環境問題の改革を進めるには、新しい社会統合機構が不可欠!5『特権階級の自家中毒』
☆官僚機構・電力会社を中心とした、強固な意思決定集団の自己増殖
日本の原子力開発推進体制は、官僚機構・電力会社を中心とした、政府からおおむね独立して意思決定を行える集団が、その制度を自ら強化し推進できる、自己増殖体制を確立したからです。アメリカの軍産複合体と酷似した体制的特長をもち、サブガバメントモデルともいわれています。官僚の暴走という現代的問題に重なります。
具体的には、官僚機構・電力会社の自己増殖集団は、社会的に要請される理由を超えたところで、原子力開発そのものに価値があるという共認と、世論の圧力をうけず強力に事業推進できる体制を持ち合わせてる、ということです。
(中略)
このように、国家規模で政策決定していく必要のある事業の推進体制は、エネルギー開発に限らず、官僚を中心とする利益集団の権益実現に収束してしまうという大きな問題を孕みます。ここを組み替えない限り、まっとうなエネルギー開発は実現できないといっても過言ではありません。『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電7~原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制
シリーズ5回目では、特権階級が暴走してしまう原因構造を追求します。
その前に、環境問題における、官僚の暴走事例をいくつか見ていきたいと思います。環境問題といえば、資源の枯渇問題や新エネルギー開発技術の問題に目がいきがちです。しかし、原子力発電ひとつとっても、その官僚による運営体制が孕む問題性が『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電シリーズでも明らかにされてきました。
原子力発電推進事業の財源は私達が支払う電気料金に組み込まれた電源開発促進税であり、これが特別会計に組み込まれて官僚や天下り組織の資金源となっています。まず、この「特別会計」の問題性を見ていきたいと思います。
いつもありがとうございます。
☆ ☆☆官僚自らが創り出した特別会計という組織維持拡大の資金運営システム
☆ 特別会計とはなにか
特別会計とは、一般会計とは別に設けられた会計で、財政法という法律に定義されています。わかりやすく言うと、国が特別の目的でやりくりする巨額のへそくりです。へそくりですから、その使途や使い方などが自由で、しかも秘密にできる仕組みとなっています。その金額は一般会計の5倍前後になります。
例えば月給15万で生活しているとしたら、75万のへそくりがあるということです。問題は、15万のみは経費やその使い道が明らかにされているが、75万については闇の中だということです。しかも月給15万で30万借金している状況でも、このへそくりは借金返済にも使われないのです。
そして、毎年使い切れないお金(余剰金)が発生しています。
一般会計では国の借金は900兆円あります。しかし、特別会計の余剰金は100兆円以上存在します。これがいわゆる埋蔵金と呼ばれているものです。つまり国は借金まみれだが、各省庁は黒字といういびつな不思議なことが起こっているのです。
☆ 特別会計がわかりにくいのはなぜか
1、 資金の流れが複雑。
この資金の流れは、特別会計ごとに様々です。一般会計から繰り入れ、さらに繰り戻したり、別勘定へ繰り入れたり、その別勘定も独特の会計処理を行なうといった複雑な処理をすることで実態がわかりにくくなっています。
特別会計の財源は、①一般会計からの繰入金、②特定財源(特定の目的税など)、③固有財源(各特別会計の提供するサービスの対価、④借入金です。それぞれの財源の中身も上記のような複雑処理をすることでわかりにくくなっています。
2.情報開示が不充分
例えば、余剰金の繰り入れや取り崩しなどの内部資金取引の内訳が示されていないので、会計検査の専門家でも資金の流れをつかみにくくなっています。また、会計指標が定期的に発表されず、しかも各特別会計ごとに違う様式での発表となっています。一般企業ならば株主が理解できないような決算書を提出することは許されませんが、特別会計はまさに特別なのです。
☆ 天下りネットワークの資金源としての特別会計
特別会計資金は各省庁が管理運営しています。彼ら官僚たちがつくった事業用に、補助金、補給金、委託費、出資金という形で独立行政法人、特殊法人、公益法人、特別民間法人といった天下り先の法人郡に使用しています。
各省庁とこれら関連団体は随意契約を結びます。随意契約とは、競争によらずに当初から発注先を特定した契約です。会計法29条の3第一項は「契約担当官及び支出負担行為担当官は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、(中略)公告して申し込みをさせることにより競争に付さなければならない」としています。つまり、業務委託契約や請負契約における随意契約という契約方法は会計法上は違法なのです。
