2022-08-30

磁力の発見の歴史(近代)⑤~イギリスの最初期の機械論~

磁力の発見の歴史(近代)④~フランシス・ベーコンの経験主義~では

デカルト主義がイギリスに輸入される過程でベーコン主義の影響を受けて特徴的な変化を顕著に体現しているのが、イギリスの最初期の機械論者ヘンリー・モア・パワーとその師であるトマス・ブラウンとなる。

と書きました。

 

今回はこの2人に入っていきます。

 

〇トマス・ブラウン(1605-1682)

ブラウンはオックスフォードと大陸で教育を受けた医者で、物理学者史では「電気electric-ity」という言葉をはじめて使用した人物としてのみ記憶されている。ブラウンが1642年に書いた『医者の信仰』では、魔術も自然科学もただのその知識の由来(入手の経路)が異なるだけで、自然の秘密に迫ろうとするものであることは変わりはないという考え方であり、中世的な怪異や驚異を鼻から否定することはない。他方で、ベーコン主義者として実験の重要性を声高く形語り、権威への盲従を厳しく戒めている。古くはロジャー・ベーコンにはじまり、デッラ・ポルタとギルバードによって進められた磁石にまつわる俗伝検証と迷信の掃討作業が、ブラウンによってほぼ完成され、『謬見』の第二巻大三章に記されている。『謬見』でブラウンの語り口からは、魔術であろうが民間伝承であろうがデカルト理論であろうが、すべて実験のふるいにかければおのずと真意が判別されるはずであるという強い確信が見える。このように、観念的なデカルト自然学が、イギリスではベーコンの実験科学の土壌に移植された。

 

(さらに…)

  投稿者 kurahasi | 2022-08-30 | Posted in G.市場に絡めとられる環境問題No Comments »