脚光をあびる石炭火力発電所
石炭火力発電所が国内で再び脚光を浴びるような場面が、近い将来に実現するかもしれない。
石炭は埋蔵量が天然ガスや石油と比べて多く、今後100年以上にわたって採掘できるとの推測もある。石油のように埋蔵場所が中東など一部地域に集中しているわけではないことも利点。価格も比較的安定している。これらの点では火力発電の燃料として、石炭の評価は高い。
●九州電力:大型石炭火力の新設検討
毎日新聞 2014年03月25日
九州電力は、大型石炭火力発電所を新たに設置する検討に入った。2014年度にも100万キロワット程度の電源を調達する入札手続きを実施し、21年度をめどに運転を開始する。計画を凍結している松浦石炭10+件火力発電所(長崎県松浦市)2号機による自社応札を目指す。
28日に発表する14年度の電力供給計画に、入札による電力の調達計画について盛り込む。東日本大震災後も、原発の再稼働を優先してきた将来の電源計画を修正し、低コストで原発の代替としても活用可能な石炭10+件火力を使い、電気料金の低減を図る。
九電は管内の全6原発について、短期的に再稼働を目指す方針だが、中長期的には運転期間を原則40年、最長60年とした改正原子炉等規制法の制約を受け、新増設も見通せていない。また、大手電力会社の発電部門と送配電部門を分社化する「発送電分離」が実施され、経営体力が奪われるとの懸念もある18年より前に、一度凍結した発電所計画の具体化を目指す。
01年に着工した松浦2号機は、数年後、電力需要が想定より下回ると予想されたのを受けて工事を中断。06年には、運転開始時期を23年度以降とすることを、立地自治体に説明していた。
●中部電が東電と共同で火力発電事業 茨城県那珂に石炭火力を建設
2013.11.28
中部電力と東京電力は28日、東電の常陸那珂火力発電所(茨城県)内に出力60万キロワット級の石炭火力発電1基を共同で建設すると発表した。両社は12月上旬に建設と電力供給を担う特定目的会社(SPC)を設立する。中部電はSPCから受け取る電気の一部を首都圏で販売することも検討する。
経営再建中の東電は、自前で発電所を建設する資金力がないため、今春に火力発電所建設の入札を実施。中部電は東電と組んで応札し、1キロワット時あたり9円53銭という入札上限価格をクリアし、落札した。
総投資額は非公表。資本金1億円の出資割合は中部電96・55%、東電3・45%。今年度中に環境影響評価に入り、平成28年度に着工、32年度の稼働を目指す。
60万キロワットのうち38万キロワットは東電向け。中部電には16万キロワット、SPCには6万キロワットが供給される。都内で会見した中部電の奥田久栄・事業戦略グループ長は、自社が受け取る16万キロワット分について、「(新電力への)卸売りや東京での小売り、中部管内への供給など選択肢があり、需給を見ながら判断する」と説明した。
●進化する火力発電、ガスの熱効率が55%超、石炭も44%超が標準に
2014年03月25日
火力発電で最大の問題はCO2をはじめとする有害物質を大量に排出することにある。
熱効率は石炭や天然ガスを燃焼させた発熱量を電力に変換できる比率で、100%であれば熱エネルギーをすべて電力に転換することができる。実際には熱エネルギーの多くが発電の過程で失われるため、従来は電力に変換できる比率が35~40%程度にとどまっていた。さまざまな新技術を適用することによって熱効率の改善が進むと、そのぶん燃料が少なくて済み、CO2の排出量も減らすことができる。
日本の火力発電技術は世界でもトップクラスにあり、早くも2020年代に向けた技術開発が進み始めている。石炭をガスに転換してからコンバインドサイクル方式で発電する「IGCC(石炭ガス化複合発電)」を適用すると、熱効率は50%前後まで向上する。
ガス火力では燃焼温度を高めて熱効率を引き上げることが可能だ。商用運転中の設備は1500度、建設中の設備では1600度までだが、日本の発電機メーカーは1700度まで可能な発電設備の開発を完了している。国が2020年度まで実証試験を実施する計画で、その後に商用運転に移行する予定である。これで熱効率は65%程度まで向上する。今後も火力発電のコストとCO2排出量は減り続ける。
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