ストレスによる免疫細胞のバランスの崩壊
皆さんはストレスと聞くと、どういう印象をお持ちでしょうか?
前回の『細胞の状態は自分の意志で完全に変化させられる』で述べた『不安とストレスは細胞の免疫力を徹底的に弱くする事実から思う「真の感染症予防」』から言えば、ストレスは免疫力を下げるように思われますが、本当にそうなのでしょうか?
ストレスを外圧だと捉えると、生物は恒常的な自然外圧に晒されて進化してきました。それは人類も同様なのです。
生きとし生けるものは、全て外圧(外部世界)に対する適応態として存在している。実現論1_1_01
では、良いストレスと悪いストレスの違いはどこにあるのでしょうか?
『人類存亡のときにこそ冷静に健康のことを考える : ストレスによる免疫細胞のバランスの崩壊を安保さんの論文で学び直した』より引用します。
免疫細胞を産生しているのは胸腺だけではないことを思い出す
先日、以下の記事で「 T細胞」という免疫細胞のことについてふれました。
パニック障害の人はできるだけ「マスクを避けたほうが望ましい」医学的理由。そして私は、子どもや若者たちの胸腺が萎縮した病的な社会の出現を懸念している
In Deep 2020/08/04
この T細胞というものは、ウイルスなどの病原体が体内に入った時に戦ってくれる存在のひとつで、人間を感染症から防御する代表的なのもののひとつです。
上の記事では、その免疫細胞を作り出すのは、「胸腺」という器官だとして、たとえば、以下のような Wikipedia の記述を引用しています。
胸腺中のリンパ球が最も多いのは思春期(10代前後)でピーク時の胸腺は30~40gに達する。その後は急速に萎縮し脂肪組織に置き換わる。
この胸腺の退縮は70歳までにほぼ完了する。そのため胸腺は最も老化の早い器官といわれる。(胸腺)
ということで、人間というのは、思春期をピークにして、十代の時に最も「免疫力が高い状態」となっているというようなことを記したのですけれど、もちろん若い人たちのほうが免疫が高いことは事実だとしても、この記述だけですと、
「まるで高齢者はまったく免疫細胞が産生されない」
ような響きがあります。
~・中略・~
亡くなられた安保徹さんは、後年は、通常の医療情報から阻害され続けていましたが(いっときは Wikipedia の項目さえありませんでした)、それでも、新潟大学医学部の名誉教授として医学界の権威であり続けたのは、この、
「胸腺以外での T細胞の産生を発見した医学的功績」
によるものだったことを思い出しのたのです。
思えば、もう何年前になるのかわからないですが、ひどいめまいと体調不良に見舞われていた私が、外を歩いていた時に、偶然、書店の棚に並んでいた健康本のムックを目にしました。いちども入ったことのない本屋さんの店頭です。
そして、それが安保さん監修のものだったのです。
その内容が素晴らしいかどうかはともかく、
「西洋医学治療《以外の観点》ってこんなにたくさんあるんだ」
と知ると共に、
「薬ってこんなに良くないんだ」
ということを知ることになったのでした。
それからですね。
健康に対しての考え方が劇的に変化したのは。
それから少しずつ生活というか、「考え方」を変えていき、それから3ヶ月後に私は死んでしまいましたが(死んじゃったのかよ)…ああ、ちがいました。死んでしまったのではなく、めまいが良くなりました。
本格的に死亡したのはそれから1ヶ月後のことです(やっぱり死んじゃったのかよ)。…ああ、これもちがいました。死んじゃったのではなく、それまで、数十年間飲み続けてたベンゾジアゼピン系の抗不安剤をやめる決意をしたりと、まあ実際には今でも体は弱いですが、「健康に対しての考え方」の変化に最初に気づくキッカケを作ってくれたのが安保さんでした。
その後、たとえば、日本で最初の整体師である野口晴哉さんや、自然療法の東城百合子さん、あるいは中村天風さんなどのことも続けて知ることになり、
「健康ってそういうことだったのか」
と子どもの頃から体がずっと弱く、病院にかかりっぱなしだった私は、新しく知り続けるさまざまな見識に、目からウサギが落ちまくる毎日でした(派手な毎日だな、おい)。
新型コロナウイルスへの態度に関しても、その頃から学んだ考え方に沿えば、最近書いているような結論にどうしてもなるのです。
安保さんの話に戻りますと、つまり安保さんが現役の医学者だった頃に発見されたことは、
「年をとってからも免疫細胞と病原体への抗体は産生され続ける」
ということだったのです。高齢者も免疫を若者同様に持つことができている。それが人間の身体だと。
