海の微生物は人間の体内環境に酷似した他の微小生物との共生を前提にしたコミュニティを形成
今回は海洋微生物について書きたいと思います。
微生物には多様な種類が存在し、それぞれに特性があります。
海に存在するプランクトンやバクテリアといった海洋微生物は他の微生物と同様に光合成で二酸化炭素を吸収し酸素を放出したり、逆に呼吸によって二酸化炭素を放出します。
一方クジラなどの大型海洋生物に吸い込まれなど食物連鎖の基底部を担い、環境の変化にも柔軟に適応するなど他の微生物と異なる特性も持っています。(土壌微生物は糞を分解する役割はありますが、食物連鎖の中には含まれません。)
未知の海洋微生物圏へのチャレンジ -遺伝子の超並列大量解析による微生物多様性研究の新展開-より
海洋微生物は培養が難しく、他の微生物に比べても分からないことがまだまだ多いですが、海を媒介に特異なコミュニティを紹介していきます。
海の微生物はそれぞれ個別の役割しか持っていません。例えば“光を集めるロドプシンという物質を持つ個体”や“有機分子を再生する個体”などの役割に特化し、他の機能はコミュニティを形成し他の微生物に依存しています。
進化の過程で余分なDNAを削り、それぞれの役割に必要な遺伝子だけを残しました。そのほかの業務は、たとえ細胞の生存には必要なものであってもコミュニティの中の別の微生物が担います。
このような「合理化」が可能となったのは、微生物たちが互いに近くを漂っていて、体内化学物質が他の細胞に行き来できるためです。
細胞のなかには栄養分だけでなく情報を交換するものもあります。分子は何が必要であるかや自分が何者であるかの信号を発し、荒れた海のなかでも細胞どうしの交換が特定できるのです。もしこのコミュニティからはぐれてしまったら、彼らは生きられません。
この関係性は自分が最も得意とするところに集中すれば良いため効率が良い一方、コミュニティの断絶に弱いです。
もし油や合成化学物質が流出したり、海水の酸性度が変わるなどで細胞同士の関係が断たれた場合、微生物コミュニティは成り立たなくなる。
◆この関係は人間の体内の関係にも似ています。
皮膚細胞や神経細胞など個別の役割をもつ細胞たちがお互いに信号のやりとりで一つのコミュニティ=人間を形成しています。身体の9割が微生物でできているというのも納得できます。
自然のシステムの延長線上にあるはずの人間が自ら体内環境を悪化させるような生活をしていれば、そのうち人間としての機能に支障が生じてしまうことでしょう。
微生物の関係に学び、我々の生活も見直す必要があるかもしれません。
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