2008-08-31

水の物性・特徴を探る。最終回・改めて水の水素結合って何?

水の物性・特徴シリーズも、最終回です。 
 
水という物質が、強い水素結合の力をもっていて、その力が水の物性・特徴を発揮させていることをみてきました。 
 
例えば、水素結合の力が他の物資に働いて、多くの物資を溶かし込む。
その1 何でも溶かす親和力 
 
あるいは、水素結合の力から離脱する(気体になる)ために、大きなエネルギーが必要となり、水の蒸発に際して、大きな気化熱を奪う。
その4 打ち水すると涼しくなるのはなんで?~気化熱と水の特性~ 
 
また、原始地球の海で、水素結合の力が働き、リン脂質の2重膜が形成させ、球形の脂質シャボン玉ができあがり、生命誕生につながったのではないかと。
その8 水の水素結合の力による二重脂質膜球体の生成(生命の原型) 
 
何度も何度も、水素結合が登場しました。最終回は、この水素結合って何を一歩踏み込んで扱います。 
 
今回は、こんな模式図が登場します。 
 
Wat.jpg 
 
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「水は、水素2個と酸素1個が結合した分子である。」
中学の理科で習ったり、ネットで読んだりして、知っていますよね。 
 
「水は、水素2個と酸素1個が結合した分子である」を、ひとつひとつ見ていきます。 
 
●水素2個、酸素1個って何? 
 
物質の一番小さな単位が、原子です。
原子は、中心にプラスの電気を持った原子核があり、その周りをマイナスの電気を持った電子が回っています。 
 
水素原子は、下の左図のように、中心にプラス1の原子核があり、周りを1個(マイナス1)の電子が回っています。(Hという記号は、水素を表す略号です。)
これを水素原子1個と数えます。 
 
酸素原子は、下の右図にあるように、中心にプラス8の原子核があり、その周りを、8個(マイナス8)の電子が回っています。(O記号は酸素を表します。) 
 
そして、8個の電子の回り方が、ちょっと複雑になり、電子の回る位置が二重になります。電子の回る位置を、専門的には軌道といいます。
まず、原子核に近い、内側の軌道(回る位置)は、電子2個が回ると、一杯になり、それ以上の電子は回れなくなります。そこで、3番目以降の電子は、その外側の軌道を回ります。
酸素原子の8つの電子は、内側の軌道を2つの電子が回り、外側の軌道を6個の電子が回ることになります。
これを、酸素原子1個と数えます。 
 
Hy.jpg Ox.jpg 
 
●次は、「結合した分子」って何? 
 
ここで、電子の回る位置(電子軌道)の不思議な原理が登場します。
原子核に一番近い電子軌道は、2つの電子で一杯になり、その原子は安定した状態になります。
安定化の原理は、ちょっと難しくなります。電子はスピンという性質をもっていて、正のスピンと負のスピンがペアを作ると安定します。 
 
ですから、原子核に一番近い電子軌道は、電子1ペア(電子2個)で、安定します。
原子核から2番目の電子軌道は、電子4ペア(電子8個)で安定します。 
 
下図にあるように、1番目の電子軌道が1ペア(2個)で安定したのが、ヘリウム(He)です。2番目の電子軌道が4ペア(8個)で安定したのが、ネオン(Ne)です。 
 
ヘリウムやネオンは、安定化していますので、他の原子とつながる必要がありません。だから、原子1個で、単独で存在します。 
 
He.jpg Ne.jpg 
 
これに対して、1番目の軌道に電子1つしか無い水素原子は、もう1個の電子を欲しがります。2番目の軌道に6個電子がある酸素原子は、あと2個の電子を欲しがります。 
 
この電子を欲しがる性質があるので、原子同士で電子を共有して、安定しようとします。 
 
この原子同士の作用が、原子の結合です。(電子を共有するので、共有結合といいます。) 
 
下の図が、水素原子2個と酸素原子1個が、電子を共有し、結合している図です。
水素原子2個は、酸素から1個づつ電子を供給してもらい、各々、電子2個が軌道を回っているようになります。酸素原子は、水素原子2個から、2個の電子を供給してもらい、電子8個が、外側の軌道を回っているようになります。 
 
