2012-11-28

【気候シリーズ】エルニーニョ現象を引き起こしているのは月!? その2

前回の「エルニーニョ現象を引き起こしているのは月!? その1」では、エルニーニョ現象ラニーニャ現象ENSO(エルニ-ニョ・南方振動、El Niño-Southern Oscillation、エンソ)とはどういう現象なのか?をみてきました。
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※画像はこちらからお借りしました
今回のその2では、これらの現象を引き起こす駆動力の一つとして、 「月」との関連 を探ってみます。

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深層海洋大循環と月の関係
まず、月と海水の循環との関連性について、東京大学「謎に満ちた深海 – 深層海洋大循環は「月」が駆動している!? 」からの引用です。

深層海洋大循環とは北大西洋北部、および、南極海で深層/底層に沈み込んだ海水が、世界中の深海を約1500年で巡り、北太平洋やインド洋などで表層に上昇して、極域へと戻っていく、あたかもベルトコンベアーのような海水循環のことです。
この深層海洋大循環は、極域の冷たい海水を低緯度に運び、また、低緯度域の暖かい海水を極域に運ぶことで、極域(低緯度域)が極端に寒く(暑く)ならないように、いわば、エアコンの役割を果たしていると考えられています。
海水は冷やされると重くなるので、極域において海面から冷却された海水は深層/底層に沈みこんでいきます。この極域での海水の沈み込み量は、毎秒2千万トンといわれています。ベルトコンベアーが定常に動き続ける限り、この深層/底層に沈み込んだ量と同じだけの深層水が表層に戻らなければなりません。この深層水が表層に戻るのに、重要な役割を果たしているのではないかと考えられているのが深海乱流です。
海洋は表面から太陽の日射を受けて暖められています。実は、こうして海面から加えられた熱は、海洋中の乱流の効果で次第に深い方へ伝達され、乱流の働きで次第に暖められた深層水は浮力を得て、表層に上昇してきます(図2)。
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図2: 深層海洋大循環の物理過程

それでは、この乱流はどのようにして起されるのでしょうか?実は、主に「月」の引力 (潮汐力)によって引き起こされる潮汐流から来ている ことがわかってきたのです。
潮汐流とは、地球の自転、太陽と月の引力によって引き起こされる1日平均2回の海面の昇降現象である「潮汐」によって発生する流れを言います。
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※図はこちらからお借りしました
以下、先ほどの「謎に満ちた深海 – 深層海洋大循環は「月」が駆動している!? 」からの引用を続けます。

「月」による引力の作用下で、海の中には常に潮汐流が存在しています。これが海嶺や海山にぶつかると、その下流側に乱流が誘起されるのです(図3)。こ れは、富士山のような高い山に風があたるとその下流側に乱流が発生して、そこを通過する航空機を大きく揺らすのと同じです。
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図3: 潮汐流によって海嶺や海山の下流側に誘起される乱流の模式図。
このように考えてみると、1500年スケールの深層海洋大循環は、「月」が駆動しているといえるのかもしれません。
(中略)
図7を見てもわかるように、深海乱流の強い場所 (乱流ホットスポット)は、顕著な海嶺や海山の存在する位置とほぼ一致しています。しかしながら、高い海山と潮汐流があれば乱流が生まれるのかというと、そうとも限りません。例えば、アリューシャン海嶺では、強い潮汐流が高い海山にぶつかっているのに、乱流の強い領域はアリューシャン海嶺から広がっていません。実は、理論的な解析から、月の引力から与えられた潮汐流は、緯度30度よりも低緯度側にある海嶺/海山にぶつかると、強い乱流を引き起こすものの、緯度30度より高緯度にある海嶺/海山にぶつかっても、乱流を引き起こさないことが明らかにされています。
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図7: 様々な海域で行った乱流観測の結果を総合することにより推定した深海乱流の全球的な強度分布

この分布を見ると、月がもたらす潮汐流によって引き起こされる乱流が強い領域は、エルニーニョ現象、ラニーニャ現象、あるいはENSOが発生する領域と重なっているため、両者は何らかの関係性を持っていると考えられます。
大気と海流のテレコネクションと月がもたらす「潮汐18.6 年振動」との関係
実際、ENSOを含む地球規模の大きな大気と海流の相互作用(テレコネクションといいます)は、月がもたらす「潮汐18.6 年振動」という現象と関係があるという研究もなされています。
安田一郎(東京大学大気海洋研究所)「北太平洋中層水の形成・輸送・変質過程に関する研究」によると、月がもたらす潮汐18.6 年周期振動が、西部北太平洋の中層水塊の変動に与える影響について研究を行ってきた結果、北太平洋亜寒帯海域、オホーツク海、ベーリング海の表中層の水塊に、約20 年周期の変動が存在することが発見されています。
また、月軌道18.6 年周期振動により1日周期潮汐に起因する鉛直混合が千島・アリューシャン列島付近で変動することによって、その20 年周期変動が説明可能であることも指摘。
さらに、北太平洋10 年規模振動指数(太平洋では10年以上の長い周期で大気と海洋が連動して変動している)に潮汐18.6 年振動が存在することを指摘し、千島列島付近での鉛直混合の変動が赤道に伝搬し、ENSOの変調を引き起こしている可能性を示唆しています。
そして、同じ安田一郎氏らは東京大学大気海洋研究所「潮汐混合の直接観測と潮汐18.6年振動に関わる海洋・気候変動の解明(H20-H24)」の中で、千島列島付近の潮汐混合を変動させた大気・海洋・海氷結合モデルの結果の解析を進め、木の年輪などを用いで再構成されたENSO指標を解析した結果として、「1日周期潮汐振幅が最大年から3-4年目にラ・ニーニャ、9-11年目にエルニーニョが生じる傾向があり、気候モデル実験の結果と整合的であった」と、ラニーニャ現象・エルニーニョ現象との関連をより明確に報告しています。
どうやら、
極地の気候変動( 北極振動)には太陽の磁気が、
赤道付近の気候変動(南方振動、ENSO)には月の潮汐力が、
それぞれ影響しているといえそうです。
少なくとも、太陽や月といった宇宙と地球との関係が、地球の気象に大きく作用しているのは間違いないでしょう。引き続き、宇宙気候の視点から気候にしくみにアプローチしていこうと思います。お楽しみに☆

List    投稿者 seiichi | 2012-11-28 | Posted in D02.気候No Comments » 

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