世界銀行とIMFは正当化観念により貧困と環境破壊を拡大した
tutinoriさんは「環境保護運動に隠された正当化観念 ~アフリカへの搾取構造の実態~」
で、アフリカを中心とした「持続可能な開発」という正当化観念を使った奴隷化とその搾取構造についてまとめられました。
戦後、奴隷制度は撤廃されましがた、工業化の遅れている発展途上国では、市場経済に飲み込まれその対価が払えない貧困層が絶えず生まれ続けているのが実態です。
奴隷を奴隷として面倒見続けるより、僅かでも賃金を与え、消費者にした方が、工業社会ではいいということになる。
以上「奴隷制度の廃止は、市場社会の拡大の結果だった」より引用
と言われるように、市場経済化が貧困から脱出する方法だと、借金を形に発展途上国に無理矢理市場経済化を押し付けているのが、世界銀行とIMFである。
第二次世界大戦後、連合国によりブレトン・ウッズ体制が確立しドルが基軸通貨となると同時に、1945年IMF、世界銀行が創設されました。世界銀行は戦後の復興と発展プロジェクトに資金供給、IMFは国際収支赤字に陥った国家に通貨を貸し付けるという役割を担っています。現在、出資比率が最も高いアメリカ一国が、議案の成否を左右する歪んだ投票システムを採用するなど、実質、アメリカが支配している組織だと言っても過言ではない。
今回は、これらIMF、世界銀行の実態について紹介したいと思います。
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1.貧困削減戦略→債務超過国への構造調整、1980年以降
70年代までは、国連主導の下で南北問題解決に向けての開発支援を行なってきました。
ところが、80年代はじめ、石油価格が5倍に跳ね上がると、発展途上国はドル利払いの急増で大きな打撃をこうむり、IMFと世銀に対し支援を要請します。しかし彼らに与えられたのは、債務免除ではなく資金の貸し出しと引き換えに構造支援プログラム( SAPS)と称しさまざまな融資条件がつけるというものです。
つまり、 Ⅰ:民営化→Ⅱ:資本の自由化→Ⅲ:市場原理にもとづいた価格決定→Ⅳ:「自由貿易」というプログラムが実行されます。
彼らははアジア、ラテンアメリカ、そしてアフリカで売り上げの妨げとなっている障壁を撤廃することで自由化し、一方で発展途上国の農産物に対して自国の市場を補助金で厳重に守り、安い値段で売りつけます。
こうやって、世界銀行とIMFは、アメリカの覇権拡大の便利な道具として力を発揮してきたが、その結果、世界中に飢餓、貧困、低賃金労働など様々な問題が撒き散らされてきたのです。
2.世界銀行、IMFの機能低下
これら国々は財政負担に耐えられなくなり、経済を自力で回復することに努力し、次々と債務返済を行い世界銀行やIMFの支配から必死で逃れようと努力しています。以下、「世界銀行、IMF、WTOが機能を低下させ始めている」より引用
05年末、ブラジルとアルゼンチンが、突然、IMFの債務を前倒し返済すると宣言して世界を驚かした。
この2カ国は、IMFの大口借り手、つまり最大の顧客であった。なぜこの2カ国は、IMFの債務を返済したのだろうか?
