年代測定法は正しいのか?~放射性同位元素の崩壊~
年代測定法は正しいのか?~自然界におけるリズムを持った生命~で述べたように、化石などを使って地層の新旧を決めることはできても、その地層や岩石がいったい何年前のものだったのかということは特定できません。
では、どうやって年代を特定すれば良いのでしょうか?
自然界には規則正しいリズムを持った現象があり、それが地層や岩石中に残されていれば、それを利用して年代を求めることができます。
他の年代測定法にはどのようなものがあるのでしょうか?
前回と同様に山賀 進のWeb siteを参考に展開します
■放射性同位元素の崩壊
放射性同位元素は、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線などの放射線を放射して別な元素に変わっていきます。例えば、238U(ウラン238)は途中経過はいろいろありますが、最終的には206Pb(鉛206)になっていきます。このときの238Uを親元素といい、親元素が壊変(崩壊)してできた236Pbを娘元素といいます。
親元素の数が半分になるまでの時間は一定であり、それを半減期といいます。238Uの半減期は44.68億年であり、この長さはいかなる熱や圧力によっても変えることはできません。だからこうした放射性同位元素の壊変(崩壊)は、きわめて正確に時を刻んでいるということになります。数式は下を参照。
年代測定に使われる射性同位元素の半減期
放射性同位元素(親元素と娘元素)の例 | 半減期(元素111の新知識1997年) |
238U(ウラン235) → 206Pb(鉛206) | 44.68億年 |
235U(ウラン235) → 207Pb(鉛207) | 7.037億年 |
40K(カリウム40) → 40Ar(アルゴン40) | 12.5億年 |
14C(炭素14) → 14N(窒素14) | 5730年 |
ただ問題は、測定できるのは現在の親元素の量、あるいは娘元素の量でしかないことです。この現在の量をもとに、過去にさかのぼることはできますが、最初にあった親元素の量、あるいは娘元素の量がわからないと、その最初の時(つまり年代測定)ができません。
最初にあった量を初期値と言います。放射性同位元素を使った年代測定のポイントは、いかにしてこの初期値を推定するのか、あるいは初期値を推定しないですませるのかにあります。
このように初期値がわかれば、放射性同位元素を利用して絶対年代を求めることができます。ただし、こうした方法で求めた年代の誤差は大きく、時間の分解能(新旧の決定精度)では化石を使った方法よりも劣ることがあります。
もうひとつ、放射性同位元素を使って年代測定をするときは、その放射性同位元素の半減期に注意する必要があります。
理想的には放射性同位元素の半減期が、測定しようとする時間の長さ程度であることが望ましくなります。半減期が長すぎると親元素はほとんど減らない(娘元素はほとんど増えない)、逆に短すぎると親元素はほとんどなくなってしまう(娘元素があっという間に現在の値近くになってしまう)からです。このような観点から上の放射性同位元素の半減期の表を見ると、数十万年から数億年程度の長さを測る適当な元素が見あたらないことがわかります。
年代を測定法できる方法はないのでしょうか?
次回も以降も追求していきたいと思います。
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