2011-09-20

【気候シリーズ】日本の気候・風土の特徴とは?

前稿の「自然の摂理から‘気候’を考える(後編)」の問題提起を受けて、今回は「日本の気候・風土の特徴とは?」に迫ります。
◆海洋に支配されている日本気候
植生の分布に着目し、気温と降水量の年変化を元にしたドイツの気象学者ケッペン流の区分によれば、日本は6つの地域からなります。

▲「地理と気候の日本地図」(浅井建爾著)P.23より
〔北海道気候区〕:亜寒帯で、気温は一年中低く冬の寒さが厳しい。
〔太平洋側気候区〕:夏は蒸し暑く降水量が多いが、冬は空気が乾燥し降水量が少ない。
〔日本海側気候区):冬は積雪が多く気温は低いが、夏は日照時間が長めで気温も高まる。
〔内陸性気候区〕:海から離れているので年較差・日較差が大きく、概して降水量は少なく湿度も低い。
〔瀬戸内式気候区〕:中国山地と四国山地に季節風が遮られて降水量が少なく、温暖で日照時間も長い。
〔南西諸島気候区〕:亜熱帯性気候区で年平均気温は20℃を超え、年較差が小さく降水量が多い台風の常襲地。

▲「地理と気候の日本地図」(浅井建爾著)P.27より
南北に細長い島国なゆえに、それぞれの気候区はさらに細分化された特色を持ちますが、日本気候の特色は、海洋に支配されていることにあります。それというのも、日本海流は毎秒6~6000万トンにも及び、幅100km・水深6~700mもの流れが時速5~9kmの速度で太平洋岸を流れているからでです。その流量は、世界中の河川の総流量の約20倍にも相当するそうです。
◆日本海は、いつ頃に形成されたか?
現代の海流は日本海流(黒潮)から対馬海流が分岐し日本海を北上していますが、それ以前は、日本はユーラシア大陸と陸続きであったと云われます。それでは、日本海はいつごろ形成されたのでしょうか?

▲「日本海は、どうできたか」(能田成著)P.183より
能田成氏は、放射性物質による年代特定と地磁気の変化を地上に露出しているチャートを入念に解析して、東北日本は1650万年前頃~1440万年前頃に反時計回りに回転し、西南日本は1480万年前~1420万年頃に時計回りに回転することで日本海は形成されたという説を提起しています。
回転運動によって日本列島は東アジアの東端から切り離され、東日本島孤と西日本島孤となり、その後、隆起や沈降・衝突を経て現在のような日本列島になったというのが、能田成氏の日本海形成のストーリーです。
●遺伝子分析による日本列島形成の歴史
オサムシの大部分の種は、後翅が退化していて飛べず地域変異に富むので、どのように分布圏が成立し、種分化が起こってきたのかを探るのに恰好の材料といわれます。逆の言い方をすると、現存種の分布から大陸や島の離合集散の歴史が推し量られるということです。


▲クリックすると拡大した図が見れます。
 第1グループ(オオオサムシ亜属、マイマイカブリなど)は、約 1500 万年前、日本列島が大陸から分離する際にそこに乗っていた祖先型が、列島内で分化したと考えられる。マイマイカブリは、約1500万年前にまず東西2系統に分かれ、それぞれがさらに3と5亜系統に分岐しており、それぞれの分布は列島内の特定の地域に限定されている。これは日本列島が現在の姿になるまでに、まず大陸から離れて2つの半島になり、それらがさらに8つの島になる様子を写していると考えられる。
 第2グループはユーラシア大陸から、氷期に陸橋を渡ってサハリンや千島経由で北海道に入ったもの(アカガネオサムシ、コブスジアカガネオサムシなど)と、朝鮮半島から対馬(つしま)に入ったもの(ツシマカブリモドキなど)である。これらのオサムシは、大陸やサハリンの同種や近似種と氷期直前に分岐し、日本各地で多様化したことが系統樹から推測できる。

「オサムシから進化を語る」より)

フォッサマグナ (中央地溝帯)の位置、オサムシの系統分布・ミトコンドリア ND5遺伝子による分岐年代推定などとも整合しますので、日本列島は、約1500万年前頃に大陸から分離した(=日本海が成立した)ようです。
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◆日本は、世界的にみても多雨地帯
気温が高いと海水の蒸発量が多いので、水分を多く含んだ上昇気流が多量の雨をもたらします。低緯度でも内陸部の砂漠地帯のように雨が殆ど降らない地域もあります。暖流である日本海流(黒潮)や対馬海流の影響を強く受ける日本のような島国では、夏は太平洋から吹きつける南東の季節風(モンスーン)が沿岸に降雨をもたらし、冬は大陸から吹きつける北西の季節風が日本海側に雪を降らせることになり、日本は季節風の影響で世界的にみても多雨地帯です。
〔年平均降雨量の世界比較〕*1971~2000年平均値
日  本:1718ミリ 
イギリス:1064ミリ
アメリカ: 760ミリ
フランス: 750ミリ
中  国: 660ミリ
タ  イ:1420ミリ
◆降雨のもたらす植生の違い
生命体にとって、水は生存に欠かせないものです。
水は細胞を構成する物質であり、多くの物質を溶かすことが出来るので栄養摂取が可能になる 、或いは比熱の大きいことから温度環境を保ちやすい などその効用性ははかり知れないほどです 😀
約1500~1200万年前頃に日本がユーラシア大陸から分離して日本列島が形成されて、日本海流の影響を受けるようになってからは、湿潤な気候が植生の変化をもたらしました。温帯性落葉広葉樹林の主要構成種であるブナなどを見るにつけ、さらに、急峻な河川の多い日本においても樹木の保水力が急激に流れ去る水の流れを緩めることになり、豊かな生物の存在を可能にしたと思われます。
針葉樹が大きく後退し、コナラ亜属やブナ属、クリ属など堅果類が繁茂するようになったことで、陸上はもとより、河川がもたらす海の生物層にも大きな変化をもたらし、ヒトの生産様式は大きく変容したことでしょう。


「白神山地源流の沢旅2003③」より
 森に雨が降れば、大きな傘のように広げた葉で雨を受け止め、枝から幹、根元へと走る。実際、雨が降った時に、ブナの幹を伝う水の量の多さに驚かされる 😀  巨木になればなるほど、その水量は多く、その豊潤な幹にさまざまな地衣類が生えるのも容易に理解できる。共生の美の極致を感じさせてくれる


「長江文明の伝播と水田稲作を拒否した縄文人」より


海流の影響を強く受ける日本の気候の特色とは、温帯モンスーン気候の特色である『多雨』にあるのではないでしょうか? それが豊かな植生を育み、多様な生物の生息を可能にしていることが縄文時代以降の気候・風土の最大の特徴だと云えそうです。

   by びん
バックナンバーはこちら
【気候シリーズ】人工気象操作技術(ケムトレイル)に迫る
【気候シリーズ】自然の摂理から‘気候’を考える(後編)
【気候シリーズ】自然の摂理から‘気候’を考える(前編)

List    投稿者 staff | 2011-09-20 | Posted in D02.気候No Comments » 

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