気候変動問題・脱炭素は「エネルギー安全保障問題」へ、BRICS・新G8の力が増大へ向かう!
ドイツは7月末にロシアからの天然ガスパイプライン(ノルドストリーム1)を当初の20%供給に減らされ、この冬が越せないという危機的な状況が続いています。前回の本ブログでもふれたように、「欧州のエネルギー政策の優先順位は、脱炭素どころでは無く、「脱炭素→エネルギー安全保障へと大きく転換」しています。ここにきてドイツは石炭火力発電の復活だけでなく、原子力に猛反対した緑の党も遂に折れ、2022年に末に停止予定だった残りの3基の原子力発電所の稼働も継続することに。参考:リンク
そもそも「気候変動対策」そのものが、ベースとなる安定したエネルギーの供給を前提としており、その上に天候や風に大きく左右される再生可能エネルギーで脱炭素を目指すストーリー。その足元がぐらぐらに。
そしてこのエネルギー安全保障の問題は、欧州だけでなく、先進国対BRICsの問題として新たな展開へと進んでいます。
(トップの画像はこちらからお借りしました。)
先進国は、ウクライナへ軍事進攻をしたロシアに対して経済制裁を進めていますが、それとは別に、ロシア・中国を中心としたBRICs諸国にイランやサウジアラビヤやUAE、開発途上国等が加わり、独自な動きが始まっています。
●ロシアの燃料資源(原油、天然ガス、石炭)が、BRICs諸国の力を支える動きへ
ロシアの原油は、これらの国へ割引価格で提供され、中国、インド、ブラジル、エジプトなどに振り向けられています。サウジアラビアやUAEもロシアから原油を購入し、代わりに自国の石油を高値で輸出している状況。世界的なエネルギー価格の上昇により、ロシアの石油・天然ガスのルーブル収入は伸び、高値を維持。
・中国:中国の原油輸入量「ロシア産」が2カ月連続首位に 6月の輸入価格はサウジアラビア産の2割安 リンク
中国はドイツを抜いてロシア産原油の単独最大輸入国へ。
・インド:QUADの足並みを乱すインドのロシア対応 リンク
インドのロシアからの輸入は主に原油。消息筋によると、ロシアがウクライナに侵攻した2月24日から7月末までの同 輸入額は150億ドル強と、前年比5倍近くに膨らんだ。
・米国:バイデン大統領のサウジへの石油増量交渉失敗
バイデン大統領が自国のインフレ対策(バイデン人気は続落、中間選挙でトランプ共和党に負けるそう・・)として、サウジアラビアを訪問。石油の増量をお願いするも、失敗に終わりました。参考:リンク
●燃料だけでなく食料や肥料を含めて、BRICSが新たな経済圏を作り出しつつある。
また化石燃料だけでなく、食料や肥料も含めてロシアの力が拡大しています。
参考:【ロシア発で世界の食糧が変わる】7~世界の勢力図の転換。ロシア・中国・BRICSが新たな経済圏を作り出しつつある~ 「新しい「農」のかたち」
「ここ20年くらいでは、ロシア・中国・BRICSが連携し始め、急速に大きな力を持ち始めています。
農業分野においても、これら諸国が、ここ20年で農業・食糧政策に非常に力を入れており、農業輸出量においても欧州系・米国系を追い越し、力学を逆転させています。」
●先進国通貨に依存しない新たな決済がBRICSで拡大。
この間のロシアに対する先進国の金融制裁を見て、中国をはじめ新興国は先進国通貨に依存しない、新しい決裁に取り組んでいます。
●拡大するBRICS
参考:拡大するBIRICS、アメリカによる従属国への引き締め、アメリカの内部分裂 「金貸しは、国家を相手に金を貸す」
・BRICSへサウジ、イラン、トルコ、エジプト、アルゼンチンが加盟申請する予定。
・ロシアが「新世界G8」を提唱:中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イランの8か国。
●ロシアと中国の一体化路線が、今後の脱炭素・再生可能エネルギーも左右する。
ロシアから安い原油・天然ガス等の燃料資源が中国に輸出され、中国は自国の資金と生産力とレアメタル等の資源を
もとに、安く大量に再生可能エネルギーである太陽光発電パネルや蓄電池等を生産する体制が整うこととなります。
先進国は、中国からこれらを買うこととなり、今後、脱炭素の主導権もBRICS・新G8に左右されます。
■まとめ
・気候変動対策・脱炭素は、ロシアのウクライナ侵攻により、エネルギー安全保障問題へと転換した。
・ロシアの「資源・食料」と中国の「生産力と資金」が一体化し、BRICsの力は増大へ。
・ロシアへの先進国経済制裁を契機にBRICsは拡大、G7との力関係は逆転へ向かう?
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