2010-08-13

環境問題の改革を進めるには、新しい社会統合機構が不可欠!4~『国益よりも省益、省益よりも私益』~ 

官僚集団は、『国益よりは省益』といわれます。つまり、国家全体の利益よりは、各々の省庁の利益を優先するのです。具体的には、その省庁の予算をどれだけ確保するかに血道をあげます。
さらには、官僚個人の利益が優先され、政策は二の次です。 
 
  nedo.jpg
  NEDOの入居するミューザ川崎セントラルタワー 
 
今回は、新エネルギー関係の政策で存在感のあるNEDOを例に取り上げて、官僚集団の構造をみてみます。 
 
国益よりは省益、省益よりは私益(特別会計による省益の拡大)
無駄事業の量産(公共事業と天下り構造・官僚個人の私益の追求)
特定の専門家集団の暴走(官僚機構の際限のない肥大化) 
 
国益ではなく、省益を実体化させるのが、特別会計という二つ目の予算です。
そして、特別会計を軸にして、際限もなく外郭団体(天下り先)が作られていきます。 
 
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国益よりは省益、省益よりは私益(特別会計による省益の拡大) 
 
国の予算には、一般会計と特別会計があります。
このうち、一般会計は各省庁が予算要求を行い、財務省(大蔵省)が査定をします。国全体の税収枠があるので、なかなか各省庁の省益が押し通せません。 
 
そこで、各省庁が考えだしたのが、特別会計です。
その省庁の権限が及ぶ分野で税金を作りだし、その税収をもとにして事業を行う特別会計です。 
 
現在、『低炭素社会』を標榜し、新エネルギーへの補助金(太陽光発電補助金など)、スマートグリッド研究開発を推進しているNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の予算は、経済産業省が所轄している「エネルギー対策特別会計」から生み出されます。
NEDOの21年度の予算は、総額2,347億円。その財源は、一般会計543億円、エネルギー対策特別会計1,699億円、財政投融資特別会計105億円と、圧倒的にエネルギー対策特別会計が大きいのです。 
 
「エネルギー対策特別会計」は、石油石炭税と電源開発税を財源とし、平成21年度では、2兆6500億円の巨額な特別会計です。この特別会計には、他の省庁は財務省とはいえども、口出しできません。
各省庁は、特別会計という聖域を作りだし、そこで省益の拡大を図ってきたのです。 
 
参考: 国庫歳入歳出状況 2.特別会計(21年度の歳入結果) 
 
少しその数は減ってきていますが、各省庁の特別会計が並んでいますね。 
 
無駄事業の量産(公共事業と天下り構造・官僚個人の私益の追求) 
 
環境問題を鋭く論評している研究者に、中部大学の武田邦彦先生がいます。武田先生のブログで、太陽電池補助金についてのエピソードがでてきます。

補助金は技術者の恥 
 
「世界の平均的な技術では、この性能のテレビが10万円」という時に、日本の家電メーカーは「7万円」で作った。だからたとえ9万円で売っても 2万円だけ有利だった。 
 
これが技術者の誇りだ。そして、「安い」ということは「技術が良いので、無駄が少なく、省エネルギーで製品ができる」ということだから、技術としては鼻高々だ。 
 
ところが技術が拙劣で12万円もかかるとすると、2万円の補助金を貰って10万円にしないと世間様と太刀打ちできない。 
 
つまり、補助金とは「自分の技術はこんなに劣っています」ということを世間に公言することに他ならない。 
 
そんなことは技術者にとって耐えられないことだ。 
 
ただ、短期間に援助を貰うなどはある。それもどんなに長くても10年ぐらいだろう。10年、補助して貰ってもまだ世間様より劣っているならあきらめた方がましだ。 
 
太陽電池の補助金は大規模研究補助の時代もいれて40年を越える。 
 
ある時に私は太陽電池の大メーカーの技術担当重役に「なんで補助金など貰っているのですが。こんなに長い期間にわたって貰うのは技術者としてどうですか?」とお聞きしたら、「本当は貰いたくないけれど、国が貰えというのでと言われた。

