2012-10-05

【地球の内部 2】 地球の元素組成の推定方法

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前回の記事では、地球内部の基本構成となる、「地殻」「マントル」「核」と呼ばれる層の違いを、
地震波の伝わり方によって“その境界面を推測していることが分かりました
 
【地球の内部 1】 地球の内部構造をどうやって推測したのか?より引用

電磁波は地震を引き起こすのか?について、地電流や地磁気との関係などのマクロ的な視点と、電磁波の共振現象などのミクロな世界の視点で調査をしてきました。
しかし、これら解明のためには、地球内部の構造や物性、大気圏を介した宇宙や太陽との関係についてのより詳細な把握が必要なことがわかりました。
そこで今回から、シリーズで【地球の内部】として、物質組成・温度・圧力・導電性などの物性について扱います。

今回の記事では、その層毎における物質の【元素組成】について探索していきたいと思います
 
とは云うものの、私達は地球を割って中身を見ることはできません
直接調べるためには穴を掘って調査する必要がありますが、これまで人類が掘った一番深い穴は、ロシアのコラ半島での深さ12kmというものが限界です  
 
これは前回の記事で云う、「地殻(深さ5~50km)」の薄い部分なので、せいぜい「地殻」部分の一部の元素組成しかわかりません
 
ではそれより深い部分(マントルや核)の元素組成はどうやって分かったのでしょうか
実はこれまで、様々な分野の学者が、様々な側面から調査・分析することによって推定されてきました
 
今回は、どのように考えていけば、より確からしい地球内部の元素組成を推定できるのか?ということを、彼らの思考に同化しながら、地球内部を探索していきましょう

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☆☆☆地殻の構成要素
 
はじめに地殻です。
 
地殻は地球の体積の3%にも満たない薄い層ですが、その成分は地球内部の組成を推定するのに必要不可欠な情報です。 
 
地殻の調べ方には、2種類あります。岩石などを直接採取し調べる方法と、マグマなどの地球内部に存在していた物質から間接的に調べる方法です。
 
直接採取する場合、地表に出ている火山が冷えて固まった火成岩の成分を調べます。間接的に調査する方法では、地表に出てくる岩石やマグマの構成要素から内部の構造を想定し、組成を推定します。
では両方の方法の事例を詳しく見ていきましょう!
 
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事例1.氷河粘土からの推定
氷河粘土は氷河が岩盤上を移動するとき、けずり取ってきた岩石粉末を氷河の末端に堆積したものです。地殻はほとんどが火成岩のため、火成岩を粉砕した生成物である氷河粘土の平均組成は、火成岩の平均組成によく似ているとの研究結果から、地殻の組成を推定しました。
 
事例2.カコウ岩質岩石、玄武岩質岩石および堆積岩の占める地殻の厚さ、それぞれの平均化学組成などに基づいて推定
地殻上部は花崗岩質岩石、下部は玄武岩質岩石となっており、厚さは、平均35kmです。この2種類の岩石の組成を調べることで地殻の組成を推定しました。
 
事例3.マントルから安山岩が形成されるという大陸地殻生成モデルに立ち、地殻を3層に分けて、それぞれの厚さ、構成岩石の平均化学組成より推定
大陸地殻生成モデルとは、地表では玄武岩や火山岩に比べて量的には少ない安山岩質岩石が中部地殻を構成していると仮定したモデルです。
安山岩マグマは、玄武岩マグマと花崗岩マグマが混じりあってできており、平均的な岩石組成に相当します。そこで花崗岩・玄武岩・トーナル岩の3種類の組成から地殻の組成を推定しました。
 
事例4.花崗閃緑岩を主体とする上部地殻は、地殻自体の分化により生じたとのモデルに立ち、地殻熱流量などを制約条件として推定
地殻分化モデルとは、玄武岩マグマが約8割の玄武岩と残りのカンラン岩からできていると仮定したモデルです。さらにこの分かれた玄武岩が、25-35%のトーナル岩とその残りカスにそれぞれ分かれると想定されています。このモデルから地殻の構成要素を推定しました。
 
 
~ではもう少し深く潜ってみましょう~ 
 
 
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☆☆☆マントルの構成要素
地殻の次はマントルです。
 
マントルは地球の体積の80%以上を占める層です。
深さは約3000kmもあり、深部まで観測することは難しく、組成は主に地表に出てくるマグマなどから推定しています。
 
調査方法として太陽の組成や隕石の組成を元に推定する方法や、地表で得られた鉱物の高圧実験による再現実験やシミュレーションを行い、条件に合う圧力・温度・密度と組成を推定しています。
 
