惑星である木星のような水素(H2)からなる大気とも異なります。)
これは、太陽系のなかで唯一「海」をもち、そのことにより「生物」が存在することが起因しています。
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そして、他の惑星と異なる地球の大気は、
「成層圏のオゾン層」
「熱圏の電離層」
「磁気圏の磁場」

と何重にも宇宙線や太陽風の放射線から地表の生物を守るシールドを形成しています。
また、この大気の存在が、地球の温度などの環境を調整する機能も果たしています。
この地球特有の大気が、いかに形成されたのか、その生成過程の歴史に遡って探ってみます。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そもそも、現在の地球の大気の基になる窒素や酸素、火星の二酸化炭素、木星の水素は、一体どのようにできたのでしょうか?
元素は、星の中で生まれました。星と言っても地球や火星、金星のような“惑星”ではなく、熱核反応により自ら熱と光を放つ天体である“恒星”の中で生まれたのです。

◆ ◆ ◆ 恒星の核融合によって、ヘリウム・炭素・酸素・ケイ素・鉄ができた

◆ 恒星初期の水素燃焼反応によるヘリウムの生成
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水素(H)は、宇宙の最初につくられ、宇宙に雲のように広がっています。
そこに濃淡ができると、濃いところでは重力が大きくなり、周囲の“水素雲”を集めてさらに濃くなり、中心は高圧になります。そうするとそこに摩擦熱が生じ、高温高圧の中心で2個の水素原子が融合して、1個のヘリウム(He)になるという核融合反応が発生し、巨大なエネルギーを発生するようになります。
それによって恒星は徐々にヘリウムの多い状態に姿を変えていきます。水素が減少し、水素の核融合は恒星表面で行われるようになり、水素よりも重いヘリウムが恒星中心核にたまっていきます。
この存在比の多いヘリウムを原料により重い元素が作られていきます。
これを「アルファ反応」と言います。
(参考:リンク

◆ ベリリウムの生成
ヘリウムが中心に集まり、その重力によって“おしくらまんじゅう”のような状態になり、温度が上昇しヘリウム同士の核融合が始まります。 
Be.JPG   
(※但し、Beは不安定なため、Heに戻りやすい。)

◆ 炭素の生成
中心核の温度がさらに上がって1億Kを超えると、核融合の頻度も高くなります。
その結果、ベリリウムが崩壊する前に3つ目のヘリウムと融合し、炭素が生成されます。
C.JPG

◆ 酸素・ネオン・マグネシウムの生成
炭素にヘリウム原子が融合すると酸素を形成し、さらに高温ではヘリウムが酸素と融合してネオンなど重原子が発生します。そしてさらに、ネオンとヘリウムが融合しマグネシウムが発生します。
O.JPG

◆ ケイ素の生成
マグネシウムの燃焼によってケイ素が生成されます。
Si.JPG

◆ 鉄の生成
ケイ素の燃焼はヘリウムの原子核を捕獲するアルファ反応によって進行し、連鎖的に新しい元素が作られます。
Fe.JPG

このような過程で、ヘリウムとの核融合により偶数の元素が次々に生成されていきます。
では、奇数の元素はどのようにできるのでしょうか?

◆ 奇数の元素の形成
一方、奇数の元素は、生成された元素と水素や重水素の核融合によって生成されたと考えられます。
宇宙には水素があり、その水素からヘリウムが生成される前段階で、水素の同位体である重水素が生成されます。(ヘリウムの生成の図をご参照下さい。)
恒星の中心部では質量の重いヘリウムが核融合をしていますが、水素とヘリウムの境界あたりでも核融合していると考えられます。ヘリウムに比べると水素や重水素は核融合の確率が低いので、偶数の元素に比べて奇数の元素は存在が少ないと推測されます。(オッド・ハーキンズの法則も、このためと考えられます。)
例)炭素と重水素が核融合すれば、窒素が生成されます。
N.JPG

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(画像は、コチラからお借りしました。)

◆ ◆ ◆ 恒星の質量によって、どの元素まで生成できるか決まる
◆ 生成された重い元素が重力によって恒星の中心に集まり、タマネギ構造になっていく
このように恒星は核融合によって、恒星の成長と共に次々と大きな元素を誕生させてゆきます。
これを「恒星内元素合成」と言います。
重い元素が生成されるごとに、重力によって重い元素が恒星の中心に集まり、恒星内部はタマネギ構造になります。
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(画像は、コチラからお借りしました。)
元素がどこまで生成されるかは、もともとの水素雲(星間ガス)の質量=恒星の質量によります。