それまでの医学では、T細胞を産生するのは「胸腺だけ」と考えられていたため、「なぜ高齢でも免疫システムが働くのか」ということがわかっていなかったようです。
安保徹さんの『膠原病、炎症性腸疾患、がんの発症メカニズムの解明』という論文集には、以下のようにあります。
安保徹 論文集『膠原病、炎症性腸疾患、がんの発症メカニズムの解明』より抜粋
マウスでもヒトでも、胸腺外分化T細胞の出現は誕生時には稀であるが、加齢とともにその数が増加する。この現象は胸腺退縮に伴って出現する。
100週齢マウスでは、CD3 int 細胞が肝臓のみならず、他の臓器でも顕著になった。老齢マウスの脾臓とリンパ節でも、CD3 high 細胞に比較してCD3 int 細胞の比率が大概圧倒的に多い。
胸腺外分化T細胞の概念なしでは、加齢による免疫現象を理解できない。
この「CD3 int 細胞」とか「CD3 high 細胞」とかは、よくわからないのですが、つまりは、
> この現象は胸腺退縮に伴って出現する。
ということで、
「高齢になり胸腺が退縮した後から、胸腺以外でも活発に免疫細胞が作られるようになる」
ということのようなんですね。
具体的には、2000年に、「日本皮膚科学会誌」というものに掲載された安保さんの講演会の内容には以下のようにあります。
免疫系は胸腺システムと胸腺外システムに分かれる。胸腺外システムはいろいろな部位に独立して存在している。腸管、肝(腸から進化)、子宮粘膜、皮膚、腺組織などである。
いずれも、それぞれの部位にはc-kit+ stem細胞が胎生期にホーミングしていて、これから NK細胞や胸腺外 T細胞を作り出している。
この胸腺外の免疫システムは、加齡の他 emergency 時に活性化するが、このスイッチを引き起こす因子はストレスで放出されるカテコールアミンとグルココルチコイドそのものである。
掲載されていた原文のままですので、わからない単語もありますが、この安保さんの講演によれば、胸腺以外から T細胞が産生されるようになる因子は、まず、
・加齢
ですが、他には、ストレスの際に放出される、カテコールアミンとグルココルチコイドという物質が引き金となり「胸腺以外から T細胞が産生される免疫システムが作動する」ようなのです。
カテコールアミンとグルココルチコイドとは以下のようなもののようです。
カテコールアミン
カテコールアミンとは、神経科学においては主に神経伝達物質として機能するドーパミン、ノルアドレナリン(またはノルエピネフリン)、アドレナリン(またはエピネフリン)の3つを指す。
グルココルチコイド
副腎皮質ホルモンの1つである皮質ステロイドは、糖質、タンパク質、脂質、電解質などの代謝や免疫反応などに関与する重要なホルモンである。さらに、ストレス負荷により身体の神経・内分泌制御機構が働くことによりコルチコステロイドの分泌が亢進し、ストレス応答の制御に関わるなど生体のホメオスターシス維持に重要な役割を果たしている。
これらを読みまして、
「ああ、なるほど」
と思いました。
さすが人間の身体であります。完ぺきなんですね。
ここに出てくるドーパミンとかアドレナリンなどは、すべて人間の活発性と関係しているものだと理解しています。
悪い意味ではなく「リラックスの逆」というようなものであり、またこれも悪い意味だけではない「ストレスがかかる」ことと関係していると思われます。
ストレスというのは、悪く言われることが多いですが、現実の社会運営には常にストレス状態が必要であり、例えば、スポーツなどの試合や競技の前や試合中、肉体労働、俳優や歌手ならステージの本番の前や最中に生じるようなもので、こういうものによって、人は適度に緊張し、活動的になり、社会が運営されていく。
もちろん、一方で「悪いストレス」もあります。
いずれにしても、
「そのようなストレスを受けている中で、このような、全身の臓器での免疫細胞の産生の引き金がひかれる」
ようなのです。
これは、「人間の病原体へのバリアの完全性を示している」のだと思います。
たとえば、以前の記事では、医学論文から、以下の部分を抜粋しました。
胸腺は精神的、物理的化学的等のストレッサーによって急性のストレス状態が生じ萎縮が起きるが、その原因が取り除かれると自発的な回復が起こる。 (「急性・慢性ストレスによる胸腺の萎縮」より)
通常のストレス下においては、
> その原因が取り除かれると自発的な回復が起こる。
とありますように、「ストレスで萎縮した胸腺は回復する」のです。
