2011-02-18

環境問題のパラダイム転換4~クライメイトゲート事件後の地球温暖化に対する認識(世界と日本)

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2009年11月、地球温暖化の根拠データが捏造されていたのではないかという大スキャンダルが発生しました。IPCC(気候変動に関する政府間パネル:気候変動の原因や影響について、最新の科学研究を集約し、評価や助言をおこなっている国際機関。IPCCが発表する報告書や数値資料などは、温暖化ガス削減目標を定めた京都議定書の基礎になるなど、国際的な影響力を持ちます。)が地球温暖化の根拠として上げていた北半球の気温推移のグラフ(20世紀に入ってから一気に気温が上昇しているカタチからホッケースティックと呼ばれている)などいくつかのデータが故意に作成されたものなのではないかという疑念を生じさせうる内容のメールがネットに流出したのです。
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流出したメールは、IPCCからデータ作成の依頼を受けていた科学者間のプライベートなメールですが、そこには生々しい表現で様々な内容が書かれていました。
これらの膨大なメールから読み取れる最大の問題はデータの捏造疑惑ですが、他にも例えば、地球温暖化懐疑派の科学者に対する暴言や、情報公開に応じないこと、雑誌に論文を載せないよう圧力をかけていたこと、などが上げられています。
関係者たちは、「メールの内容は本物だ」と認めた上で、しかし「あくまでデータの捏造はしていない」と表明しています。
日本においては、この事件を知っている人は意外と少ないようです。なぜなら、海外では連日のように報道されていたこの事件が、日本ではほとんど報道されていないからです。 sonoda.asablo.jp/blog/2010/02/19/4891493″>リンクによれば主要5大紙でもそれぞれ1回あるいは2回しか報道されていません。
いずれにしても、この疑惑は地球温暖化対策という世界共認の今後を左右する出来事と言えます。そこで、今回は現在、地球温暖化対策について世界的な共認がどのようになっているかを世論調査や海外のニュースなどから調べてみました。
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☆☆☆メール流出後の世界共認~CO2地球温暖化説への信頼は大きくダウン
☆クライメイトゲート事件の影響で地球温暖化を懸念する国際世論は急速に減少

気候科学の不確かな真実[2010年7月14日号掲載]ニューズウィーク
 
悪いのは不況による経済への不安感なのか、ことのほか寒かった今年の冬なのか、それとも失態続きの国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)なのか──。地球温暖化を懸念する世界の世論が急速にしぼんでいる。
 エコ先進国のはずのドイツでも、温暖化について懸念しているのは全体の42%にすぎない(06年には62%)。イギリスでは温暖化の原因は人間の活動だと考える人は26%にとどまっている(09年11月には41%)。1月に米ピュー・リサーチセンターが行った世論調査では、21の政策課題のうち温暖化は優先度で最下位にランクされた。
 こうした風向きの変化に、ついこの間まで称賛の的だった気候学者たちははしごを外された格好だ。
 (中略)
 人類が作り出した二酸化炭素(CO2)が、地球温暖化の原因となることに異議を唱える科学者はほとんどいない。ただしどれほどのペースでどれほどの影響が出るかとなるとはっきりしない。この10年間ほど、気温上昇が進んでいない理由も解明されていない。
明確でない「因果関係」
 温暖化研究への反発は、科学者たちが対策の必要性を世間に訴えるために政治家や活動家と組んだ手法への反発でもあった。
 アフリカにおける穀物生産量の減少や自然災害の発生によるコスト増といった、IPCCの報告書の中でも頻繁にメディアなどで引用されるデータの一部は環境保護団体のパンフレットや新聞記事、企業のリポートを引き写したものだった。そしてどれも学術的な研究によって否定されてしまった。
 批判された気候学者の対応もまずかった。批判派の裏の意図を疑うばかりで、データや筋の通った議論で反論しようとしなかった。ヒマラヤの氷河が2035年までに解けるという予測に対して一部研究者から疑問の声が上がった際も、ラジェンドラ・バチャウリIPCC議長は彼らの主張を「えせ科学」と一蹴した。
 だからといって人類が化石燃料を好き放題使い続けていいわけではない。温室効果ガスの排出を削減し、クリーンなエネルギーに切り替えるべき理由は山とある。(中略)
 ただ今の時点では、温室効果ガスによる温暖化にどの程度の緊急性があるのか明確ではない。クリーンエネルギー利用促進の根拠に挙げるのも難しい。

この記事は比較的中立的に書かれていると思われます。温暖化という環境問題の危険性は否定できないとしながらも、クライメイトゲート事件で発覚した、科学者と政治との関係や科学者のスタンスなどがIPCCの信頼を下げたという状況認識が読み取れます。 またドイツやイギリスという温暖化対策提唱側の国で、地球温暖化に対する問題意識が大きく低下しています。
また、次に紹介するものも2010年8月のニューズウィークの記事からです。

