2011-11-24

風がふくのはなんで?(3)~日本の四季に影響を与えているヒマラヤ山脈と偏西風

前回に続いて日本の気候を作り出している風、そしてそれをもたらす気団について、みていきましょう。日本をとりまく4つの気団のうち、夏風をもたらすのが太平洋気団、日本に冬風をもたらすのがシベリア気団だというのは前回扱いました。
太平洋気団は夏の赤道上で作られた上昇気流が、温帯に降下することでつくられる海洋性高気圧、シベリア気団は冬のユーラシア大陸で作られる大陸性の高気圧である、ということは前回扱いました。これは、熱しやすく冷めやすい陸(鉱物)と熱しにくく冷めにくい海(水)の比熱の差で原理的に説明ができます
それに対して残る2つの気団(揚子江気団、オホーツク気団)は、この2つの気団の圧力がバランスした、従って、大陸性の風、海洋性の風が吹かなくなった中間期(春、秋)に発達する気団であり、この気団の説明は、熱しやすく冷めやすい陸陸(鉱物)と熱しにくく冷めにくい海(水)の比熱の差では説明できません。果たして、この中間期に発達する気団は何によってつくられているのでしょうか?
実はこの2つの気団の鍵を握っているのは、ヒマラヤ山脈と偏西風なのです。
ya_056.jpg
※写真はこちらからお借りしました→
http://www.s-hoshino.com/f_photo/s_yama_2.html
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まず、北半球の温帯域の気候に大きな影響を与えているのは、前回も扱いましたが、偏西風です。偏西風と呼ばれるのは、赤道上で暖められて北上した空気が温帯付近で急降下する際に、コリオリの力を受けることで、西向きに針路を歪められるからです。(コリオリの力についてはhttp://blog.sizen-kankyo.com/blog/2011/10/000978.html#more参照。尚、何故、温帯付近で急降下するのかは、次の機会に改めて追求する予定です)
この偏西風のうち、対流圏の上層で一際強く吹く気流をジェット気流と言いますが、ジェット気流は、季節によってその位置を変えます。冬は高緯度の寒気に押されて南下し、反対に夏は低緯度の暖気に押されて北上します。
そして、丁度、大陸性の気団と海洋性の気団がバランスする中間期には、ユーラシア大陸を吹く風の位置は、ヒマラヤ山脈にぶつかることになります。
そしてチベット山塊にぶつかった偏西風は、2つに分かれて、そしてまた重なります。そして、この二股に分かれた偏西風が合流するのが、丁度、オホーツク海上であり、ふたつの空気が合わさることで高気圧化し、こうしてオホーツク気団が形成されるのです。オホーツク海の海水温が低いため、吹き出す風は冷たく湿っています。他方、海洋性高気圧である小笠原気団からは暖かく湿った空気が日本列島に向かって吹いてきます。このふたつの気団のぶつかると、暖かい空気は急上昇し、雨を降らせます。これが梅雨前線が形成され、雨が降る仕組みです。
また冬から春にかけてモンスーンが発達してシベリア気団が後退してくると、太陽光によって山塊の地面全体が加熱され、チベット高原は放熱板として機能し始めます。
そして暖められた空気は上昇し始めますが、チベット高原は高度が高いので、すぐに対流圏の天井〔圏界面〕にぶつかってしまい、チベット高気圧を形成します。普通は暖められた空気は上昇することによって地表面には低気圧が形成されるのですが、対流圏上空で作られた大気故に高気圧となるのです。そしてこれが偏西風によって運ばれてくると揚子江気団と呼ばれる移動性高気圧となります。この比較的乾燥した大陸性の移動性高気圧と、海洋性の湿潤なモンスーンがぶつかったところでも梅雨前線が形成されるのです。
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※画像はこちらからお借りしました→http://www8.ocn.ne.jp/~yohsuke/baiu.htm
このように、冬と夏は、高気圧(大陸または海洋)から気圧の低い方(海洋または大陸)に向かって吹く風が日本の山脈にぶつかることによって、雨が降るのですが、中間期は、偏西風がヒマラヤ山脈やチベット高原とぶつかることでつくりだされた高気圧からふく風と海洋性の高気圧からふく風がぶつかることで、前線が形成され雨が降るのです。
もしヒマラヤ山脈やチベット高原がなければ日本には梅雨がなかったかもしれません。最近はこの偏西風の位置がずいぶん北へ偏り、降りてこなくなっているともいわれています。そうなると雨の少ない日本となり、生活に大きな影響を与えることになるかもしれません。偏西風と異常気象について続けて追求していこうと考えています。

List    投稿者 staff | 2011-11-24 | Posted in D02.気候No Comments » 

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