2008-12-26

「持続可能な開発」とは(2) ~「環境と開発に関する世界委員会」より

「持続可能な開発」とは(1) ~「環境と開発に関する世界委員会」では、国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」 がまとめた報告書「地球の未来を守るために」の序章「地球は一つ」から「世界は一つへ」を要約・紹介しましたが、引き続き以下の内容を要約・紹介します。


●第一章 脅かされる未来
●第二章 持続的な開発に向けて
●第三章 国際経済の役割
●第四章 人口と人的資源
●第五章 食糧安全保障-潜在生産能力の維持
●第六章 種と生態系-開発のための資源
●第七章 エネルギー-環境と開発のための選択 
●第八章 工業-小をもって多を生産する
●第九章 都市問題
●第十章 共有財産の管理
●第十一章 平和、安全保障、開発、環境
●第十二章 共同の行動に向けて-組織と法制度の変革に関する提案

第五、七、八、十、十一章については、環境保護運動に関する一般図書に書かれている内容と比べ、あまり特筆すべき内容がないので省略しました。
それでは、引き続き ポチッと お願いします。
 

 にほんブログ村 環境ブログへ


●第一章 脅かされる未来
詳細は省略しますが、ひたすら危機を煽る内容です。以下の本文の抜粋です。

すべての問題は貧困に根ざしており、世界はそれによって悪循環(低成長、資源括弧、温暖化、森林破壊、経済危機など)に陥っている。貧しい人々が生き延びるために環境資源を過剰に使用することを余儀なくされており、それが人類の発展の基盤を脅かす環境破壊の原因

                                                               
●第二章 持続的な開発に向けて
このでは持続的開発の概念を整理しています。まとめれば以下のようなことです。


①将来にわたって生活水準を向上させたいという願望と欲求を満たすことが開発の目的
②持続的開発への移行は全ての国の協力の下で管理されることが基本
人口増加が生態系の生産力と調和して初めて、持続的開発は実現可能
④最も零細な農民が天然資源の過剰な開発をもたらし、それが環境にも開発にも悪影響を与える

持続的開発の道へと全ての国々が移行するための戦略的な急務として以下の6点を挙げています。


成長の回復と質の変更
②雇用・食糧・エネルギー・水・衛生といった基本的な欲求の満足
人口の伸びを持続可能なレベルに確保すること
④資源基盤の保護と強化
⑤技術の方向転換と危険の管理
⑥環境と経済を考慮に入れた意思決定

そして、世界が豊かになる為には、

国平均での所得の伸び率は少なくとも3%は必要で、特に現状の人口増加率が推移するとすれば、アジア開発途上国5%、ラテン・アメリカ5.5%、アフリカ・西アジア6%の収入の伸びが必要である。

とし、特にラテンアメリカとアフリカに対し開発を進める必要性を強調しています。
                                                              
●第三章 国際経済の役割
ここでは主に、最貧国は自国で天然資源を管理できないので、国際機関の関与が必要だと言っています。以下、引用

貧しい国では持続可能な生産のための天然資源基盤を管理することが困難な為、成長の為には外部資本の流入が必要。多国籍企業に対する開発途上国の交渉姿勢と対応の強化が急務である。ある国が多国籍企業と交渉する際に、国際機関が技術援助を行い顧問団を送り出すこともあり得よう。

                                                                 
●第四章 人口と人的資源
人口増加は雇用と社会保障が不十分であることが原因

貧困は急速な人口増加をもたらす。収入、雇用機会、社会保障の不十分な家庭では、まず初めに働き手として、後には年老いた両親の養い手としての子供を必要としている。

人口抑制には女性の基本的人権の確立と教育が必要


・開発途上国には直接的な手段で出生率を減少させることが必要
・人々に施設と教育を提供し、家族の規模を選択できるようにして、自らの運命を自らが決める基本的人権を特に女性に対して保障することを意味する。
・政府は、長期的かつ多面的な人口政策の策定と国民に対する働きかけを通じて広範な人口統計上の目標を追求し、家族計画のための社会的、文化的、経済的動機付けを強化し、求める者全てに教育、避妊用具など必要なサービスを提供しなくてはならない
 

                                                                
●第六章 種と生態系
最貧国の無秩序な開発が種と生態系を破壊

熱帯雨林は地球の陸地のわずか6%をおおっているにすぎないが、地球上の生物種の少なくとも半分はそこに棲息している。~中略~ 今世紀末には、ザイール川流域やブラジル・アマゾンの西半分、また、南アメリカ北部のガイアナの森林地域やニューギニアの一部の地域を除いて原生熱帯雨林はほどんど残らない。
熱帯林は、最大の種の数と多様性をもっているが、その大部分は開発途上国にある。これらの国々では、急速に人口が増加し、貧困が広範囲に広がっている。もし、これらの国々の農民が、不安定で絶えず移動せざるをえないような非集約的農業を続けることを強いられれば、残された野生生物生息地へ農地が広がっていくことは避けられないだろう。もし彼らがもっと集約的な農業の実践を奨励されれば、限られた土地をより効率的に使うことができ、原生地域への影響もすくないだろう
 

                                                                
●第九章 都市問題
都市への人口流入がさらに環境を悪化させている

これらの(開発途上国の)都市は、世界の資源利用、エネルギー消費、環境汚染に大きな影響を与えている。多くの都市は世界的な規模で、遠く離れた生態系に深刻な悪影響をもたらしながら資源やエネルギーを調達している 

また、これらの都市がマラリア、胃腸障害、コレラ、腸チフスなど伝染病の拡大させていることにも触れています。
                                                              
●第十二章 共同の行動に向けて
国連主導の世界機関の組織化と開発強化が必要


・国連はそれまで専門機関の独立性が強くて調整能力が弱かったため、非効率。持続可能な開発を重要な判断尺度として国連の指導力を高めていく必要あり。
・すべての主要国際機関と国連組織は、それぞれの計画や予算が持続可能な開発の政策や事業を推進し、支援するように責任を負う。
各国政府は、主要国際機関と国連組織の委員会で持続可能な開発の政策や事業を推進・支援するよう決議を行い、調整と協力を進めるよう主張すべき
・主要国際機関は、UNEP(国連環境計画)の環境基金により支援されている計画を、それら自身の予算で実施しなければならない。

また、資金援助機関として、世界銀行、IMF、地域開発銀行も、持続的開発を業務の中心目標に据え、今直ちに行動を開始ことが必要だと締めくくっています。
                                                             
以上、長くなりましたが、全般を通して、ブルントラントを中心に始まった国連主導の 「持続可能な開発」とは
先進国と発展途上国の一部の裕福な人だけが成長を維持する権利を獲得するための開発であり、無秩序な最貧国の発展は許さない。その為には、増え続ける開発途上国の人口を抑制し、限られた人のみが生き残れる社会をつくること
が狙いだと読み取りましたが、みなさんどう思いますか? 😡

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2008/12/460.html/trackback


Comment



Comment