2012-11-21

【気候シリーズ】エルニーニョ現象を引き起こしているのは月!? その1

みんな言葉は知っている「エルニーニョ現象」「ラニーニャ現象」。
今年も新聞等で再三取り上げられましたし、前回の【気候シリーズ】コラム(異常気象が歴史を変えた!~スペインの征服者に幸福をもたらしたエルニーニョ)では、なんとこの異常気象が大航海時代の植民地遠征に大きな影響を与えていたことが紹介されていました。

※画像はこちらからお借りしました。左がエルニーニョ現象、右がラニーニャ現象の典型例です。
しかし、これらの海洋現象を引き起こしている原因が一体何なのか?については、実ははっきりしていません。今回は最新の研究をご紹介し、その原因に迫ってみようと思います。

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「エルニーニョ現象」「ラニーニャ現象」「ENSO(エンソ)」とは?
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続く現象です。
逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれています。ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。
では、もう少し詳しくその仕組みを見てみましょう。
以下、気象庁「エルニーニョ/ラニーニャ現象に伴う太平洋熱帯域の大気と海洋の変動」からの引用です。

平常時の状態
 太平洋の熱帯域では、貿易風と呼ばれる東風が常に吹いているため、海面付近の暖かい海水が太平洋の西側に吹き寄せられています(図2上)。西部のインドネシア近海では海面下数百メートルまでの表層に暖かい海水が蓄積し、東部の南米沖では、この東風と地球の自転の効果(注1:引用者)によって深いところから冷たい海水が海面近くに湧き上っています。(湧昇流といいます)このため、海面水温は太平洋赤道域の西部で高く、東部で低くなっています。海面水温の高い太平洋西部では、海面からの蒸発が盛んで、大気中に大量の水蒸気が供給され、上空で積乱雲が盛んに発生します。
<図2上>
pacific1.gif
注1)エルニーニョ発生に地球の自転がどう影響しているのでしょうか?それは、西向き(東寄り)の貿易風が吹くことで、表層の海水が同じ方向に動き、コリオリの力によって北半球では直角右向きに、南半球では直角左向きに海水が移動します。こうして赤道付近で表層の海水がなくなるので、それを補うように海水が上がってくるからです。この現象を赤道湧昇と言います。
エルニーニョ現象時の状態
 エルニーニョ現象が発生している時には、東風が平常時よりも弱くなり、西部に溜まっていた暖かい海水が東方へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まっています(図2中)。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも高くなっています。エルニーニョ現象発生時は、積乱雲が盛んに発生する海域が平常時より東へ移ります。
<図2中>
pacific2.gif
ラニーニャ現象時の状態
 ラニーニャ現象が発生している時には、東風が平常時よりも強くなり、西部に暖かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなります(図2下)。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温が平常時よりも低くなっています。ラニーニャ現象発生時は、インドネシア近海の海上では積乱雲がいっそう盛んに発生します。
<図2下>
pacific3.gif

このようにエルニーニョ現象、ラニーニャ現象は、太平洋東西の暖水と冷水の位置関係の変動を表す言葉ですが、このとき同様に太平洋上空の海面気圧も同じように変動しています。
海面気圧が、南太平洋東部で平年より高い時は、インドネシア付近で平年より低くなり、逆に南太平洋東部で平年より低い時は、インドネシア付近で平年より高くなるというふうに海面気圧が変動しているのです。これを南方振動と言います。
この海面気圧の変動である南方振動と、貿易風の強弱により海面水温が変動するエルニ-ニョ/ラニーニャ現象とは連動しており、これらを大気と海洋が織り成す一連の変動として見るとき、「エルニ-ニョ・南方振動(El Niño-Southern Oscillation、ENSO:エンソ)」という言葉が使われています。
これらの海洋・気象現象を引き起こすものは何か?
これらの現象のうち、例えばエルニーニョはどのようにして引き起こされるのでしょうか?一般的には、「貿易風が弱まることで暖水と冷水の海中の偏りにも変化が引き起こされる」と理解されていますが、では貿易風の強弱の原因は?というと、「海流の変化との相互作用による」こと以外は、分かっていないようです。
このように、大気と海流の相互作用として捉える限り、「どちらが先か?」という堂々巡りになってしまいます。
そこで視点を変えてみましょう。大前提として、海水の基本的な構造を「重く冷たい海水が深層側に、軽く温かい海水が表層側に存在している」と考えると、太平洋熱帯域の平常時の状態、 「軽く暖かい海水が表層の西側に、重く冷たい海水が表層の東側に存在している」状態は、実は不安定な状況です。
ですから、ちょっとした力が加わるだけでこの平常時の状態が変化する可能性は大きいと思われます。つまり、海流と大気以外の「第3の力」がこの平常時のバランスを変えているのでは?と考えるのがよさそうです。ではそのような第3の力としては何が考えられるでしょうか?
次回は、海流の駆動力は「月」であるという見方をご紹介し、それらがエルニーニョ現象、ラニーニャ現象、ENSO(エンソ)とどう関係しているのか?について探っていきます。

List    投稿者 seiichi | 2012-11-21 | Posted in D02.気候No Comments » 

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