2008-08-14

水の物性・特徴を探る。その8 水の水素結合の力による二重脂質膜球体の生成(生命の原型)

海という字には母がある。の通り、まさしく生命にとっての母なる海。
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<海(水)が無ければ地球に生命は誕生しなかった>
 
これは、幾多ある生命誕生仮説でも共通の認識で、全く異論のないところですね。
 
原始の海の中で、どのように生命の材料が出来ていったのか、
その秘密を前回に引き続いて水の性質と絡めて探っていきたいと思います 😀
 
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● 海は灼熱の濃縮スープ ~前回のおさらい~
原始の海が誕生したのは43億ほど年前。太陽は今より25%も暗く・月との距離は現在の二分の一。大気温度300℃~400℃、地殻温度650℃、海温度150℃、大気気圧が10気圧。現在の海のイメージとは全く異なる驚愕天地の自然環境の中にありました。
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熱湯の海には、暴風雨の雲の合間から絶え間なくイナズマが閃き落雷し、オゾン層がまだ存在しないため、強烈な紫外線が直射し、宇宙線が降り注ぎます。酸素大気がないので、隕石は途中で流れ星になって燃え尽きることなく、海に直撃します。化学反応を引き起こすそうしたいくつもの要因によって、海の中では激しい化学反応が起こり続け、海の中には生命誕生に必要な分子化合物がたくさん形成・蓄積されていったのです。
 
 
 
● 生命の基礎物質の生成
『タンパク質』『細胞膜』『DNA(RNA)』は生命の三大基本構成要素と言われています。最初の生命体は原核単細胞生物だと考えられていますが、この原核単細胞生物の基本要素が、上記の3つなんですね。しかも、これらの基本構成要素は海(水)の中でしか生成されないと考えられています。
                
 
 
● 出会いの海 (水に溶けているから高分子化合物が生成される)
タンパク質の基はアミノ酸、細胞膜の基はリン脂質、DNA(RNA)の基は糖・核酸になるわけですが、例えば簡単な分子から、分子化合物のアミノ酸ができ、各種アミノ酸が繋がって高分子化合物のタンパク質が生まれるためには、まずは分子たちが『出会う』必要があります。その分子の出会いのチャンスが、水の中では極端に高くなるのです
まず、固体の場合、分子が身動き取れないので固体間で異なる分子が出会う事は殆どありません。気体では分子は自在に動ける分逆に拡散し、出会いの機会は非常にすくなくなります。分子が液体に溶け込んだときには、分子は液体の中を自由に動き回ることができます、かつ、動き回る範囲も液体内に限定されているため、液体に溶け込んだ分子は出会いの機会が飛躍的に上昇するのです。限定された場の中で、自由に移動できる出会いの空間。なんだか合コンやお見合いパーティーみたいなイメージですね。(知らない人はお母さんに聞いてみよう!)
 
● 原始の海が、生命の材料を育んだ

様々な物質を溶かし込む『水』の性質が分子同士の出会いを生み出し、例えばアミノ酸分子が出会い・結合し生命の元であるタンパク質のような高分子化合物ができたのです。加えて、タンパク質や核酸等は、長い鎖のような分子化合物ですが、これらは折りたたまれて(いわば、毛糸玉のような状態で)存在しています。この構造を支えているのが、実は周囲の水分子なのです。水分子との水素結合により、タンパク質や核酸は、水の中にあって初めて特殊な3次元構造をとる事ができるのです。ここにも水の力が働いていますね~。
 
 
● 膜がなければ生命はうまれない
さて、原始の海の中ではこのようにして、分子が結合し、分子化合物になり、分子化合物が結合して、生命の要素である高分子化合物が形成されていきました。しかし、高分子化合物が形成されただけでは、構成要素はバラバラのままです。何か足りません。そう、生物の3大構成要素の中には、DNA・RNA、蛋白質とともに、膜(リン脂質膜)があるのです。このリン脂質膜は、細胞全体を包んでいる細胞膜や真核細胞の小器官を包んでいる膜なのですが。この膜があってはじめて外界と生命の境界がうまれるのです。
 
