【気候シリーズ】ゲリラ豪雨はなぜ起こる?
(画像はコチラからお借りしました )
近年、都市近郊のごく限られた場所で、短時間に発生する猛烈な集中豪雨に見舞われる頻度が増えてきています。
いわゆるゲリラ豪雨です。
本来降るはずのない季節に突発的に降ることと、発生の予測が難しいことから、軍事用語である「ゲリラ(guerrilla:無許可で少人数かつ短時間で行なうこと)」の由来となっています。
過去にはゲリラ豪雨への対策が遅れ、大きな被害を各地にもたらすことから新しい都市型災害の一つとされている程です。
今年のゲリラ豪雨の発生傾向についてもすでに予想が発表されています。
ウェザーニューズは、突発的かつ局地的に大雨や雷をもたらす「ゲリラ豪雨」について、2012年7月―9月における発生傾向を発表した。発生回数は全国的に昨年と同じかやや多く、ピークはお盆休みごろになる見込み。
8月中旬はさらに大気の状態が不安定となり、全国的に大規模なゲリラ雷雨が発生する可能性が高い。お盆休みの時期は山沿いだけでなく市街地でも雷雨が多くなる見込み。8月下旬になると太平洋高気圧が再び強まり、9月上旬にかけてゲリラ雷雨は発生しにくくなる。
今年のゲリラ豪雨はいつやってくる?より
今回はその異常気象であるゲリラ豪雨のメカニズムについて迫ってみたいと思います
〇近年、ゲリラ豪雨は増えている?
1976年に気象庁がスタートさせた地域気象観測システム「アメダス」のデータによれば、この約30年間、大雨の発生件数も増加傾向にあります。
ちなみに気象学ではゲリラ豪雨に関する明確な定義はありませんが、一般的に直径10キロメートルから数10キロメートルの範囲内で、1時間に50ミリを超える雨の量を目安とされています。
詳細はこちら
気象庁サイトの 「雨の強さと降り方」ページによれば、災害をもたらす危険性のある雨は5段階に分類されている。1時間あたりの降雨量が10~20mmの場合は「やや強い雨」と呼ばれ、長く降り続く場合は注意が必要。1時間降雨量が20~30mmの場合は「強い雨」で、側溝や下水、小さな川があふれ、小規模の崖崩れが始まる。30~50mmは「激しい雨」。山崩れ・崖崩れの危険地帯では避難の準備が必要になり、都市部では下水管から雨水があふれる。50~80mmは「非常に激しい雨」。土石流が起こりやすくなり、都市部では地下室や地下街に雨水が流れ込むこともある。そして、80mm以上は「猛烈な雨」。息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感じるほど。大規模な災害の発生する危険性が高いのだそうだ。
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アメダスの観測によると、1時間以上に50ミリ以上の豪雨が発生した回数は、1976年~1986年が160回、1987年~1997年が177回、1998年~2009年が233回となります。約30年前と比べると約1.45倍に増加、さらにこれが1時間に80ミリ以上となると、1976年~1986年の9.9回に対し。1998年~2009が18回と2倍弱も増加していることが分かります。
〇ゲリラ豪雨がもつ脅威
また冒頭でも少し触れましたが、ゲリラ豪雨の恐ろしさは降る雨の強さ以上に、降った雨が短時間で低地に集中的に集まり、その地域に大きな被害をもたらすということです。
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直近でいえば、2006年7月におきた南九州、北陸、長野、山陰地方など広い地域で被害をだしたゲリラ豪雨では、崖崩れや土砂崩れで多数の犠牲者をだし、家屋の倒壊も多く、復興費用や災害で発生したゴミ処理費用などで、自治体に大きな打撃を与えたとも言われています。
このようにゲリラ豪雨は、非都市部では河川の氾濫や鉄砲水を引き起こし、都市部においては地域的な水没や地下水への浸水、地下鉄や道路などの都市機能の麻痺といった被害をもたらします。
都市部は概ねアスファルトやコンクリートで覆われているため、降った雨水が地中に浸むことなく川のように道路を流れ、排水溝に集中します。水はさらに下水道へと流れ込みますが、現在、整備された都市の下水処理能力というのは、一般的に1時間に50ミリの降水量に対応できるレベルです。
つまり、ゲリラ豪雨に雨量はいわば想定の範囲外で、治水施設や下水道の排水能力の許容範囲を超えてしまい、都市型水害という災害を引き起こすことになるのです。
では、この神出鬼没で恐ろしい破壊力をもつゲリラ豪雨は、なぜ近年増えてきているのでしょうか。
また、そもそもゲリラ豪雨はなぜ引き起こされるのでしょうか。
〇ゲリラ豪雨を引き起こす要因は?
原因としてよく挙げられるのが、地球温暖化による地球平均気温の上昇と言われています。気温が上昇すると水蒸気の発生量が増加し、大気中の水蒸気量も多くなるからという理由ですが、そもそも都市型で起こるゲリラ豪雨の原因を地球温暖化とすることは間違っています。
ゲリラ豪雨を引き起こす一番の要因は、ずばり【ヒートアイランド現象】です。
1980年のころ、一部では「地球寒冷化、氷河時代に向かう」が話題になりましたが、2000年のころから世界の平均気温が急上昇する傾向とも相まって、二酸化炭素の増加による地球温暖化説が支配的になっていることとも連動しています。
これら100年程度の気温下降・上昇データからは、長期変動の地球温暖化については言及できませんが、人間による工業生産活動が地表面の改変、大気の熱収支バランスを急変させ、フィードバック過程を通して急激な温暖化が起き始めた可能性が極めて高いと言うことです!
