2012-10-21

【地球の内部 3】 地球の力学的性質の推定方法

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画像はこちらからお借りしました。

地球の内部 シリーズ
【地球の内部 1】 地球の内部構造をどうやって推測したのか?
【地球の内部 2】 地球の元素組成の推定方法

『地球の内部』シリーズ第三弾は、“力学的性質”の推定方法について見ていきます

“力学的性質”とは、剛体であるかないかという「流動しやすさ」(もっと分かりやすく言うと、柔らかい・固いといった性質)のことです。 :D

シリーズの前回、前々回では、地球内部の構成・元素組成とその推定方法を見てきました。
だんだんと解明されている地球内部ですが、組成の違いによる見方だけでなく、力学的性質という面からの違いを見ることも出来ます。

今回は、その“力学的性質”による地球内部の分類とその推定方法を調べました。

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☆☆☆力学的性質による地球内部構造

地球内部の「力学的性質」を調べていくと、まず次のような用語が出てきます。
『リソスフェア』
『アセノスフェア』
『メソスフェア』
・・・
素人の私には、全く聞いたこともない不思議な言葉がズラリ

それぞれが何を表しているのかをまず調べましょう

リソスフェア
 岩石圏とも呼ばれ、地球の地殻とマントル最上部の固い岩盤を併せた部分の総称。プレートとほぼ同じ。

アセノスフェア
 岩流圏とも呼ばれ、リソスフェア(プレート)の下にある層。上部マントルの中にあって、部分的に溶融していて流動性に富んだ軟らかい部分

メソスフェア
 マントル下部の層を指す。アセノスフェアと外核との間に位置する。深度300kmから2900kmを指すが、場合によっては、アセノスフェアの下限を深度660kmにとる場合もあり、これ以深をメソスフェアと呼ぶこともある。アセノスフェアと化学組成は同じである。
高温・高圧で高い剛性を持つ層であり、メソスフェアの上部に位置するアセノスフェアのような流動性の振る舞いはほとんどない。

地球内部構造の組成を基準にした分け方と、力学的性質(流動性)を基準にした分け方との関係は次のようになっています。

産業技術総合研究所 地質学総合研究センター リンク より引用

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組成を基準にした分け方では、上部マントルは主にかんらん岩からできていると考えられています。下部マントルは高い圧力のためかんらん岩がより緻密な構造に変わっていると考えられ、上部マントルと下部マントルの間は漸移帯 (遷移層) になっています。
下部マントルと外核の境界部はD”層と呼ばれ、かんらん岩が更に緻密な構造に変わっていると考えられます。外核は主に液体の鉄とニッケルから、内核は主に固体の鉄とニッケルからできていると考えられています。

一方、流動性を基準にした分け方では、地球の表層をリソスフェアとアセノスフェアに区分します。アセノスフェアは上部マントルに相当しますが、その一部が溶けていて流動性があると考えられています。現在では広く知られるようになったプレートテクトニクスでプレートと呼んでいるのは、ほぼリソスフェアに相当します。
このほか、リソスフェアにアセノスフェアの最上部も含めてテクトスフェアと呼び、これをプレートとみなす考え方もあります。

このような地球内部の組成及び物性の大きな変化は、地球内部の高い圧力のため、結晶の構造が高密度に変化 (相転移) することと、地球内部の高い温度のため、物質が部分的に (外核では大部分) 溶融することが原因です。
また、地球内部での温度と圧力の変化は、火成岩や変成岩の成因に大きな影響を与えます。

では、この力学的性質による分け方は、どのように推定しているのでしょうか?

☆☆☆力学的性質の推定方法

地球内部の「流動しやすさ」を測る方法は、シリーズ1『地球の内部構造をどうやって推測したのか?』でも出てきた「地震波」を用いています。

もう一度復習しましょう

シリーズ1【地球の内部1】地球の内部構造をどうやって推測したのか?より

★★★地球内部の推測方法

まず、地球内部の層を推測するためには「地震波」を使います。地震波とは地震が起こった時の揺れの種類であり、P波(Primary wave)とS波(Secondary wave)に分けられます。
~以下はこちらより引用~

①縦波:P波(Primary Wave)
・進行方向:波と同じ方向に振動
・伝搬速度:速い(地表附近で5~7km/秒)
・伝搬媒体:固体・液体・気体の全て

②横波:S波(Secondary Wave)
・進行方向:波と直角方向に振動
・伝搬速度:遅い(地表附近で3~4km/秒)
・伝搬媒体:固体中のみ(液体・気体は伝わらない)

~引用終わり~

中略

地震波の伝わるスピードが変わることからここで層が変わっているということがわかります。
モホロビチッチ不連続面はモホ面と呼ばれ、このモホ面を境として地殻とマントルが分かれていると推測されています。
地震波が伝わるスピードが変わる原因は次回以降にマントル等の力学的性質で述べるので、今回は割愛します。

