2009-03-14

地球環境の主役 植物の世界を理解する⑫大気中の炭酸ガスを蓄積する植物活動

今回は、光合成により、大気中の炭酸ガスを取り込み、自らの組織(繊維質・セルロース)に固定する側面に注目してみます。 
 
太古の時代、地球大気の炭酸ガス濃度はどうだったのか?
炭酸ガス濃度は、植物にどんな影響を与えるのか?
植物の光合成によって、大気中の炭酸ガスは減ったのか、それとも変わらないのか。
数千万年単位での地球と植物のメカニズムに迫ってみます。 
 
手掛かりとして、『植生と大気の4億年―陸域炭素循環のモデリング』を参照しました。 
 
41HVBC9BS2L__SL500_AA240_.jpg 
 
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陸上植物の大繁殖で炭酸ガス濃度が急減/デボン紀・石炭紀 
 
現在の大気中の炭酸ガス濃度は、370ppmといわれています。
4億年前のデボン紀の炭酸ガス濃度は、3600ppm。(下の図です。)
現在の10倍も炭酸ガス濃度が高かったのです。
それが、デボン紀・石炭紀を通じて、300ppmの濃度まで急減します。 
 
デボン紀は、陸上植物(シダ類の大木)が大繁殖し、森ができた時代と言われています。現在の10倍も炭酸ガス濃度が高かったので、植物の光合成には優れた環境だった。だから、大繁殖して、森ができたとも言えそうです。
森ができることと、炭酸ガス濃度が急減するのは、関係あるのでしょうか? 
 
そうですね。大いに関係があります。 
 
植物にとっては、炭酸ガスは食糧と言えます。
植物が、せっせと大気中の炭酸ガスを食べて(光合成して)、自分の体(繊維質・セルロース)をつくります。
デボン紀のシダ類の大木は、大気中の炭酸ガスを大量に吸収し、森を形成しました。
だから、大気中の炭酸ガスが、植物に姿を変え、減少したといえます。
これは、石炭紀まで続きます。 
 
図:4億年の大気炭酸ガス(CO2)の濃度変化 
 
CO2noudo.bmp 
 
図は、『植生と大気の4億年』に出てくる大気中の炭酸ガスの濃度変化です。(元図を加工してありますが。) 
 
図の左目盛は、300ppmに対する炭酸ガス濃度の比率です。
少し分かりにくいので、右目盛に絶対値を示してあります。
一番下の横補助線が、600ppmの線です。なお、ppmは百万分の一という意味です。 
 
<炭酸ガス濃度が低下するメカニズムは?> 
 
ところで、植物の死骸は、微生物によって分解され、最後は、炭酸ガスとして大気中に放出される。
何故、一方的に炭酸ガス濃度が減少したのでしょうか? 
 
二つの要素があります。
一つは、植物を食べる微生物、動物が大量に繁殖した。その微生物、動物の体の中の有機物として、炭酸ガス発の炭素が蓄積された。それで、炭酸ガスとして大気に戻ってくる炭素ガスは多くない。 
 
もう一つは、分かりますね。
そうです。植物が積み重なって土に埋もれ、炭化して『石炭』という形態に変わったのです。
一旦、シダ類の大木に吸収された炭酸ガスが、石炭という形で、地中にとどまっているのです。
地球の大気炭酸ガス濃度が高まると、「植物活動が活発化し、そこを原点として生物総体が増大し、炭酸ガス濃度を低下させる」という原理が働くのですね。 
 
大陸衝突・岩石崩壊による炭酸ガス濃度上昇/ペルム紀・三畳紀 
 
ペルム紀と三畳紀にかけて、大気中の炭酸ガス濃度は上昇します。
300ppmから1500ppm位まで上昇していますね。 
 
植物が吸収する以上に、何処からか炭酸ガスがやってきたのでしょう。 
 
ペルム紀には、ローレンシア大陸とバルティカ大陸とシベリア大陸など全ての大陸が次々と衝突してパンゲア大陸という巨大な大陸が出来上がりました。 
 
Pangaea.png
(ウイキペディアから借用) 
 
大陸衝突という荒々しいことが起こりました。
この衝突により、地殻の岩石が大量に砕かれ、火山のマグマが流れるなど、岩石成分が大気中に放出されます。
岩石結晶に含まれていた炭酸ガス成分が、大量に放出されたと想像されています。 
 
また、ペルム紀末には、P-T境界といわれる生物の大絶滅が起こっています。90%、95%が絶滅したと言われています。 
 
ペルム紀・三畳紀は、大陸衝突による岩石崩壊から炭酸ガス供給が増える一方、植物・微生物・動物が絶滅し、生物界の炭酸ガス固定能力が低下した。 
 
そのために、大気中の炭酸ガス濃度が上昇しました。
デボン紀・石炭紀とは逆の現象が起こった。 
 
ジュラ紀以降の炭酸ガス濃度の減少・生命活動の復活 
 
大陸衝突が収まり、絶滅を生き延びた植物が、再度繁殖することで、大気中の炭酸ガスを食べ、植物体の中に炭酸ガスを取り込んで行きます。そして、微生物・動物が再度繁殖し、炭酸ガスを生物体の中に蓄積していきます。 
 