温暖化は都市化によるヒートアイランド現象か? より
戦後から高度成長期へと移り変わり、1960年代以降には建築基準法の緩和も相まって、都市部では続々と高層ビルが登場しました。
そして1990年以降には、横浜ランドマークタワーなど300メートルを超える建物の建設や都市整備の充実によって、都市の人工化は加速度を増していきました。
その結果、太陽熱を蓄えやすいコンクリート建造物や、水の蒸散を防ぐ舗装道路の激増、自動車や建物冷房による排熱量の増大が絡み合い、ヒートアイランド現象を引き起こすといわれています。
気象学的にみてみると、ゲリラ豪雨発生時の条件は以下3点に絞られると思います。
●ゲリラ豪雨を生む条件
(画像はコチラよりお借りしました)
条件①:夏の晴天時。
「南高北低」の夏の気圧配置により日本の南側の太平洋高気圧が居座り、南から暖かく湿った空気が流れ込むことによって雲ができやすい状態になります。
条件②:上空の冷たい空気。
偏西風が南側に張り出してくると、それに併せて冷たい空気(寒気)が南下します。日本の上空に入ってくるために上空の冷たい空気(寒気)が流れ込みます。
条件③:積乱雲の発生。
地面付近の暖かく湿った空気が上昇して対流が発生し、空気中の水分が凝結され積乱雲となり狭い範囲に激しい雨を降らせます。
一般的に積乱雲の発生には、近くに山々が迫っている状況が必須になります。
そもそもゲリラ豪雨は都市部に頻繁に起こるものではなく、山々が連なっている地域、市街地によく発生するものとされているのです。
そう考えると、主に関東平野のような都市の大平原でゲリラ豪雨が起こる現象はいかに不思議だと思いませんか?
都市型で起こるゲリラ豪雨の発生の裏には、 「東京ウォール」 と呼ばれる高層ビルの群れがあります。
〇海風を遮る「東京ウォール」の影響
近頃、東京の湾岸地域には200メートルを超える超高層ビルが次々と建てられており、それらを総称して「東京ウォール」と呼ばれています。
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通常なら、昼間は気温の高い内陸に向って海風が吹きます。夜になると海上の方が気温が高くなるため、陸から海に向って陸風が発生します。この海陸風による海の流れによって空気は冷まされていたのです。
ところが、ヒートアイランド現象によって陸地部分の気温が下がらないため海風から陸風へと代わる時間が遅れたり、夜になっても海風が止まらないという現象が起きています。
それを妨げているのが東京ウォールです。
この東京ウォールが海からの風の流れをせき止め、新橋や赤坂周辺など都市部の気温をこれまで以上に高めており、これがヒートアイランド現象を高める要因となっているのです。
(ビルを挟んだ海側と内陸側では4℃~5℃のもの気温さがあったといいます。)
また積乱雲の発生と同じような効果が、都市部では環八雲として現れています。
〇環八雲もゲリラ豪雨の原因に
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都道311号線環状八号線、通称「環八通り」。この環八の上空に都市部をぐるりと囲むように発生する「環八雲」がゲリラ豪雨の発生原因の一つとされています。
環八上空は自動車の排気ガスによる汚染物質が多く存在し、慢性的な渋滞も加わってヒートアイランド現象が加速された状態となっています。
そこに相模湾と東京湾からの海風が吹き込み、これがぶつかり合って上記気流を生み出し、汚染物質に含まれる浮遊粒子状物質などが凝結核となって、雲が形成されるのではないかと言われています。
以上のことからゲリラ豪雨はなぜ起こるのかをまとめると、
・ゲリラ豪雨を引き起こす最大の要因はヒートアイランド現象。
・ヒートアイランド現象を引き起こすには、積乱雲の発生が必要。 (しかし積乱雲は、基本山が迫っている地域に起こるもの)
では、なぜ都市部でゲリラ豪雨が起こるのか?
それは積乱雲の代わりに、①東京ウォール②環八雲が同じ効果を発揮しているから。
ということになります。
〇今後の対策は?
冒頭でも述べましたが、ゲリラ豪雨の的確な予測は不可能に近いです。
ですから予測をもとに身を守るという対策は見当違いと言えるのではないでしょうか。
また最近は、ヒートアイランド現象の対策の一つとして、
温暖化を抑止するためにはどーする?と考えられ、都市部では屋上緑化を代表とする方法がとられていますが、これも全く役に立たないと言い切れます。
今我々が見直さなければいけないのは、エネルギーそのものに生活を頼り切ってしまっている都市部での生活、ライフスタイルそのものを根本から省みることが必要です。
いわば自然の摂理に乗っ取った循環型社会に戻ろうとする動きこそが求められている時期なのかもしれません。
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