【気象シリーズ】日本の局地気候と農業 ~福井・若狭における伝統野菜の可能性 その3~
前回までの「福井・若狭における伝統野菜の可能性 その1、その2」で見えてきたこのエリアの環境特性としては、
😀 暖流・対馬海流の影響で、暖かい
😀 背後に高い山がないため、雪がそれほど多くない
😀 植生分布の境にあるため、多様な植生が見られる
以上の3つが挙げられます。
この特性には、自然界に存在する「水」「気(風)」「土」「木」などの要素が見て取れますが、農業=自然の営みに欠かせない重要な要素がもう一つあります。それが「火」です。
※環境学としての風水からお借りしました
今回のシリーズその3、4では、福井・若狭の伝統野菜、中でも「火」を使った焼畑農法で有名な「河内赤カブラ」にスポットをあてて、今後の農業の可能性を探ってみようと思います。
伝統野菜って何?
そもそも「伝統野菜」とはどんな野菜のことを言うのでしょうか。
伝統野菜は、各地域で古くから栽培・利用されてきた野菜の品種で、地方野菜とも呼ばれています。1970年代以降、生産・流通・販売におけるコスト削減を理由に作物の画一化が進み、その結果、大消費地向けにはほとんど生産されなくなりました。
その後、農家の自家需要などで細々と生産が維持されてきましたが、近年は地元の観光資源や食育のための材料として、一方で近傍の都市向けには地産地消商品として、大都市圏向けにはスローフード商品としてその位置づけを見直す動きが始まっています。
※参照:ウィキペディア「伝統野菜」
福井の伝統野菜とカブ
では、今回取り上げる福井県にはどんな伝統野菜があるのでしょうか?
【福井の伝統野菜】
※福井県さんからお借りしました
数ある品目の中でもカブの多さが目に付きますが、福井県=「カブラ王国」と言われるくらい多種多様なカブが生産されています。
なぜカブがそんなに多いのでしょうか?
①カブはもともと環境適応性が高い
※草かんむり+無=蕪。「荒地でも育つ」という意味がある
②稲作不適地が多く、稲以外の作物が多く作られている
※特に嶺北の山側と嶺南エリア
③寒さに強い西洋型カブと、寒さに弱い日本型カブが並存するエリアにあたる
※下掲カブマップ参照
がその理由として挙げられます。
【日本のカブマップ】
※日野菜物語さんからお借りしました
福井県で「伝統」と銘打ったカブをみても、
穴馬カブラ(大野市)
嵐カブラ(大野市)
河内赤カブラ(福井市)
杉箸アカカンバ(敦賀市)
古田苅カブラ(敦賀市)
山内カブラ(若狭町)
などがあります。
伝統野菜の可能性と壁
今、全国的にも伝統野菜への注目は高まっており、「地域の特産品に」という地元の有志たちの熱い想いに、行政が後押しする形でブランド化を進めているようですが、どこも多かれ少なかれ以下のような可能性と壁を抱えているようです。
結果として、生産は綱渡りのような状況になっているようです。そんな中、突破口として注目したいのが、日本三大紅カブの一つで、伝統の焼畑農法で有名な「河内赤カブラ」です。
次回はその秘密に迫ります。
~つづく~
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