そのほかにも地震波の伝播時間により内部構造を探る地震波トモグラフィーにより、地球内部の密度などを算定する方法もあります。
ここでは3つの事例を取り上げます。
 
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事例1.揮発性元素を除いた上部マントルの化学組成の推定値
太陽の光を分析したり、地球に落ちてきた隕石を調べたりすることで求められる宇宙の元素存在度を元に揮発性元素を除いて組成を推定した値です。
揮発性元素とは水素、ヘリウム、炭素、ネオン、窒素など単体・化合物の揮発性が高い元素のことです。これらは地球ができるときに宇宙に飛散してしまうため推定するときに除かれています。
 
事例2.玄武岩とダナイトが1:3の割合で混合した組成をもつと想定した値
玄武岩とダナイト(カンラン岩の一種)が1:3の割合で混合した組成をもつ物質は、分解すると玄武岩マグマが生じると仮定できます。そこからマントルの組成を推定しました。
 
事例3.20%エクロジャイト、80%(変形)ザクロ石-カンラン石包有岩として計算した値
エクロジャイトとはマントル深部で玄武岩が変形したものです。同じく(変形)ザクロ石-カンラン石包有岩もザクロ石が変形したものです。事例2よりも深いマントルでの組成を推定した値です。
 
 
~さらに深くにいきましょう~ 
 
 
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☆☆☆核の構成要素
ついに最深部の核です!
核は地球の体積の15%程度を占める層です。
 
勿論、その組成を直接調べることはできません。
しかし宇宙にある元素の存在比から推測することが可能です。
 
宇宙に存在する太陽や隕石の組成から地球全体の組成を推測した事例を2つ見ていきましょう!
 
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事例1.地球全体の化学組成を隕石や太陽の化学組成から推定し、そこから地殻やマントルの成分を差し引いて化学組成を推定 
地球全体の元素組成を求めるには、宇宙存在度と呼ばれる宇宙空間の元素の割合を用います。
地球は共通の太陽系星雲から出来ているため、地球全体の元素組成は、元々は宇宙の元素組成と同じと考えられます。
宇宙空間の元素の割合は太陽の大気や地球に落ちてくる隕石の組成から推定されています。
太陽系の質量は99%以上が太陽に集中しているので、太陽の元素の割合を太陽の光から調べることで宇宙の元素の割合も調べられます。
しかし、もともと量の少ない元素は測りにくいので、太陽系の初期につくられ、ほとんど変化を受けていないと考えられる隕石の情報も利用されるのです
 
事例2.コンドライト隕石の組成から、マントルと地殻の組成を引いたもの
隕石には、石質、石鉄、鉄質の3種類があります。
それぞれは岩石質のもの、鉄とニッケルが主成分のもの、鉄とニッケルに岩石質が混じったものです。
隕石は成分の他に、熱の影響の受けているかどうかでも分けることもできます。
熱の影響を受けていないのはコンドライトと呼ばれる石質隕石だけです。
そのほかの隕石は全て熱の影響でいくつかの層に分かれてしまっている隕石で、太陽系の形成期に、熱を受けて層構造を持った惑星同士が衝突してバラバラに壊れた破片だと考えられています。
このことから熱で変質した石質隕石は地殻やマントル、鉄質隕石は鉄とニッケルからなる金属核の破片が徐々に冷えたもの、石鉄隕石は金属核が周囲の岩石質を取り込んで急冷したものが起源だと考えることができます。
したがってコンドライト隕石の組成は地球全体の組成とよく似ているため、地殻とマントルの組成を引いたものは核の組成と推定できます。
 
☆☆☆まとめ
様々な推定方法がありますが、構成物質の比に大きな違いは見られません。つまり、各推定方法の整合性は高いと考えられます。
 
また、地球中心分に重い物質があることは、地震波の伝わり方や地球の自転(慣性モーメント)とも合致しています。
そこで各組成をグラフ化し、まとめてみました!
 
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今回分かったのは地球内部の元素組成ですが、それらの物質も、実際には様々な「鉱物」として存在しています。次回は、深さによってどのような「鉱物」があるのかについて調査します。
 
その後、鉱物の力学的性質や、地球深部の温度・圧力・電気伝導度といった環境条件を調査した上で、地球内部の構造が、地震や電磁波の発生とどのように関わっているのかを追求していく予定です。

List    投稿者 nkm- | 2012-10-05 | Posted in D.地球のメカニズムNo Comments » 

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