2008-11-27

環境運動がこれほどまでに力を持ってきたのはなぜか?

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地球温暖化問題だけでなく、自然保護運動や森林保護運動など、さまざまな環境運動が勢いを増している。そしてそれらは、CO2悪玉説のように事実根拠を問うこと自体が悪とされるくらいイデオロギー化している。

そこには、マスコミによる偏向報道という一次的な原因はある。しかし、画一的で批判を許さない報道内容からして、どこかにその発信源があり、かつ、それらは何らかの強いイデオロギーに則り発信されていると考える方が自然だ。

そして、これらの問題を考える糸口として、『環境活動家のウソ八百』という本を見つけた。タイトルは過激な批判書の様にみえるが、切り口は『環境運動がこれほどまでに力を持ってきたのはなぜか?』と言う内容そのものだ。

著者両氏は、ローマ法王庁立レジーナ・アポストロルム大学で教鞭をとっている。そして、ローマ法王はカトリックの立場から人工中絶や強制的な家族計画には反対姿勢をとっている。このような背景から、現在の環境運動が、第三世界の人口および開発抑制を誘導していることを分析告発している。

この分析は注目に値する。マルサスの人口論から現在の環境活動までを、優生学という隠れた糸で説明する。環境問題の思想的系譜を理解する糸口としては有効な書籍だと思う。

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書名 『環境活動家のウソ八百』
著者 リッカルド.カショーリ・アントニオ.ガスパリ
訳者 草皆伸子女史の、あとがきより

訳者あとがきより

本書は原題を『Le bugie degli ambientalisti(環境活動家たちの嘘)』といい、2004年にイタリアのPIEMME社から出版された。当時、イタリアのマスメディアは、現在の日本と同様に、環境間題をいわゆる”扇動的災害論”的に論じていた。だから、環境間題に関する従来の.常識”の問違いやいい加減さをことごとく喝破し、環境活動家たちの欺購を暴いた本書は大きな反響を呼び、2006年には環境開発賞も受賞した。

ところで、日本では「環境問題=地球温暖化」という図式が定着しているが、ことはそれほど単純ではない。本書が解き明かしているように、環境問題の歴史をさかのぼると人口問題に行き着く。19世紀初頭のマルサス以来、欧米先進国は「このまま人口が増えつづければ、いつかきっと人類は破滅する」という強迫観念に苛まれつづけてきた。人口が増えつづければ、まず環境破壊が起き、やがて限りある地球の資源が尽き、人類は滅亡する、という論理の中で、彼らは環境問題をとらえているのだ。

事実、欧米の主な老舗団体は例外なく人口問題を研究するシンクタンクとして設立され、環境問題がクローズアップされる1970年から80年代以前には、強力なロビー活動を通じて第三世界諸国の人口抑制に精力的に取り組んでいた。そして、国連という枠組みを巧みに利用して、欧米諸国の政策に大きな影響を与えてきた。

本文より大きな歴史の流れのまとめ、

1798年 人口論  マルサス
1865年 優生学  フランシス・ゴルトン
1916年 バース・コントロール連盟 急進的フェミニズムのマーガレットサンガー
1930年代 アメリカの30州で優生保護法を施行
1952年 国際家族計画連盟(現在では国連人口活動基金の主要なパートナー)急進的フェミニズムのマーガレットサンガー
人口カウンシル ジョンDロックフェラー三世
1960年代 人口危機委員会  ヒュー・ムーア、ウィリアム・ドレーパー・ジュニア将軍
…国際家族計画連盟が国連に食い込み、多くの国連機関に人口抑制政策へ方向転換させた。
(国連児童基金・国際労働機関・国連教育科学文化機関・国連人口活動基金・世界保健機関など)
1970年 第一回『アースデイ』 ヒュー・ムーア
…当然これらの団体は設立当初から、巨大資本家の支援をうけている。

『環境活動家のウソ八百』本文より

この時を境にして、優生学をルーツにもつ複数の流れが一つにまとまり、連携して活動を始める。10年もしないうちに、シエラクラブ、全米野生動物保護連盟、ワールドウォッチ研究所、天然資源保護協会、環境行動会議などのアメリカの主要環境保護団体は人口危機委員会、人口参考局、IPPF(国際家族計画連盟)ゼロ人口成長などと協調して議会に人口増加抑止計画を採択するよう働きかける。

これ以降、産児制限活動家と環境活動家たちは同じ言語を話すようになる。前者代表が人口研究所の所長で、バース・コントロール運動の第一人者、ワーナー・フォノスだ。彼は「野放図な人口増加」は森林消失、土壌浸食、砂漠化、種の絶滅、オゾンホールの拡張の原因だと主張した。

後者の代表は環境活動家でワールドウォッチ研究所の所長であるレスターブラウンだ。彼は毎年『State of the World(世界の状態)』という年鑑を出版し、人口増加が近いうちにもたらすであろう一連の災害について述べている。もっとも、彼の主張がことごとく間違っていたことは歴史が証明している。

人口問題は人類にとって解決しないといけない難問である。ただ、難問の難問たる有縁は、どのような共認形成なら国家や民族が抑制政策に同意できるかというところにある。

ところが現在の状況は、過剰に人口危機をあおり、抑制政策に向かわせる。その際に『持続可能』という言葉がうまく使われる。中身を見てみると、先進国やその支配層の生活や身分が持続可能である、ととることが出来る。

その為には、途上国の資源としての自然は守らなければならない。だから、途上国の人口は抑制されなければならないという、排他的な論理になる。これでは人類の未来を考えたことにはならない。

もともとこの社会(市場社会)は、近代思想(恋愛・自由・個人・人権etc)に導かれて成長してきた。その同じ思想に立脚して、体制を転換させることなど出来る訳がない。にも拘らず、(新しい思想を構築しようとはしないで)「運動」を存続させようとすれば、身近で具体的な運動目標を結集軸にするしかなく、(もともとが体制と同じ思想に立脚しているので)身近な運動目標に埋没すればするほど体制に絡め取られて、体制の補完物になってゆく。

このような迷路から抜け出すためにも、ここ20から30年の環境運動の体制・思想・実態効果の総括が必要なのだと思う。そうして初めて、新しい方向性を模索していくことが出来るのだと思う。

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