「環境に優しい政治」は無駄だらけの金食い虫──効果もプロセスも不透明な温暖化政策に、各国の政府や世論が背を向け始めた
わずか3年で地球温暖化ブームはウソのように沈静化しつつある。
  ・ドイツでは気象変動を懸念する人の割合は2006年に62%だったのが現在は42%。
  ・オーストラリアでは温暖化を差し迫った問題と考える人の割合が2007年は75%だったのが現在は53%。
  ・アメリカでは21の最も憂慮すべき問題のうち気象変動は最下位。

各国首脳の温暖化政策も縮小傾向だ。
  ・ドイツのメルケル首相はグリーンテクノロジー開発の助成金を大幅縮小。
  ・アメリカのオバマ大統領は排出量取引制度導入に意欲を失っている。
  ・オーストラリアのラッド首相は温暖化対策への支持率低下によって失脚。

☆世界的に見ても地球温暖化対策はうまくいっていないと考えている人が多い。

【環境リポート】自国の温暖化対策に国民は不満=世論調査2010年1月26日(火)
 【ワシントン・ロイター時事】世界の人々の3分の2は「自国政府や産業界は地球温暖化対策について正しい方向に、正しいテンポで向かってはいない」と不満を持っていることが、ロイター・イプソスの共同世論調査で分かった。
 同調査は23カ国の約2万4000人を対象に、昨年12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の前後ないし期間中に実施した。それによると、全体の65%は「自国の温暖化対策の進展ぶりや行動に同意していない」と回答、「同意している」としたのは35%にとどまった。同意が50%を超えたのは、中国(86%)、インド(60%)、さらにトルコ(54%)の3カ国にとどまった。(中略)
 「自国の政府や産業界が温暖化阻止のため正しい方向に、正しいテンポで向かっている」と、「向かっていない」の回答比率(%)は次の通り。
▽メキシコ17(83)▽フランス19(81)▽ドイツ24(76)▽スウェーデン29(71)▽英国33(67)▽ロシア35(65)▽米国38(62)▽ブラジル43(57)▽韓国43(57)▽日本45(55)▽トルコ54(46)▽インド60(40)▽中国86(14)(了)

例えば中国を見ると、政府や産業界の温暖化政策を非常に評価していることが伺えます。しかし、中国の実際の動向である京都議定書の批准拒否を考えれば、温暖化防止のための政策を評価しているというよりは、京都議定書を批准しないという政策を国民は支持しているとも解釈できます。
また、アメリカでは62%が「正しくない」と判断していますが、後述する世論調査の結果を見れば、オバマ政権の温暖化対策(グリーンニューディール政策)は無駄であるとの判断とも解釈できます。
いずれにしても、世界各国の大半以上の人々が「地球温暖化問題」に対して「正しい政策」を取れていないと考えているということがわかります。
☆地球温暖化への深刻視が一番高いのは日本

2010年01月17日 10:44 発信地:ロンドン/英国【1月17日 AFP】BBCが実施した「世界で最も深刻な問題は何か?」を問う国際世論調査で、「貧困」との回答が「環境」や「テロ」などを抑えて1位となったことが、16日明らかになった。
 この調査は英BBCの国際放送BBCワールドサービス(BBC World Service)が、昨年6月から10月にかけて23か国の2万5000人以上を対象に、面接および電話方式のほかインターネットを利用して実施したもの。
調査の結果、世界で最も深刻な問題は「極度の貧困」と答えた人は71%で、「環境・汚染」の64%、「食料・エネルギー価格の上昇」の63%を上回る結果となった。「テロ」、「人権」、「感染症」は59%、「気候変動」と「世界経済情勢」は58%、「戦争」は57%だった。
 調査結果は国によって異なり、「テロ」はインドやパキスタンでは1位となったほか、英国、インドネシア、スペインなど、過去数年以内にテロ関連の大規模な攻撃を受けた国で上位3位以内にランクインした。
「気候変動」は日本で1位、中国では2位、米国では9位だった。気候変動が1位になったのは23か国のなかで日本だけだった。(c)AFP

世界の中で気候変動が1位だったのは日本だけというのも特殊ですが、京都議定書に参加しようとしない中国が2位となっているのも興味深いところです。ちなみに各国と比べて、アメリカはクライメイトゲート事件の前から地球温暖化については懐疑的なスタンスを取っています。
(参考:米国人の40%は「地球温暖化問題は大げさ」、この10年で最高  2009年3月のギャラップ世論調査)
クライメイトゲート事件以降、大きな方向として世界的にはこれまでより地球温暖化に対する問題意識は減少しつつあります。しかし、日本のみがそうはなっていないという状況が読み取れます。またこの世論調査分析が示すように、世界の人々の認識と日本の人々との認識が違うのはなぜなのでしょうか?
☆☆☆日本は世界と比べて、官僚(国家)、マスコミによる統合度(≒支配度)が強い
冒頭でも述べたように、地球温暖化に対する世界共認の行方を大きく左右したクライメイトゲート事件はイギリスやアメリカでは連日のように報道されましたが、日本においてはほとんど報道されませんでした。
私達はマスコミというものは100%事実を報道すると思いがちです。しかし、実態は権力者やスポンサーの意向によって彼らの都合のいいように情報が統制されています。そういう意味では、戦時中の大本営発表の問題とも本質的には何も変わっていません。実態からしても、日本は世界と比べて情報統制度合(支配度)が強いと言えます。
また、CO2による地球温暖化は、国家運営の方針の基盤となっています。実際に国家運営をしているのは官僚ですが、彼らにとってはもしもCO2地球温暖化が否定されるようなことになれば、政策そのものが否定され、環境税の導入などによる財源もなくなることになります。また、CO2削減市場で儲けようとしている、マスコミのスポンサーでもある大企業にとっても都合が悪くなります。
こうした状況は一般人でもなんとなく感じていることですが、それでも反対運動が起きないのは、政治というものに無関心であったり、「お上に従うのは当たり前」といった日本特有の官僚と大衆との意識の分断が背後にあります。

