2012-07-29

【地球のしくみ】11 水は水素結合によって様々なものを溶かす~生命誕生のカギを握る水の特性~

これまでは、地球の誕生から海が出来るまでの過程や、なぜ地球にだけ液体の水が存在し得たのかを紹介しました。
今回は、その液体の水に焦点を当てます。
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(ソーダイ http://sodai.c4sa.jp/?p=355)
地球に生命が誕生する遥か昔から存在した「水」
この水にはすごい物性があります。
その物性は生命の誕生に大きな影響を与えたものです。
それは、「何でも溶かしこむ親和力です。」
なぜ水が何でも溶かしこむ親和力を持っているのか、そもそも溶けるとはどういうことなのか、そして、それがどのように生命の誕生に影響したのか、その秘密に迫ります。
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◆ ◆ ◆水は、原子の電気陰性度の違いによって極性持ち、水素結合する。
水は、塩や砂糖はもちろん、岩石や金属など様々なものを溶かしこむことが出来ます。
その性質には、水分子の構造と結合の仕方が大きくかかわっています。
まずは、水分子の構造から見ていきましょう。
◆水分子は酸素原子と水素原子の電気陰性度の違いによって極性を持つ。
極性とは分子内での電荷の偏りのことで、水分子で言うと水素が+、酸素が-に偏っています。
この偏りは、水素原子と酸素原子の電気陰性度の差によって生まれます。
電気陰性度とは2個の原子が結合した時の、原子が電子を引き付ける力のことを言います。
この力が強いほど原子は電子を引き付けやすいということです。
(希ガスは既に安定した状態なので電気陰性度はありません)
ちなみに電気陰性度は周期表の右上に行くほど強くなります。
その理由として、
・右へ行くほど原子核内の陽子の数が多くなり、電子を引き付ける力が強くなる。
・上へ行くほど最外殻と原子殻との距離が近くなり、電子を引き付ける力が強くなる。
(電気陰性度の力は原子核との距離が大きく影響する。)
この2点が挙げられます。
ですから、周期表の右上のFが一番強く、Oが二番目に強いのです。
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(坂根弦太のDV-Xα&VENUS日誌:http://blog.livedoor.jp/tgs0001/archives/cat_10009504.html)
水はH(水素)と、O(酸素)の2種類の原子から成りますが、この二つの原子の電気陰性度は、
H:2.2
O:3.44(フッ素の次に強い)
となっており、HはOより電気陰性度が1.24小さいことがわかります。
つまり、Oの方が電子を引き付ける力が強く、水分子のH-O間の結合では、Hの電子はO側に引き付けられた状態で安定していることになります。
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(このスケッチは大まかなイメージです)
そして、電気陰性度の大きいO側に電子が引き付けられるので、電子はO近くに強く引き込まれ、Hは陽子がむき出しに近い状態になります。
Hは陽子がむき出しに近い状態になるので、H-O結合のHは弱い正の電荷を帯びます。
逆にOは電子を引き込むので、弱い負の電荷を帯びます。
図のδ+、δ-がそれにあたります。
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(Wikipedia:水素結合から)
そして、正の電荷を帯びた水素と負の電荷を帯びた酸素は、電荷引力を持ち、
一種の磁石のような状態になります。このような分子の状態を極性といい、このような分子を極性分子といいます。
極性を持った水分子は上図のように104.45°という角度に折れているのが特徴です。
このように折れ曲がることによって、分子の中で電荷的に偏りができ、分子間でもこの電荷引力が働くのです。
では、なぜ水分子が104.45°という角度に折れるのでしょうか?
◆酸素原子のもつ非共有電子対同士が反発することで折れ曲がる
酸素原子は最外殻に6つの電子を持っています。そのうち水素原子との結合に使われる電子は2つ、残りは非共有電子対として2つで1組になり、存在しています。(酸素原子が4本の腕を持っているようなもの)
そして、その水素と結合している電子2つと、非共有電子対2つの関係は下記のように正四面体に近い形になっています。(ちなみに正四面体の角度は109.5°と水分子よりも少しだけ広い)
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水素原子と非共有電子対のいる軌道の位置の違いによって、水素原子と結合している腕同士がつくる角度は、正四面体の角度109.5°よりも少し狭い104.45°になります。一般的な表記では、結合と関係の無い非共有電子対は表記しないのでH-O-Hは折れ線型に表記されるのです。
そして、上の図のようにδ+に帯電した水素原子と、-に帯電した非共有電子対が分子の両側に偏るので、水分子は分子的に見ても磁石のような力を持ちます。
極性をもった水分子同士は、その電荷の偏りによって水素結合という、少し変わった結合をします。
その水素結合とは、どのような結合方法なのでしょうか?
◆水素結合とは極性を持った水素原子が電荷引力によって、他の物質と結び付くこと
水における水素結合は、違う水分子同士のδ+の水素原子とδ-酸素原子が下図のように結び付くことで成り立ちます。
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(Wikipedia:水素結合から)
この水素結合によって、水は様々な物質を溶かしこむ親和力を発揮します。
水が物質を溶かし込む力には、水の構造が大きく関係しています。
次は、その水の構造についてです。
◆ ◆ ◆水の分子構造はすきまだらけな上に、時間と共に流動的に変化する。
◆水の分子構造はすきまだらけ