しかし、ストレス下においては胸腺が萎縮していることは確かであり、その際には胸腺から産生される T細胞が減少することも事実だと思われます。
そういう時に、
「萎縮した胸腺のかわりに、他の部位で免疫細胞が作られる」
のだと私は今回理解しました。
医学的には間違っている解釈かもしれないですが、メカニズムとしては、そう理解しても構わないと思います。
つまり、普通に生きている限り、
「人間の免疫細胞の産生が停止されることはない」
ようなのです。通常のストレスなら大丈夫なのです。
常に、体は病原体から守ろうと機能する。
また興味深いことには、先ほどの 2000年の日本皮膚科学会総の講演では、安保さんは以下のように述べられています。
NK細胞と胸腺外T細胞のシステムは、加齡以外にも感染、ストレス、自己免疫疾患、妊娠、癌などの時に活性化する。そして常に胸腺の萎縮を伴う。つまり、この系はemergencyに立ち向かう免疫システムなのである。
NK細胞は、ナチュラル・キラー細胞と呼ばれる細胞で、やはり、免疫の重要な存在で、ガン細胞やウイルス感染細胞などを見つけて攻撃するリンパ球です。
こういうさまざまな免疫細胞が、
・加齡
・感染
・ストレス
・自己免疫疾患
・妊娠
・ガン
などの時に活性化して、免疫細胞は私たちを守ってくれるようです。
> emergencyに立ち向かう免疫システム
とありますが、身体の非常時に、こういうように体を守るシステムを私たちは持っているということなんですね。
年齢とともに胸腺が萎縮し、胸腺からの免疫細胞がまったく作られなくなった後の高齢世代でも、「常に胸腺以外から免疫細胞が作られ続けている」と。
つまり基本的には、高齢者にも完全な免疫があるのです。
免疫細胞の状態をパンデミックの進行から見てみると
しかし、安保さんの論文や講演を少し読んでいて、さらに、
「今の社会環境は、やはり感染症に対して良くない」
ことにも気づくのです。
というのも、
「過剰な、あるいは長期のストレスは感染症予防に大変に良くない」
ことのようだからです。
たとえぱ、先ほどの 2000年の講演では、以下のように述べられています。
2000年の日本皮膚科学会総の安保さんの講演より
ストレスは、自律神経を介して、免疫系や循環器系に働きこれらのバランスを乱す。例えば、交感神経系の緊張持続は、T、B細胞系の抑制と、逆に胸腺外分化T細胞と自己抗体産生B細胞系の活性化を招く。
同時に、顆粒球増多や循環障害が伴う。このような状態は、個体が粘膜破壊や臓器障害を受け病気が発症することを意味している。
少し難しいですけれど、ストレスが、人間の免疫系のバランスを崩すことが医学的にはわかっているようです。
今回のパンデミックの現在に至るまでの状況を、社会の人類全体の免疫細胞の観点から見ますと、以下のようになると思われます。
2020年のパンデミック下の社会と免疫状況の予想
・中国で感染拡大が報じられる
・世界的に不安が拡大
・パンデミックが宣言される
・世界各地で都市封鎖や緊急事態宣言、移動の制限が始まる
(多くの人々のストレスによる免疫細胞産生のバランスの崩壊が少しずつ始める)・5月頃には極度のストレス下にいる人の数がおそらくは世界で数十億人規模に達する
(ストレスによる免疫細胞のバランスが崩壊した人が増え、感染者がさらに増え続ける)・この夏、再度、都市封鎖や緊急事態宣言が各地で始まる
(ストレスの増大でさらに免疫細胞のバランスが崩壊が進み、感染者がさらに増え続ける)・その状態がすでに半年続こうとしている
・今後も収束の目処はなし
(そろそろ何億人単位で免疫の完全崩壊が起き始める可能性)
このような状況下では、免疫細胞の観点からは、今後、どのようなことが予測されるかといいますと、
「今後、さらに感染者が増えるという予測しか出せない」
ということになります。
新型コロナウイルス自体が、自ら急速に感染力を落としていくか、 SARS のように自然に消滅していくか、どちらかでも起きない限り、今後も人々の免疫力は下がり続け、そして新型コロナだけではなく、あらゆる感染症に苛まれる人たちが増えると思われます。
感染症だけではなく、安保さんの講演では、ストレスによる免疫細胞のバランスの崩壊は、
> 粘膜破壊や臓器障害を受け病気が発症することを意味している。
と述べられていますので、
胃腸などの不調から、あるいは各種の内臓の不調にも至りやすくなっているのかもしれません。
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