言うまでもなく、IMFの支配からのがれるためであった。このような傾向は、他のIMFの大口借り手についてもいえる。
3.世界銀行、IMFの目指す「持続的な開発」とは
1980年代の構造支援プログラムの失敗から、世界銀行、IMFは新たな開発支援計画を模索し始めています。
世界銀行は『1997年の戦略的契約 Strategic Compact in 1997』で、世界の貧困を半減させることを目標に掲げ、IMFは1999年に「持続可能な開発の7つの約束」と題された「貧困削減戦略」を作成しました。さて、その内容は
1.極度の貧困下に暮らす人の割合を1990年から2015年までの間に半分に減らす。
2.2015年までにすべての子どもを小学校に入学させる。
3.2005年までに初等・中等教育における男女格差をなくすことによって,男女の平等に向けて前進し,女性の権利を強化する。
4.1990年から2015年までの間に,幼児と子どもの死亡率を3分の1に減らす。
5.1990年から2015年までの間に,産婦死亡率を4分の1に減らす。
6.2015年までに,必要とするすべての人が生殖医療※にアクセスできるようにする。
※生殖医療とは避妊手段の利用率を高めること
7.2015年までに環境資源の喪失を逆転させるために,2005年までに持続可能な開発の国家戦略を実施する。
彼らは、支援国の政府に事前に入念な戦略を立てさせ、古くからの支持者、カトリック教会・福音教会内の潜在的賛同者、ビジネスリーダーなど多くの関係者を参加させています。また、妊産婦死亡率と乳児死亡率を低下させる必要(避妊の方法)については新しい法律の最重要項目となります。国連人口基金(UNFPA)もこの過程を円滑に進めるよう、新しい法律の起草と説明責任を担う政府機関と市民団体を支援しています。
これらは、
「持続可能な開発」とは(1) ~「環境と開発に関する世界委員会」より
「持続可能な開発」とは(2) ~「環境と開発に関する世界委員会」より
で紹介した「環境と開発に関する世界委員会」 がまとめた報告書「地球の未来を守るために」に書かれている国連の人口抑制戦略と全く同じ内容です。
もともとこれらの最貧国は、古くから共同体的と自給自足による小規模農業により集団運営により自立をしていた訳である。ところがこれらの機関は、市場拡大の戦略に基づき現地に乗り込み、集団を破壊し、自分達の都合に合わせて開発を行った結果が農業破壊、森林破壊、生活環境の悪化、その結果としての貧困化と人口増加である。
即ち、先進国を始めとする市場の支配者は、自分達の市場拡大の目的を正当化する為の観念として、持続可能な開発の為の人口抑制という概念を捏造した、正にこれは欺瞞観念であることを我々は見抜かなければならい。
彼らの根本にある思想は何か?
一見神から人間に判断主体が転換し、近代科学はキリスト教の影響から逃れたように見えた。しかしキリスト教の、自然は人間が利用・加工・支配するためにあるという価値判断はそのまま引き継がれている。
以上、「環境問題を引き起こす思想的な欠陥 2」より引用。
つまり、自分達にとって都合の良い部分だけを対象化し、都合の悪い部分は捨象するというキリスト教を中心とした西欧思想がそのまま貧困化の問題にも反映されている訳である。
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コメント2件
こめっと | 2009.11.02 15:10
>技術者の中には(実はこれが多数なのですが)石油が枯渇しても現在のようなライフスタイルを維持発展できる新技術として認識している方がありますが、私が特にバイオマス技術が重要だと思うのは、あくまで生態系の枠内でのエネルギー消費が持続の道であって、地下資源の破壊的収奪(後世の人は私達をきっとそう呼ぶでしょう)の異常さに気付かせる事にあると思っています。
実際、食料として生産していた作物を石油の代わりにどんどん転用・消費していくような体制が出来てしまったら・・・と考えると、恐ろしいですね。持続出来ない上、「燃料としての作物」の大量生産システムの発展とともに、食の安全も危ぶまれるように思います。
「バイオマスは地域分散型の小規模なシステムの方が適している」という点には大変頷けました。そうなると、国家として対外的な政策を定めることはもちろんですが、それぞれの地域の人々がまさに地域に根ざし、地域集団として主体性を獲得出来そうな可能性を感じます。sinsinさんの仰る『里山の現代版』という表現は、言い得て妙であるなぁと思いました。
バイオマス技術も現在はまだ最先端技術として実現に向けての開発途上にあります。上にdarumaさんが書かれているような特許問題を考えても、やはりこういった技術を国が保護下に置くことが急務となってくるのでしょうか。
daruma | 2009.10.27 17:19
日本もこのバイオリファイナリーについては産官学の総力をあげて取り組んでいますね。
その理由のひとつに、特許問題が付きまとっているように思います。欧米の巨大資本が先行して取得してしまうことに危機感を覚えます。
酒や納豆の製造にまで特許侵害だと主張してくるのでは?とかんぐりたくなるほど加熱している状況になっていきそうですね。
>限定的な地域でエネルギー循環を確認しながら使用する事>を切に望みます。