2007-01-09

二酸化炭素による温暖化って本当?第3回 ~地球の炭素循環ってどうなってるの?~

一般に、地球温暖化の原因として、大気中の二酸化炭素濃度の上昇に焦点が当てられていますが、二酸化炭素による温暖化って本当?第1回でもhondaさんが
 「海洋循環や大気循環の調査は、未だに一部地域の一部の現実しかわかっていない状況だ。」と指摘されていますが、そのよく分からない炭素循環ってどのようなものなんでしょうか?ちょっと調べてみました。
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図はhttp://www.virtualglobe.org/jp/info/env/01/gw06a.htmlより引用
現在、大気中に存在する二酸化炭素の量は約740Gtと推定されており、海洋や陸の生物・非生物に姿を変え存在する炭素量(変動が少ない陸の石灰岩を除いて)は約45、000Gtで、約60倍だそうです。
しかも、一度放出された二酸化炭素が大気中に存在するのは約5年間で、毎年膨大な炭素が地球上で循環していることになります。
一体、これら大気以外に存在する炭素は、どのように移動・変化し、地球環境にどのような影響を与えているのでしょうか?
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国連の下部機関であるWMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)がつくったIPCC(気候変化に関する政府間パネル)の第2回報告書では、(単位はGt/年、+は大気中の増加、-は大気中の減少、±は見積の不確実性を示す)
1. 化石燃料の燃焼       +5.5±0.5 ……①
2. 熱帯雨林の破壊        +1.6±1.0 ……②
故に、人間活動に由来する大気圏CO2供給量は、①+②=+7.1±1.1……③
次に、
3. 北半球の森林再生     -0.5±0.5 ……④
4. 肥沃化効果           -1.3     ……⑤
5. 海洋の吸収          -2.0±0.8 ……⑥
故に、CO2吸収量は④+⑤+⑥=-3.8±1.3 ……⑥ 
従って、大気圏に毎年残留するCO2は、③-⑥=+3.3±0.2 ……⑥
としていますが、この内、3.は先進国では植林により森林が復活しているとするものであり、4.は二酸化炭素・窒素酸化物の増加、気温の上昇により光合成が活発になったとするものであり、まだまだ不確かさの幅はきわめて大きいようです。
つまり、炭素循環システムには大きサーバー(貯蔵圏)があり、循環システムの状態に何らかの変化がおきて、平衡状態が少しでも変われば炭素移動量は容易に変わりうることを考えなければなりません。 
<炭素循環システムと巨大な貯蔵圏>
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「炭素循環」より引用
化石燃料の燃焼による大気中に放出される炭素6Gt/年を、大気・海洋・陸地間の年間炭素移動量と比較してみると、大気のやりとりだけで化石燃料放出量の130倍、海洋中深層や海洋生物、生物と土壌とのやりとりなど全部含めれば、200倍近くになる。
特に、最も数値の大きい5.の海洋での物質循環はかなり複雑で、IPCCが発表した海の吸収量は、主に西部北太平洋で観測した結果から得た結論でのモデル計算値であって、実測値ではない。海洋研究者ですら、  「世界の海の半分以上を占める太平洋を欧米の研究者が軽視したことが、認識にずれを生じさせた」と言うように、現在その解明に向けてようやく世界の研究者達がデータを集めたところであり、結論を出すには以下に挙げるような課題をクリアにしなければ早計すぎる、というのが実態のようです。
①中層水の形成  
 中層水は、低温かつ低塩分のため、深層までは潜れない水で、水深1000m程度にまで広がっている。この中層水の平均寿命(存在量/年間形成量)は、数十年から百年程度で、CO2吸収に関しては、1000年循環の深層水よりも中層水の方がより重要と言われています。
②大陸棚ポンプ   
 大陸棚は全海洋の8%に未たないが、付近を流れる海流は、熱を低緯度から高緯度に運び、周囲の外洋水より水温が低くなることにより、下のより深い方に入っていく。これを大気の二酸化炭素を海洋に送り込む過程を大陸棚ポンプと称している。
③気体交換  
 気体の交換は、穏やかな海ではほとんど起こらず、荒天にさらされる割合は、冬の高緯度海域で大きく、その効果は、酸素よりも、交換平衡に時間のかかる二酸化炭素で大きいと言われている。
   
④生物ポンプ    
水深およそ100mより深い中深層の海洋圏には、表層と比べて膨大な量の炭素が二酸化炭素や重炭酸イオンなど化学物質として貯蔵されており、プランクトンや魚介類の体として固定され、その生物が死ぬと深海に沈んで海水中で分解し、中深層海洋圏内の炭素となる。これが生物ポンプと言われる。
 現在の二酸化炭素の吸収に関するモデル計算では、海洋だけでも上記の①から④のようなメカニズムが考慮されておらず、我々はまだまだ多くのことを自然の摂理から学ばなければ、二酸化炭素温暖化説が解明されたとは言えない、というのが現状認識として必要だと思います。
政治家や学者、環境団体含めて、これらまだまだ解明しなければならない課題があるにもかかわらず、yoriyaさんらが言われる目先の【環境保護運動】 「二酸化炭素による温暖化って本当? 第2回」に邁進していくのは、どうしても「温暖化の原因は二酸化炭素でなければならない」理由があると思えてなりません。いずれにせよ、事実はどうなってるの?というのが我々素人の素直な感想です。
先ずは、どこまで解明されていて、どんな課題があるのか?今後は、ひとつづつ整理して事実に少しでも近づきたと思います。

List    投稿者 simasan | 2007-01-09 | Posted in G01.二酸化炭素による温暖化って本当?4 Comments » 

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コメント4件

 日本一のみかん農家 | 2007.02.09 23:21

熱の環境は自然相手の農業では、
花のとき、芽のとき、熟すときなど大事な時期には
すごく影響があります。
近年の異常気象、今年は寒気の問題など対応不可能なことが多いですね。

 andy | 2007.02.12 13:33

環境という言葉を漠然と考えるのではなく、自然の循環法則としてみていくのは面白いですね。
ただ熱力学について、ほんとにドシロウトなんで、ついていくのに必死です、が勉強になります。
次のエントロピーの記事も楽しみにしてマス。

 hattan | 2007.02.19 12:43

2回にわたって読ませて頂きました。ひさしぶりに物理の授業を思い出しました。
温暖化が問題といったときに、普通の人も暑いから困るだけではなく熱平衡や放射、熱そのものに関する知識も少しかじった方が理解しやすいし、色々と考えたり、気付いたりする契機にはなるように思います。
次のエントロピーも期待してます。

 本田真吾 | 2007.02.19 22:55

地球生命はどのようなメカニズムで存在しているのか

『エントロピー則からみる自然の循環構造』シリーズ、興味深く拝見させて頂いています。この指標値が、おそらく環境問題を正しく把握するのに役立つという、見通しに…

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