【地球の内部 5】地球内部の高温・高圧世界は地上とは別世界の様相を示す
電磁波は地震を引き起こすのか?について、地電流や地磁気との関係などのマクロ的な視点と、電磁波の共振現象などのミクロな世界の視点で調査をしてきました。
しかし、これら解明のためには、地球内部の構造や物性や大気圏を介した宇宙や太陽との関係についてのより詳細な把握が必要なことがわかりました。
という問題意識から始まった地球内部シリーズ。最終回の今回は「温度」をテーマに扱っていきたいと思います。
※バックナンバー
【地球の内部 1】地球の内部構造をどうやって推測したのか?
【地球の内部 2】地球の元素組成の推定方法
【地球の内部 3】地球の力学的性質の推定方法
【地球の内部 4】地球の内部圧力が作る未知の鉱物
【地球の内部 番外編】宇宙より遠い場所 ~ダイヤモンドで作る地球の最深環境
実は意外にも、地球内部の状況において現在最もわかっていないのが「温度」なのです。
では、現在地球内部の「温度」はどのような状態になっているのでしょうか?
地球内部の高温世界を探検してみましょう!
☆ ☆ ☆ 地球内部の温度はどうやって推定しているのか?
☆ 地球表面までは100m毎に3℃上昇する
深海の底に温度計を突き刺し、海底表面から深さ数メートルまでの間の温度勾配(上がり方)を測定すれば、熱伝導率を使って温度勾配と熱流量の関係式より、内部温度を求めることが可能です。
それによると、およそ100m深くなるごとに約3℃温度が上がるそうです。
地球の表面(およそ地殻~上部マントルまで)は、このように測定値と理論式によってある程度確度をもって推定されています。
しかし、もしこのままの割合で温度が上昇していくとすると、地球の中心部では約19万℃!(=△3℃/0.1km×6400km)ということになり、これはいくら何でも高すぎます。
だから、地下深くなるにつれてだんだん温度の上がり方(温度勾配)は緩くなると想定できそうです。
Q.ではこの先どうやって推定する?
☆ 『圧力によって物質の融点が変わること』がヒント!
例えば、通常1気圧下で水は100℃で沸騰しますが、気圧の低い山頂では80℃ぐらいで蒸発したりします。逆に気圧の高い状態だと、その分高い温度にまであげないと蒸発しません。圧力鍋もその原理を用いています。だから、100度でも水は蒸発せず100℃以上の熱を材料に加えることができるので、短時間で蒸したり煮たりできるのです。
これは沸騰での事例ですが、融点も同様に「圧力状態によって変化」します。
前回記事で、地球内部の状態は地震波の測定によって、「マントルは固体、外核は液体、内核は固体」ということに加え、深さにおける「内部圧力」がわかっています。
※地球の内部構造をどうやって推測したのか?
※地球の内部圧力が作る未知の鉱物
この『圧力によって物質の融点が変わること』を加味して、『内部の物質状態』、『内部圧力』を照らし合わせてみると、大まかに下図のような温度変化を辿ることが想定できます。
つまり、マントルではその「圧力での融点以下」、外核ではその「圧力での融点以上」、内核ではその「圧力での融点以下」になるということです。
これまで高圧下での溶融実験は、限られたサンプルでしか行われていませんが、それによると、鉄の融点は、内核-マントル境界付近の圧力の下ではおよそ4000℃、外核-内核境界付近ではおよそ5500℃になることがわかっています。核は90%程度が鉄で構成されているので、外核は4000~5500℃、内核は境界層付近で5500~6000℃程度になることがわかるのです。
(実際にはニッケルなどの軽金属が含まれる為、もっと低くなるといわれています)
一般的に鉄の融点は1538℃、金属の中で最も融点が高いと言われるタングステンの融点でも3400℃です。ですが、地球内部の高圧力下では6000℃になっても固体だというのは驚きですね!
Q.何で高温でも融けないの?6000℃もある固体ってどういうこと?
☆ ☆ ☆ 温度と圧力の関係を分子の結晶構造から考える
分子の結晶構造を保つ分子間に働く力には様々ありますが(水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力etc.)、大まかに「温度と圧力の関係」を分子の結晶構造から見ていくと右図のようなモデルで表されます。
例えば、分子の結晶を熱すると、各分子は分子運動(固体の場合は振動)が激しくなり、固体であれば分子を結合していたバネが切れ、流動し始めて液体となります。(これを融解といい、この時の温度を融点という。)
このように「温度が上がる」ということは、分子運動が激しくなり「分子間の結晶をバラバラにすること」であるのに対して、「圧力が高くなる」ということは、外から力が加わり、逆に「分子間の拘束力を高め、分子がバラバラになるのを妨げる」ことになります。
物質とは、“温度によって決まる分子運動によって「分子がバラバラになる(あるいは止まる)方向」と、圧力によって「分子がバラバラになるのを妨げる方向」の間で、液体であったり、固体であったりという物質の状態が決まるのです。
だから、地上とは異なる高圧力状態だと、温度が上昇して分子の結晶がバラバラになるよりも、結晶の拘束力が強まった状態にあるので、「高温でも融けない固体」が存在できるのです。
☆ ☆ ☆ 地球の内部は私達が生きている地球表面とは全く異なる様相を示す
このように圧力と温度によって、物質の状態が変化することがわかりました。
しかし、地球内部のように極端に高い圧力化ではその“結晶の形そのもの”が変化します。
それが、前回記事( リンク)で示した「相転移」と呼ばれる結晶構造の変化です。
現在、地球内部の状況を実験室で再現できる技術が確立されており(リンク)、圧力と温度の状態によって、様々な結晶構造が見られることが分かっています。
【地球内部の再現マントル~外核上部】 【地球内部の再現マントル~内核上部】
※図中B1:塩化ナトリウム構造、rB1:塩化セシウム構造、B8:ヒ化ニッケル型構造
これまで、地球内部を色々な側面から見ていきましたが、
地球内部の高温高圧力状態は、全ての物質が「金属化」したり、「態変化にも影響」したり、他にも高圧力だと磁性を失うことや、高温だと抵抗が上がるなど、の物質のミクロな性質に様々な変化を及ぼします。
すなわち、地球の内部は私達が生きている地球表面とは全く異なる世界なのです。
地球内部で起きている現象(例えば地磁気や地電流、さらには地震の原理など)を考える時、常識を取っ払い、これらの物性の変化や取り巻く状況を前提に考えていく必要があります。
なるるの一言
自然の摂理ブログ新メンバーのなるるです!
今回も気付きをお届けしたいと思います!
「水は0℃以下になると固体化していき、氷になります。」
「水は100℃を越えると沸騰し始めます。100℃は水の沸点です。」
…といったことは、誰もが小学校に通っていた頃に学んだいわゆる常識ですよね?
でもこれってあくまでも私達が普段生活している《1気圧》での話!!
実はこの状況こそ、地球のほんの表面での話で、地球のそのほとんど、そしてそれ以上に宇宙の中ではそれこそ異常なんです!
…ということまで理解出来ている人は意外と少ないのではないでしょうか(^^)?
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