特別会計資金がここに流れるのは目に付きにくく、扱いやすいからだとされています。この各関連団体との随意契約によって、天下りネットワークが構築されています。
ちなみに2007年度時点で、国の官製事業絡みで天下る官僚数は計2万5245人、天下り先法人数は計4504、天下り法人に対する補助金などの交付金は計12兆1334億円に上ります(民主党調べ)。
問題なのは、こうした法律をつくるのも各省庁であり、制度を牛耳ることで特権は磐石となるというシステム構造です。
☆ 赤字だらけの杜撰経営。借金漬けで経営感覚麻痺状態。
独立行政法人の新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)は、3つの特別会計(産業投資、電源開発促進対策、石油及びエネルギー需給構造高度化対策)と一般会計から出資を受けています。NEDOが複数の特別会計から出資を受けているのは、NEDOが全部で11勘定(2005年度末)を持ち、各勘定の事業目的に応じて出資者が異なるためです。こうした出資の全貌を知るためには、その複雑な会計ごとに調査するという煩雑な作業が必要になります。このような状態では、出資を受けた各法人の財務も問題を孕んできます。
NEDOを含む複数の研究開発法人のほとんどが繰越欠損金を抱えていることが会計検査院の調査で明らかになっています。
また、エネルギー対策特別会計の出資先である、特殊法人・核燃料サイクル開発機構は2005年に解散し、その権利と義務を引き継ぐ独立法人として日本原子力研究開発機構が発足しました。この解散時の出資金残高は2兆9225億円で、そのうち欠損金が2兆5657億円となっています。つまり、独立法人化するときに、国は2兆5000億円を超える欠損金を損切りしたことになります。もちろん、この赤字は私達の税金で賄われるのです。潤沢な特別会計資金がありながら、これだけの赤字を抱え、それを独立法人化するという名目でチャラにしたことになります。しかも、これだけ巨額の損切りがあったことはあまり知られていません。
エネルギー開発という大義名分のもとで巨額のお金が動き、それは補助金という名目で天下り先である独立行政法人などに流れ、人件費などに使用されます。その会社は巨額の赤字を出し、名前を変えて別会社へ引き継がれといったことが連綿と行なわれているのです。ちなみに、先の核燃料サイクル開発機構は主に高速増殖炉もんじゅの研究開発を行なってきましたが約4兆円以上ものお金が投入されていますが、現在も完成していません。
☆ ☆☆特権階級の自家中毒
一体なぜ、このようなことがまかりとおってしまうのでしょうか。そこには経営感覚のなさに対する危機感や罪悪感などが感じられません。
マスコミ、政治家、官僚など、現在(団塊世代以降)の特権階級は、大半が貧困=本当の私権圧力を知らず、従って本当の目的意識を持ち合わせていない。
彼らは、単なる試験制度発の「合格」という無機的な目的意識(もちろん、それは肉体的欠乏に根ざした本気の目的ではない)を植え付けられてひたすら試験勉強に励み、「特権」を手に入れた連中である。
又、彼らの大半は、試験制度という与えられた枠組みの中でひたすら「合格」を目指してきただけで、その前提を成す枠組みそのものを疑うという発想が極めて貧弱である。
従って、彼らは社会に出てからも、ひたすら既存の制度の枠組みの中で走り続けることになるが、もはやそこでは、既存制度によって与えられた特権の維持と行使という目的以外の目的意識など生まれようがない。かくして、団塊世代がトップor幹部に就いた’00年以降、彼ら特権階級は、ひたすら与えられた特権を行使し、次第に「社会を動かし」「世論を動かし」ているという支配の快感に溺れてゆくようになって終った。これは、権力の自家中毒であるが、恐ろしいことにその病癖は麻薬中毒よりももっと酷い結果をもたらすことになる。
何れも、社会統合という最重要課題が分業体制(専門家体制)によって担われてきたが故に生じた問題であるが、金貸しの特権階級(幹部)に対する買収と脅迫の横行にせよ、支配の快感に溺れてゆく特権階級の自家中毒にせよ、専門家体制が末期症状を呈していることだけは間違いがない。「特権階級の自家中毒」
既存制度によって与えられた特権の維持と行使という目的以外の目的意識をもちあわせていない。そしてひたすらそれだけに埋没し、快感におぼれてゆく。
これは、運営を官僚たちが主導しているという点では環境問題に限った話ではないし、逆に環境問題も逃れられない致命的な欠陥ではないでしょうか。
環境問題というと技術問題ばかりが先行しますが、実際はそれを運営する体制側に深い病理があることになります。ですから、環境問題の改革を進めるためには、こうした構造を理解し、新たな運営体制までも考えることが不可欠となるのです。
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Jakfredswrase | 2013.09.10 13:04
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