下の図のように、2個の水素と1個の水素が、相互に電子を共有しますと、非常に安定した物質になります。そうです。これがです。 
 
Wat.jpg 
 
水は、水素2個と酸素1個が結合した分子であるは、分かりましたね。 
 
●そして、本題の「水素結合」です 
 
下の図は、NaCl(塩化ナトリウム・お塩)です。 
 
ナトリウム原子(Na)は、一番外側を1個の電子が回っています。塩素原子(Cl)は、一番外側を7個の電子が回っています。
ナトリウム原子と塩素原子が出会うと、ナトリウムの1個の電子が、塩素の外側の電子軌道に移ってしまいます。
ナトリウム原子は、1個失うことで安定し、塩素原子は1個もらう事で(4ぺア、8電子になり)安定します。ナトリウムはプラスイオン、塩素はマイナスイオンとなります。 
 
NaCl.jpg 
 
一番外側を回る電子の数が少ないと、電子が、一方の原子から他方の原子に移ってしまう傾向をもっています。 
 
水素原子も、外側の電子軌道に1個しか電子がありませんでしたね。 
 
たとえ話風にいうと、水素原子は、酸素と電子を共有して安定したいなぁ。でも、電子を1個手放して(酸素にあげて)、安定することもできそうだなぁという性質があります。 
 
水素原子は、「電子を1個手放してもいいなぁ」という性質があり、電気的にプラス傾向を帯びます。(酸素原子は、水素から電子をあげるといわれますので、電気的にはマイナス傾向を帯びます。) 
 
これが、水分子(水素と酸素が共有結合した分子)が、水素プラス、酸素マイナスに分極する仕組みです。 
 
230px-Watermolecule.png 
 
水素2個、酸素1個が、共有結合した水分子は、分子の超ミクロな構造として、プラス部分とマイナス部分に分かれ、電気的な力をもちます。 
 
水素原子が、他の種類の原子と共有結合すると、電気的な偏りができやすく、水素原子の部分がプラス傾向をもち、電気的引力を発生させます。 
 
これが、水素結合です。 
 
そして、水分子は、電気的な偏りが大きいので、水分子は、強い水素結合の力をもっているのです。
ありふれた物質ですが、分子として安定している上に、強い水素結合の力をもっているのが、水です。
この安定度と強い相互作用が、このシリーズでみてきた「水の物性・特徴」を発揮させ、地球の温度環境を保持してくれ、生命誕生の場をつくってくれました。 
 
 
水の物性・特徴を探るシリーズでは、コメント欄の質問に答えきれていないものもありますが、今回で、一旦、終了と致します。 
 
最後に、シリーズをまとめて読んでもらう場合に便利なように、カテゴリーURLを張っておきます。
リンク 
 

List    投稿者 leonrosa | 2008-08-31 | Posted in D.地球のメカニズム3 Comments » 

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コメント3件

 さんぽ☆ | 2009.02.04 17:15

すご~い!
陣痛ってこんな意味があったのですね。
身体って意味のないものなんて、ないのだな。
本当に良く出来ているのだなぁって改めて思いました!

 なっつん | 2009.02.04 17:57

お久しぶりです☆陣痛についての記事、「わかるわかる」と思いながら読んでました!私は陣痛が本格的にくる前に「今日生まれる!」ってわかりましたよ。なのに、先生の診断では「今日は生まれないよ」って言われました…。子宮口などを目で見て確認するより、母子の期待応望のほうが正しかったです(^^)
出産はイメージでは母親がウンウン言ってがんばって生むものだと思ってましたが、実際は赤ちゃんが生まれようとする力で陣痛がきて、そのタイミングに合わせてあげるという感じでした。自分の陣痛にばかり気がいくと「痛い」だけの出産になってしまうんだと思いました。

 かっし~ | 2009.02.07 21:56

>私は陣痛が本格的にくる前に「今日生まれる!」ってわかりましたよ。
>実際は赤ちゃんが生まれようとする力で陣痛がきて、そのタイミングに合わせてあげるという感じでした。
なっつんさんの実体験に思わず納得してしまいました!!
ほんと、期待応望そのものですね
なんだか、このシリーズを読んでいると、出産のイメージがどんどん変わってきます

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