補助金を無くすことは、補助金を執行している外郭団体が縮小することです。外郭団体の組織を縮小させたくない、できれば拡大させるために、一旦導入した補助金を延々と続けているのです。 
 
この外郭団体、外郭組織には、多くの退職官僚が天下ります。
NEDOの役員(理事)をみてみましょう。 
 
退職公務員等の状況 
理事長は、経済産業省の元事務次官、副理事長は元中小企業庁長官、理事3名のうち2名が経済産業省の出身者です。 
 
そして、NEDOの関連組織の役員に多数の経済産業省出身者が就職しています。
(財)新エネルギー財団会長、(財)光産業技術振興協会・専務理事、(財)国際超電導産業技術研究センター・専務理事、(財)光産業技術振興協会・専務理事、(社)ニューガラスフォーラム・専務理事・・・・です。 
 
特定の専門家集団の暴走(官僚機構の際限のない肥大化)
なぜ、無駄事業の量産、天下り構造・官僚個人の私益追求へと、官僚機構が堕落したのでしょうか。

官僚制と試験制の通史的総括 
 
「官僚たちの夏」に象徴されるように、戦後の官僚は、「敗戦」という現実を前に、「経済復興」という「国益課題」に向けて邁進した。 
 
霞ヶ関の殆んどの役人は精励潔白で自分たちが日本の再建を背負っていると考え退官した後も民間に入り指導をし、官民が共に日本再建に向けて歩む役割を果たした。いわゆる天下りである。 
 
しかし天下りも、経済成長が一定の成果を収めると、国益よりも省益へと矮小化され、更に小泉改革以降、省益よりも自分の利益へとさらに矮小化されていく。
今や必要か否かという点では極めて怪しいダム、ワクチン、オリンピック誘致、といった無駄事業を量産し続け、その果てにそうした無駄事業の主体となる公益企業に天下りしては法外な役員報酬を手にしている高級官僚たちは、二重に無駄を積み上げるだけの「税金泥棒」に過ぎない。

「官僚たちの夏」は、国益に邁進していた当時の通商産業省(現在の経済産業省)が舞台です。 
 
官僚機構の変質には、構造的な欠陥が隠されています。

官僚制と試験制の構造的欠陥 
 
①官僚とは、皇帝=指導者の従順な下僕であり、皇帝によって与えられた「特定の問題」に対して効率よく答えを出す「専門家集団」である。「集団」である以上、「集団の存続」が自己目的と化す。それ故に、「官僚機構」は際限のない肥大化の道を歩み始める。 
 
②企業集団のような民間集団であれば、競合集団が存在しているため、社会が必要としていないのに、自らの集団の膨張のみを目的とするようなば馬鹿げた集団は淘汰されるしかない。 
 
しかし集団を超えた国家の次元に位置する「官僚機構」には企業間競争のような同類闘争の競争圧力は働きにくい。そうした集団間競争という圧力を超えたところに位置するという特権性は、官僚機構が自閉化し、腐敗する構造的原因をなしているのだ。つまり超集団=社会を統合する組織が単一の集団である、という点が、「官僚機構」の最大の問題なのである。 
 
③しかも、官僚は試験制度を通じて選出されるが、試験制度、とりわけペーパーテストは個人課題化し、現実の対象性を喪失し、観念世界に自閉しやすいという欠点を持つ。(口頭諮問やゼミ形式の問答であれば、まだしも対象性が担保されるが)こうして、自閉集団の中で自閉した観念世界に埋没することに長けたエリートが、現実世界を動かす権力を持ってしまうという、究極の社会統合矛盾が起こってしまうことになる。 
 
④とりわけ、貧困の消滅によって国家私権が衰弱した現在は、「国家、国民のため」という対象性を喪失し、自閉化した官僚集団が、国益よりも自分の利益を優先し、国家を解体へと追い込むという極めて危険な状態をもたらしつつある。

次回は、このような構造的欠陥をもっている官僚集団を、もう一歩踏み込んでみてみます。 
 

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