2011-11-30

【気候シリーズ】日本の気候③~生物多様性からみる日本の豊かさ~

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2010年のCOP10を契機に、ニュースなどでもよく取り上げられるようになった「生物多様性」。この「生物多様性」は「地球温暖化」の二番煎じとして、金貸したちの私権獲得のための隠れ蓑(美辞麗句・お題目)として使われているところがあります。(例えば、生物資源由来の薬剤などの産物の利益の奪い合いだったり・・・。るいネット『生物多様性の維持なんか幻想だ―京都議定書の愚を繰り返すな(1/2)』
他方で、生物多様性に関する国際会議の議長国に日本が選ばれたように、日本は非常に生物多様性に富んだ国でもあります。そしてその生物多様性の豊かさが国土の狭さにも関わらず農業生産性の高さにつながっており、ひいては国民生活の豊かさにもつながっているといわれており、生物多様性とはなにか、追求していく価値が高いように思われます。
そこで、今回は
①生物多様性はどのような環境条件の中で生み出されるのか?
②日本が生物多様性に富んでいるのはなぜか?その特徴は?

を追求してみようと思います
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生物多様性が高い地域は?
生物多様性とは一般に、生態系の多様性・種の多様性・遺伝子の多様性という3つのレベルでの多様性を指しますが、生物多様性のホットスポットと呼ばれる地域は以下のようになっています。
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画像はこちらこちらからいただきました。
気候帯と重ね合わせるとおおむね、熱帯地域と温帯地域の一部に生物多様性が高いことが分かります。極地や乾燥帯には見られません。
日本の特徴はどうなっているでしょうか
多様な生物の生息・生育環境を有している日本
一般的に日本は、ユーラシア大陸に隣接して南北に長い国土を有すること、海岸から山岳までの標高差や数千の島嶼(とうしょ)を有すること、モンスーンの影響を受け明瞭な四季の変化のある気候条件、火山の噴火、急峻な河川の氾濫、台風等の様々な撹乱(かくらん)があること等を要因として、多様な生物の生息・生育環境を有していると言われています。また、大陸との接続・分断という地史的過程により、多くの固有種等を含む生物相も形成しています。
固有種の多さ
日本の既知の動植物の生物種数は9万種以上、未分類のものも含めると30万種を超えると推定されており、約38万km2 という狭い国土面積(陸域)にもかかわらず、豊かな生物相を有しています。中でも固有種の多さが特徴的です。
植物でいうなら、日本に存在する約5600種のうち約1950種が日本固有種。動物では、日本にいる哺乳類91種のうち46種、は虫類64種類のうち28種類、両生類はなんと58種類のうち44種類が日本固有種です。
海洋性生物の種多様性
海域においても、黒潮、親潮、対馬暖流等の海流と、列島が南北に長く広がることから、多様な環境が形成されています。また沿岸域には、地球の4分の3周に相当する約35,000kmの長く複雑な海岸線や、豊かな生物相を持つ干潟・藻場・サンゴ礁・砂浜・砂堆・岩礁・海草帯・マングローブ林など多様な生態系がみられます。日本近海には、亜寒帯から亜熱帯を含む広い水温帯と多様な生息環境がみられ、同緯度の地中海や北アメリカ西岸に比べ海水魚の種数が多いのが特徴です。世界の25の海域に住む海洋生物の多様性や個体数を10年にわたって調査してきた国際プロジェクト「海洋生物センサス」の報告によると、海域別に見た生物の多様性では、オースラリアと日本の海がそれぞれ3万3000種と、世界で最も多様性の高い海という結果が出ています。日本近海の容積は全海洋の0.9%にすぎないにもかかわらず日本近海からは全海洋生物種数約23万種の14.6%が出現しており、これは世界的に見ても高い種多様性であり、日本近海は生物多様性のホットスポットであることが具体的な数値で示されたことになりました。

表はこちら「表2.日本近海における海洋生物出現種類、今後出現する予測種数、推定種数、外来種数の概要」からいただきました。
生物多様性が生み出される条件とは?
では、生物多様性が生み出される条件は何でしょうか。
一般的な自然外圧説、すなわち「環境が厳しいので適応放散し、その結果多様な種が生まれた」と想い浮かべそうですが、それでは自然環境に恵まれた日本が豊かであることの説明ができません。日本に両生類の固有種が多いことや海洋性生物が多種におよぶことからは、「温暖であること」と合わせて「湿潤であること」が多様性の条件であることを示していると考えられます。
また、日本の生物多様性の注目点はその固有種の多さですが、日本に固有種が多いのは、大陸と分断し小島になったという地史的過程によると思われます。大陸から分離したことが、独自の進化を促し、多様な固有種を形成したのです。これは同じく大陸から分離したマダガスカル島において固有種が多いことからも確かめられます。
しかしながら、「温暖」で「湿潤」、かつ「離れ小島」という条件だけでは、環境はむしろ非常に安定しているので、種間闘争における勝者と敗者が固定してしまいます。そうなると、それ以上多様化など進まないのではないでしょうか? ですので、ここで改めて「環境の豊かさ」を超えた生物多様性の源泉を考えて見る必要があると思います。
ここで今一度注目すべき点は、日本は地震や台風や四季の変化、乾燥による山火事を含め、環境の撹乱が頻繁に引き起こされるという特徴を持っていることです。環境の撹乱は固定的な種間のヒエラルキーを変化させ、新たな種が登場する動因になっているのではないでしょうか。
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全てではありませんが、火山帯と重ねてみると似ています。
画像はこちらからいただきました。

まとめ
生物多様性は、温暖であり、かつ湿潤であるといった環境の豊かさに起因します。しかしながら、それだけでは種間のヒエラルキーが固定化されるので、そのヒエラルキーを変化させる外圧が必要です。日本には台風、地震、四季といった、豊かだけれども自然の猛威もあります。このやさしくも厳しい日本の環境が、日本の生物多様性、ひいては日本の豊かさの母胎になっているのではないでしょうか。
次回は、日本と環境が似ている、ニュージーランドとマダガスカルも含めて追求していきたいと思います お楽しみに~
☆バックナンバー☆
【気候シリーズ】日本の気候・風土の特徴とは?
【気候シリーズ】日本の気候② 気候変動と森の歴史

List    投稿者 mituko | 2011-11-30 | Posted in D02.気候No Comments » 

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