水は、分子が極性を持ち、折れ曲がったような構造をしているため、ぎゅっと密に並ぶのではなく、下図のように水分子の連結は隙間の多い構造をしています。水分子の連結構造はスカスカなんです。
すきまが多いことで、他の物質がそのすきまに入り込み、他の物質の分子を包み込みやすくなります。
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(水の分子構造)
さらに、水の分子構造は、このような形で静止しているのではありません。
◆水の分子構造は常に時間とともに結合、解離を繰り返し、変化している
水は、0℃~100℃という温度差で固体~気体へと変化します。
(水と同じく水素化合物である硫化水素は-85℃~-60℃で固体~気体になります。)
この沸点、融点の高さは、水分子の水素結合が非常に強いことを表しています。
水分子の分子間力が強いからこそ、地球の温度帯で、液体の水として存在するのです。
だからといって、水の分子構造は固定されているのではなく、時間と共に流動的に変化しています
水中の水分子の運動は激しいもので、液体の状態で水素結合の影響を受けながらも、水分子同士はくっついたり離れたりを繰り返し、常に変化しています。
ただし、動いている水分子は、完全に水素結合の力から抜け出せるわけではないので、液体の水として存在しています。
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(水の動的な分子構造)
結合と解離を繰り返しながら、水として成立している水分子は、水分子同士で、ある一定の集合体(クラスター)を形成しています。このクラスターは、水中では水分子が2~5個水素結合した状態で存在し、クラスター同士が引き合いながら液体の水を形成しています。
上で、水の分子構造は時間と共に変化しているといいましたが、このクラスターも同様に、結合と解離を繰り返すことで、常に新しいクラスターを形成し変化しています。
こういった動的な分子構造をしていることによって、さらにすきまができやすく、他の物質を包み込むような形で溶かしこむのです。
では、そもそも溶けるとはどういうことなのでしょうか??
いよいよ、「水に溶ける」原理に迫ります。
◆ ◆ ◆水に溶けるとは、水と電荷引力によって結合するということ。
だいたいの教科書では、水は水素結合によって様々なものを溶かし込む。と書かれていますが、それだけではどうやって溶けているのかいまいち想像できません。
水が他の物質を溶かしこむ力の本当の理由は、水分子のもつ電荷引力にあるのです。
つまり「水と電荷引力によって結合する」ともいえます。
水は、水分子の電荷引力により他の物質と結合するのですが、「溶け方」のイメージとしては、先ほど述べた、クラスター化した動的な分子構造により、他の物質をいくつかの水分子が包み込むようにして溶かしこむ、ということになります。
さて、水との電荷引力による結合ですが、これには「原子レベルで結合する」場合と、「分子レベルで結合する」場合の2つがあります。
◆原子レベルでの結合
例:食塩(NaCl)
まず、ナトリウム原子は電子1個を塩素原子に与えて陽子が1個多いNa+となり、塩素原子は電子1個をナトリウム原子からもらって電子が1個多いCl-となります。プラスとマイナスを帯びた原子が電気的に引き合うことで塩の結晶は出来ています。
塩が水の中に入ると、Na+は水分子のマイナスに帯電している酸素によって、Cl-は水分子のプラスに帯電している水素によって引き剥がされるように水の中に溶けていきます。その結果、水の中では下図に示すようにNa+とOH-、Cl-とH+がそれぞれ、電気的引力により引き合っている状態になります。
つまり、水とNa+、Cl-が電荷引力によって結合しているのです。
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(このスケッチは大まかなイメージです)
◆分子レベルでの結合
例:砂糖
砂糖やブドウ糖などの糖は分子内にいくつかの水酸基(-OH)を持っています。
この水酸基が、水分子内の水素と電気的引力によって引き合うことで、水と砂糖が電荷引力によって結合します。
そうすることによって、砂糖は水に溶けます。
このとき、砂糖の分子構造は食塩の時のように分解されるのではなく、下図のようにそのままの形で引き合います。
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(このスケッチは大まかなイメージです)
このように、水に他の物質が溶ける原理は、水と他の物質の電荷引力による結合なのです。
しかし、この溶かし込む力だけでは、生命は誕生しません。
この力と共に、生命の誕生に大きな影響を与えたのは、「水の物質を溶かしこむ力は温度と圧力に比例する」という特徴です。
これはいったいどういうことなのでしょうか?
◆ ◆ ◆水にエネルギーが加わることで分子の運動が活発化し、物資を溶かしやすくなる
例えば、砂糖が冷たい水よりもお湯に良く溶けるようなものです。
水にエネルギーを与えることで他の物質が解けやすくなるのです。
それは、このような原理になっています。
水にエネルギーを与えることで分子の動きが激しくなり水分子の結合が取れやすくなる。
⇒他の分子が水分子とくっつくことの出来るチャンスが増える。
⇒くっつくチャンスが増えることで、水は他の物質を多く含むことができ、他の物質は水に溶けやすくなる。
つまり、水分子同士の結合がとれた瞬間が他の物質にとってはくっつくチャンスなのです。
原始地球は大気の温度300~400°、海は150°、大気圧が10気圧と非常に高いエネルギー状態でした。
ということは、原始地球の海は様々な物質を大量に溶かしこんでいたと考えられます。この原始の海と周辺の環境によって生命は誕生したのです。
次回はこの原始地球の海を舞台に生命の誕生に迫ります。

List    投稿者 isiisii | 2012-07-29 | Posted in D.地球のメカニズム, D01.地球史No Comments » 

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