2012-07-11

【気象シリーズ】日本の局地気候と農業 ~若狭の気候特性から今後の農業の可能性を探る その1

前回の【気象シリーズ】日本の局地気候と農業では、類グループの類農園がある奈良県・宇陀市を取り上げました。今回スポットをあてる地域は、福井県・若狭町です!
【若狭町はこちら】
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※画像はこちらからお借りしました
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※かつて「若狭国」だった福井県の南西エリアは、「若狭」「若狭エリア」あるいは「嶺南」とも呼ばれます。今回の記事では、これら広域名称と、行政区としての「若狭町」とを分けて使います。
ところでみなさんは、若狭の食といえば何を思い浮かべますか?
若狭=新鮮な魚を連想する人が多いのではないでしょうか。確かに若狭湾には有名な漁港が多く、古代・平安時代の「若狭国」は、皇室・朝廷に海産物などを貢いだ「御食国(みけつくに)」であったと推定されています。また、京都へ魚を運んだ「鯖街道」が通っていたエリアとしても知られています。
一方で、山の幸はどうでしょうか?
若狭町に絞っても、ブランド品である若狭梅をはじめとして、若狭白ねぎ若狭いちじく若狭米(コシヒカリなど)があります。生産者の高齢化や狭小地ゆえの生産性の悪さという状況にはありますが、そんな中でも奮闘している農家はたくさんあります。
類グループとゆかりのあるかみなか農楽舎もその一つです。類グループと同町の前身である上中町との共同事業として平成14年に立ち上げられた農業生産法人ですが、今年はちょうど創業10周年を迎え、地域の農業活性化を担う中核組織としてますます期待が集まっています。
【かみなか農楽舎】
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※画像はこちらからお借りしました。
今回はこの若狭町がある福井県は嶺南エリア(県の南西半分)の気候特性を探ると共に、若狭町、そしてかみなか農楽舎のある上中地域の新たな農業の可能性を探ってみようと思います。
まずは、若狭で作られる農産物の中でも主要生産物である、梅と米にスポットを当ててみます。

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◆梅の里・若狭
福井県は梅の産地として有名で、果樹面積で言えば全国3位、収穫量でも全国5位に入ります。そんな「福井梅」ブランドの産地として有名なのが若狭であり、「福井梅」≒「若狭梅」と言っても過言ではありません。
【福井梅・若狭梅】
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若狭の中でも中心的な産地は、若狭湾に近い三方五湖地域で、江戸時代からその生産は始まっています。より山側に位置する上中地域も主要な梅の産地の一つで、三方五湖周辺と比べても気候・風土で大きな差はなく、今後も拡大可能性を感じさせる作物の一つです。
ただ一方で、非常に手間がかかる割に結実が不安定であるため、残念ながら農業活性化の切り札というには壁が多いと思われます。
【参考】
「果樹園芸大百科・ウメ」(2000年・農山漁村文化協会)
農林水産統計・びわ、おうとう、うめ(農林水産省)
「福井梅」(福井県農林水産部)
ふくいの農業・うめの出荷(JA福井県中央会)
西田梅林(若狭三方五湖観光協会)
◆米の里・若狭
若狭町で獲れるお米につけたブランドが「若狭米」ですが、その主力品名は「ハナエチゼン」(早生)、「コシヒカリ」(中生)、「あきさかり」(中晩生)です。とりわけ、粘りが強く食味も優れているコシヒカリは、今では全国的に有名なトップブランドですが、実は福井県が発祥の地なのです!
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そのコシヒカリの誕生にはいろいろなエピソードがありますが、以下はそのひとつ、昭和23年(1948年)にF3(雑種第3代)が誕生し、一部が福井県農業試験場に渡った時の話です。逆境の中での挑戦が今のコシヒカリに繋がっているのがわかります。「ふくい米.com」からの引用です。

当時の、福井県農業試験場(当時農事試験場)は、発足したばかりで、育種材料が乏しく、当時の所長が親交のあった、新潟農業試験場(当時、農事試験場)の所長から、新潟で交配された材料を譲り受けた。
ただし、この時代、各農事試験場では、多収と耐病の品種育成で、熾烈な開発合戦が行われ、当時、新潟で脚光を浴びなかったこの稲は、「くれてやる」と言った感じで、福井に渡って来た。これは、当時の、農林水産省幹部の発言でも「捨てるようなものがあったら、福井にやってくれ。」と言う発言からもわかる。
しかし、この中に、コシヒカリの先祖となる、F3(雑種第3代)が含まれていた。この、F3(雑種第3代)は、当時20粒しかなかったと言う。そして、ここで、コシヒカリの開発の中心的な役割を果たす、石墨慶一郎氏と出会う。また、この年の6月には、福井地震が発生し、福井市は壊滅的打撃を受けたが、強湿田で育成されておったため、枯れなかったなど、コシヒカリの強運に関するエピソードは多い。
この頃、コシヒカリは「越南17号」と呼ばれていたが、倒れやすく、いもち病に弱い点で、お蔵入り寸前であったが、食味の良さと、熟色の良さにひかれ、細々と育苗されていた。ただ、コシヒカリを最終的に品種固定したのは、石墨慶一郎率いる、福井県農業試験場(当時、農事試験場)とされてる。

(引用おわり)
かみなか農楽舎のある上中地域でも米(コシヒカリ)の栽培は盛んです。この地域は水が綺麗なことで有名な「北川」(※昭和56年以来、近畿地方整備局管内の一級河川水質ランキングで1位を続けている!)の水系にあたり、単に綺麗なだけでなく豊かな動植物にも恵まれた環境にあることから、この地域において今後も米が主要生産品目になるのは間違いないでしょう。
ただ一方で、残念ながら量で言うと、より大きな水系と広い平野に恵まれた嶺北エリア(県の北東半分)には叶いません
では、若狭、そして上中地域の農業の可能性はどのあたりに見出せるのでしょうか??
~その2につづく~
【参考】
若狭米(JA若狭)
福井米(福井県農林水産部)
北川とは?(国土交通省)
全国一級河川の水質状況(平成15年・国土交通省河川局)
ベスト5河川の変遷
北川水系河川整備計画(福井県)
生物多様性調査・福井県(環境省自然環境局)

List    投稿者 seiichi | 2012-07-11 | Posted in D02.気候No Comments » 

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