では、その膜の誕生の秘密を探って見たいと思います。
 
● リン脂質と膜の生成
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リン脂質は細胞の膜を形成している分子化合物です。原始の海の濃厚なスープの中でこの化合物も出来ました。このリン脂質は、長い分子で頭にリン酸という親水性の(水と馴染みやすい)部分をもち、疎水性の(水と馴染まない)部分、脂肪酸の長い尻尾をもっています。水と馴染みやすい部分を親水基といい、馴染みにくい部分を疎水基といいます。実はこのリン脂質の性質が、生命に重要な膜を自然に作りあげて行くのです。
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一般に、親水基と疎水基をもった脂質は、水の中で、疎水部分を内側にし、親水部分を外側にした二重膜を自然に形成します。親水基は水の水素結合と反応し、疎水基は反応しないため、上記の図のように、水色の水の部分に親水基の頭が位置し、内側に疎水基の脂肪酸の尻尾が位置取りします。そして、疎水基の脂肪酸の尻尾部分が整列して、シート状の構造を作ります。
このシート状の構造は生体膜と全く同じです。
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● リン脂質による二重脂質膜球体の形成
このリン脂質のシート状の構造が、内側にも水を抱えて球状になると脂質二重膜の完成です。このように、親水基と疎水基をもった脂質が大量に水の中に存在すると、水の水素結合の力が作用し、中空の球体(膜)は、簡単にできます。
原始地球の海。巨大な月の引力による激しい潮の満ち干の中で、海水は大きく攪拌され、そのエネルギーとリン脂質よって、無数の球体の膜が生まれていったのです。
この球体の膜が、分子化合物の濃縮スープの中で、開いたり閉じたりを無限に繰り返した結果、この球体・膜の形成、形態変化の中で、たんぱく質が膜に挟まったり、中空の中に入り込んだりして、原始生命の原型が出来上がったのでは無いでしょうか。
 
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<参考> ↑ 最近の研究でも脂質二重膜(リポソーム)がタンパク質の働きにより、安定した状態で球体膜がダイナミックに開いた閉じたりすることが確認されています。
「タンパク質によるリポソーム(脂質二重膜)の開口現象の研究」リンク
 
脂質を球体の膜に成長させる力が、水の水素結合の力でした。
やはり、海は、生命の源ですね。

 
 
次回は、水の物性、特徴の総まとめをします。お楽しみに!

List    投稿者 kasahara | 2008-08-14 | Posted in D.地球のメカニズム3 Comments » 

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コメント3件

 yukie | 2009.01.22 16:44

>でも、本当はお医者さんも妊婦さんも、みんな新しい誕生を充足という形で迎えたいはず!!>でも、本当はお医者さんも妊婦さんも、みんな新しい誕生を充足という形で迎えたいはず!!< その通りですね☆ みんなそのことを忘れているだけで、潜在的にはそういった期待が高まっているんじゃないかと思います♪ このブログでそういった意識を顕在化できるといいですね。

 ブッコ | 2009.01.22 22:12

>制度や病院というガチガチの場から変えるのは難しいけれど、「お産」に対する女たちの意識から変えていくことはそこまで難しくないんじゃないかと思いました。
ほんとそうですね!!
今の多くの人は、妊娠~出産にしても、出来てから考えているというように思います。
さらに、「みんなどこで勉強してるんだろう~??」って考えると、親とか、本とか、ごく限られた出産仲間とか・・・
その時に急にしだすんじゃ、なかなか、意識を変えていくのは難しい。
女の人たちみんなが、普段から語り合える場をもっと作っていきたいですね☆

 iku | 2009.01.24 0:19

コメントありがとうございます☆
yukieサン
>このブログでそういった意識を顕在化できるといいですね。
はい!期待かけありがとうございます♪
知っていけば知っていくほど、みんなが当事者になっていけると思います♪
ブッコさん
>その時に急にしだすんじゃ、なかなか、意識を変えていくのは難しい。
そのことにさえ気付いていないのが、現代の女性なんですよね~。。。
>女の人たちみんなが、普段から語り合える場をもっと作っていきたいですね☆
ほんとにそう思います!ぜひ、ブッコさんもご協力お願いします♪

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