と、いうことまでわかりました。

“地震波が伝わるスピードが変わる原因”を探るには、もう少し波の特性を知る必要があります。

☆地震波の伝播速度と物性の関係

http://contest.thinkquest.jp/tqj2000/30295/about/profile.htmlより引用

縦波は疎密波とも呼ばれ、媒質(波を伝える物質。例えば、音の場合は空気)の体積の変化が移動して伝わるので、媒質は液体や気体でもよく、実際、P波も液体や気体でも通過します(地鳴り・海震などがある)。それに対して、横波のS波は固体しか通過できません。

なぜかというと、横波は媒質の形の変化(ねじれ)によって伝わるので、液体や気体のようにもともと形のないものは媒質にはなり得ないのです。

P波やS波の速さは媒質の岩石によって異なりますが、一般的に地中深くほど速くなります。

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画像はこちらからお借りしました。

P波S波の性質は分かりましたが、これらの波が“地中深くに行くほど速くなる”というのはどういうことでしょうか
ここで、地震波が伝わる速さと物性の関係は、一般に次のような式で表されます。

V[速度]=√(μ[剛性率]/ρ[密度])

※厳密には、上式はS波の式で、P波の式はもう少し複雑です
この式から、地震波速度と剛性率・密度の関係を表にすると次のようになります。

表1 地震波速度と物性の関係
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上記の関係から、地球内部の力学的性質を地震波速度の変化によって推定しています。

☆地球内部の地震波速度分布とPREMモデル

では次に、地球内部での地震波速度の変化は一体どのように捉えているのでしょうか?
もちろん、地中何千kmの所に観測点を設けて測ることは出来ません。

シリーズ1で地震波が地球中心に向かって行く際に、境界面を通る度に屈折しながら角度を変え、ある深さから再び地表に向かっていき、最終的に地球中心に向かった凸の弧を描いて伝わっていると推定されていることを説明しました。

しかし、地震波がどのような弧を描くかは、あらかじめ地球内部の詳細な地震波の速度の分布が分かっている必要があります。
一方、地震波の速度分布は、地震波がどのような弧を描くのかから推定されます、、
両者は“ニワトリと卵”の関係になっているのです。

様々な工夫をこらすことによって、両者を逐次精密化していく作業が続けられていますが、現在は、もっとも確からしいとして受け入れられている地球内部構造のモデルである、「PREM(Preliminary Reference Earth Model)」(Dziewonsky&Anderson,1981)が作成されています。

このモデルは、莫大な数の地震波観測データ(実体波の走時、自由震動の固有周波数、表面波の減衰など)の結果を用いて作成され、地球内部の密度、剛性率、圧力、地震波の伝播速度などを地球内部の深さごとに表しています。
ただし、このモデルでは地球内部の不均質な分布を3次元で表すことは出来ません。

PREMによるグラフ
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画像はこちらからお借りしたものに著者が加筆しました。

左図は地震波の速度を、右図は圧力、密度、剛性率を深さごとに示しています。

マントルと核の境界や、地下410kmから660kmの「マントル遷移層」は速度が不連続になっているのが見られます。2900km付近には、グーテンベルク不連続面、5100km付近にはレーマン不連続面が見られます。
左右の図を比べてみると、遷移層以深グーテンベルク不連続面まで(下部マントル)は、地震波速度と圧力に相関関係があることが分かります。
グーテンベルク不連続面以深(外核)では、P波は速度が7km/s程度まで小さくなり、S波については伝わらなくなっています。外核は、S波が伝わらなくなっていることから、液体であると推定されていますが、なぜ液体になるのかはこれから追求していきたいと思います。

また、レーマン不連続面以深(内核)では再びS波が伝わり、剛体(固体)になっていると推定されます。
なぜ、外核と内核で液体から固体へと変わるのかは、まだ追求の途中ですが、推測としては、圧力が一定の状態なら、内核まで液体のままだったかもしれないのが、圧力が高まることによって融点も高くなり、物質が溶けにくい状態になっているのかもしれません。

☆☆☆まとめ

この様に、地球内部の力学的性質とは、地上での物性だけでは想像できないような分布と変化が起こっていると分かりました。
そして、その推定方法は地球内部での地震波速度の変化を利用していました。

地震波の速度に変化が起こるのは、成層構造となっている地球内部の物質の違いであることと、それだけではない、地球内部という地上とは違った高圧力・高温という条件が大きな影響を与えています。
また、高圧力による物質の変化は、密度だけでなく化学組成などの変化ももたらし、速度変化に影響を与えていると考えられます。

次回以降は、これまで見てきた地球内部の構成・組成元素・力学的性質に大きな影響を与える、圧力、温度、電気的性質にいよいよ迫っていきます

List    投稿者 mame | 2012-10-21 | Posted in D.地球のメカニズムNo Comments » 

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