☆太陽の3倍以下の質量の恒星は、水素をヘリウムに変換した時点で燃料(水素ガス)を使い切ってしまいます。
☆太陽の3倍以上8倍以下の質量の恒星は、ヘリウムをさらに燃焼させて炭素を作ることができます。そのような恒星はヘリウムを使い切ると炭素のコアを残して、白色矮星になります。
☆太陽の8倍以上の質量を持つ恒星は、その質量による高い重力ポテンシャルにより炭素をも燃焼させ、鉄までの元素を生成します。

核融合は、不安定な原子核が融合することによって、より安定な原子核が作られるために反応が進んでいきます。しかし、鉄は全ての元素の中でも原子核が非常に安定しているため、鉄に変換し終えると恒星はそれ以上核融合を続けることができなくなります。そのため、恒星内の核融合で生じる原子は鉄までで、それ以上は誕生しません。

◆ ◆ ◆ 超新星爆発によって、鉄よりも重い元素が合成された

恒星内元素合成が終了すると恒星の芯は重力崩壊を起こします。
太陽の8倍程度までの恒星であれば外殻を失いつつ芯だけが取り残され、芯は圧縮されて白色矮星になります。
太陽の8倍以上の質量がある場合、恒星は圧縮に耐えかねて爆散します。これが超新星爆発であり、爆発前の核分裂によって中性子ができ、さらに恒星内が圧縮し核融合することによって、鉄よりも重い元素(ウラン238まで)が合成されます。これを「超新星元素合成」といいます。
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では、どのように爆発するか、もう少し詳しく推測してみます。
(下記の図を見ながら、お読み下さい。)
恒星内元素合成の核融合が進むと、中心部が鉄で占められるようになります。
(※鉄の原子核は最も安定なため、これ以上の核融合は起こりません)

1.鉄が中心に集まると、どんどん高圧状態になっていきます。
1.JPG
2.すると、鉄元素のおしくらまんじゅうによって高温状態になり、熱=ガンマ線が放出されます。
2.JPG
3.今度は鉄がガンマ線を吸収し光崩壊=核分裂(アルファ崩壊)が起こり、ヘリウム原子のガスと中性子が放出されます。
3.JPG
4.すると、ヘリウム原子のガスによって恒星の中心部は膨張し、空洞のような状態になります。
4.JPG
5.そうすると、重力によって押し込まれた周りの物質が急激に中心へ落ち込み、圧縮されます。
6.このときに圧縮された元素が中性子を捕獲することで核融合が再度はじまり、鉄より重い元素ができます。
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7.そして、核融合のエネルギーによって星が爆発し、崩壊します。
7.JPG

このようにして、宇宙には、その95%を水素(H)、残り5%をヘリウム(He)が占め、その他の元素はほぼ0%に近いですが、そこには約90種類の元素が存在しているのです。
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(画像は、コチラからお借りしました。)

◆ ◆ ◆ まとめ

★原子番号「鉄」までの元素は、恒星内の核融合で誕生する
恒星内で元素が生成される過程は、ヘリウムとのアルファ反応
水素→ヘリウム→炭素→酸素→ケイ素と順番に燃焼していく。
それぞれがヘリウムとアルファ反応して、偶数の原子番号をふやしていく。
奇数の元素は、水素や重水素と核融合することによってできる。

★恒星の質量によって、どの元素まで生成できるか決まる
核融合には原料(ヘリウム)が必要。原料がなくなると核融合も止まる。
そのため、どの元素まで生成できるかは、水素雲からどれだけヘリウムを生成できたか=恒星の質量による。

★原子番号「鉄」以降の元素は、超新星爆発によって誕生する
「鉄」以上の元素も、核融合で誕生する。
核分裂によってできた中性子が激しい圧縮と核融合によって元素に取り込まれ重い元素ができる。
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さて、今回は宇宙で元素がどのように生成されたかを扱いました。
次回は、これらの元素が地球上でどのような物質に変化していったかをみていきます。

List    投稿者 staff | 2012-09-29 | Posted in D.地球のメカニズム, D01.地球史No Comments » 

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