この結果、大気中の炭酸ガス濃度は、長い時間をかけて、現在の300ppmの低い濃度まで低下しました。(植物界の主役は、シダ類から種子植物に転換しています。) 
 
なお、パンゲア大陸は、徐々に、分割され、現在の7大陸になります。その過程で、インド大陸がユーラシア大陸にぶつかり、その襞であるヒマラヤ山脈ができますが、部分的な大陸衝突なので、炭酸ガス放出は多くなかったようですね。 
 
Pangea_animation_03.gif
(ウイキペディアのパンゲア大陸の項にあるアニメです。) 
 
 
地球の地質年代スケール(数千万年のスケール)では、以下のように言えそうです。 
 
地球大陸の衝突・激変により、大気中の炭酸ガス濃度が大幅に高まる。
すると、その増大した炭酸ガスを食糧とする植物が大繁殖し、植物→微生物・動物という形で、生物総体が増大し、炭酸ガスを生命体の中に固定する。 
 
そして、炭酸ガス濃度が低下すると、植物の光合成取り込みと生物分解による炭酸ガス放出が拮抗し、炭酸ガス濃度は300ppm水準で安定する。 
 
地球環境の要素である「大気炭酸ガス濃度」と植物界(光合成機能)及び生物総体が、いかに、ダイナミックに関係しているか、驚きですね。 
 

List    投稿者 leonrosa | 2009-03-14 | Posted in D.地球のメカニズム6 Comments » 

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コメント6件

 ありんくりん | 2009.11.06 6:58

トラックバックありがとうございます。私の「地球温暖化疑問」シリーズは、実は結論部分のCO2説批判まで至っておりません。
実は、私はほぼCO2説はありえないと思っていますが、その結論を書く前に、あまりに世の中がCO2削減に傾いてしまいました。とうとう民主党政権が25%削減などという正気の沙汰とはおもえない政策をだす始末です。
一種の無力感があります。しかし、貴ブログを拝見して勇気づけられました。
私はいきなりCO2会議ではなく、傍証とされたことからひとつずつ論証していこうと思っています。
あれを書いた一年前から、大分資料もたまったし、また地球温暖化シリーズをやりましょうか。

 yoriya | 2009.11.07 21:27

ありんくりんさん、コメントありがとうございます。
>実は、私はほぼCO2説はありえないと思っていますが、その結論を書く前に、あまりに世の中がCO2削減に傾いてしまいました。とうとう民主党政権が25%削減などという正気の沙汰とはおもえない政策をだす始末です。
なんでもかんでも温暖化問題として捉えるから、ややこしくなるように思います。
太陽光などは温暖化というよりは、エネルギー問題という視点で捉える方がまっとうですし、資源の少ない日本からすれば投資(税金)を投じる価値はあるようにも感じています。
また、太陽との関係で言えば地球は寒冷期に差し掛かっているようです。温暖化を考えるより、寒冷化に伴う食糧危機に対して検討すべきなのかもしれません。
>あれを書いた一年前から、大分資料もたまったし、また地球温暖化シリーズをやりましょうか。
楽しみにしています。
また引用させて頂くと思いますが、今後ともよろしくお願いします。

 コバヤシ | 2009.11.10 22:17

映像や画像って、大した説明がなくても伝えたいことが伝わる訴求力を持っています。
そしてそれは大抵感情に訴えるものが多い。
マスコミは、人々を感情的にさせ、冷静で理性的な判断を阻害している。ここに犯罪性があるのだと思いました。

 ぶっき~ | 2009.11.10 22:20

先日マスコミの取材を受けましたが、マスコミというのは取材する前から書きたい記事が決まっていて、そこに誘導するような質問ばかりしてきます。
それで、想定していた解答が得られないと、針小棒大に解釈したり、時には取材もしていないことを捏造、ということも多々あります。
温暖化もまさに同じですね。

 yoriya | 2009.11.24 19:34

コバヤシさん。コメントありがとうございます。
遅くなって申し訳ありません。
論理整合性より衝撃的なものの方が数字(視聴率や部数等)がとれると言う事ではないでしょうか。
事実より数字。これでは真っ当な報道がされる訳がありません。

 yoriya | 2009.11.24 21:07

ぶっき~さん。コメントありがとうございます。
マスコミは取材やアンケートなど意図的に操作していると言うのは良く聞くところです。
取材などはぶっき~さんの書かれている通りですが、アンケートなどでは選択肢がそもそも恣意的につくられたもので、そもそもやってもやらなくても選ばれるものは決まっているようです。
答え有りきの取材やアンケートでは事実は見えなくなりますが、まさにマスコミはそれを率先して実行し、地球温暖化に限らず、自らに都合のよい社会共認を形成しているのでないでしょうか。

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