大衆と特権階級の共認内容の差は深刻です。大衆側の『本源期待』に則った政策であれば、環境運動は解決に向かいます。しかし、特権階級側の『豊かさ期待』に則った政策であれば、環境問題を助長する政策にしかならず、やればやるほど問題が混沌としてゆくと同時に、彼らの特権だけが強化されていきます。
彼らが暴走し始めた理由の一つに、大衆側の政策への無関心(=傍観者)であること、があります。社会期待の歴史(8)~環境問題を充足課題として捉え直すことで、本当の解決策が見えてくる~

いい悪いは別として、大衆の政治への無関心が官僚やマスコミによる統合を成立させているとも言えるのです。
結果的に官僚や大企業の意向にそった報道がマスコミから一方的に流されることで世界と日本との地球温暖化に対する認識の違いを生み出しています。
このような状況では大衆は「何が問題か?」と問われれば、当然「地球温暖化」と考えるようになります。
☆☆☆日本人は本源性から環境問題を捉えている
一方で、日本には世界にはない「もったいない」というような独特の環境に対する意識があります。CO2に限らず、例えば、家電リサイクル法の施行においては以下のような状況がありました。

家電リサイクルが動き出した時、海外からはさんざんバカにされたものです。消費者からお金を取って廃棄物処理をするなんて、不法投棄の山になるに違いないと。しかし、実際には、大多数の日本人はちゃんとルールを守っています。メーカーがきちんとシステムを作りさえすれば、市民もそれに応えるのが日本人だと思います。リンク

また、ゴミの分別についても、多くの日本人がこれを実行していることに外国人は驚くそうです。リンク
こうしたことが可能なのは、自然環境に対する捉え方や、なにがしかの社会問題に対して「少しでも貢献したい」「役に立ちたい」という本源性を持っているからです。
しかし、CO2温暖化に対しては、環境破壊を助長するようなエコカーやエコポイントによる消費という風に、この本源性とはずれた行動を取ってしまっていることを否定できません。
一体なぜこんなことになってしまうのでしょうか。
☆☆☆本源性に蓋をしているのは事実がわからないこと⇒共認形成の場が必要
日本人の本源性は環境問題解決のための可能性でもあります。しかし、環境対策という名目で経済政策となっているような誤った政策とそれを報道するマスコミによって、現在は本源性に蓋をされている状態です。
エコカーやエコポイントに始まり、CO2削減商品を買うことはいいことだとマスコミはコマーシャルも含めて現在も報道し続けています。それによって多くの日本人はなんの悪気もなく良かれと思って環境対策を考えているのです。
しかし、例えば仮にCO2による地球温暖化が事実だとしても、現在行っていることは「良かれと思って」しているとしても、そのための行動になっていません。
けれども、本源性に蓋をしているのがマスコミの報道だとすれば、それを取っ払うことさえできれば、みんなの役に立つ環境運動がよみがえることになります。
先にも述べたようなマスコミの構造を把握し、ニュース報道を鵜呑みにせず、ネットで調べたりという風に、事実はどうなのかと追求することができれば、本来行動すべき方向に向かうことができます。そうすれば本源性の潮流に乗って、過剰消費の抑制や、普通の人が自らエネルギーや環境政策を担っていくという、みんなが求めている環境運動が実現してゆくことになります。
当ブログもそうした目的で運営をしています。
マスコミに代わる事実の共認形成ができる場を創出していくことが今求められているのです。

List    投稿者 hirakawa | 2011-02-18 | Posted in G01.二酸化炭素による温暖化って本当?1 Comment » 

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コメント1件

 mine | 2012.01.04 23:48

>国王、金貸し、都市の貴族にとって、冨は善であり、鉱山は冨を生み、その高い生産性のために実践的な技術が必要とされたのです。
>職人・技術者を中心に作り上げてきた「日常に役立つ」技術が、次第に「自分たちの戦争、市場拡大(=私権拡大)に役立つ」技術に大きく変化していきます。
技術が必要とされそれが向上する(実現される)事は、自然な流れです。しかし私権に利用され始める事が全ての誤りである事が良く分かります。
技術の私物化。自我肥大そのものですね。

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