【気候シリーズ】オーロラから分かる太陽と地球の関係☆
<画像:オーロラ>
以前の記事『【気候シリーズ】近年の異常気象の原因を探る』で異常気象の一つとして紹介した「低緯度オーロラ」についてです。
昨年は日本より低緯度であるアメリカのアラバマ州でもオーロラが観測 されるなど、異常な観測がされています。
神秘的で美しいオーロラ☆日本など低緯度で見れるのは嬉しいことですが、一方で 通信に依存した現代社会では、オーロラは大きな問題 を孕んでいるんです!
1986年の「カナディアンロッキー列車事故」はオーロラが原因で列車信号のコントロールや、無線通信が正しく伝わらず、鉄道史上最悪級の正面衝突事故 になりました。
1989年には、フロリダなど低緯度でオーロラが見れた夜にカナダケベック州の発電所がダウンして「北米大停電 にまでなっています。
最近でも航空機の通信妨害など、通信社会の現代では気象災害の一つとなっているんです。
また、オーロラが出る近辺での飛行機の中や、地上でもオーロラに免疫のない地域でのオーロラの主出現で、電磁波過敏症などの健康被害 にもつながっているとの話も出ています。
オーロラは、ただ美しい現象としてだけでは、片付けられないものになってきています。
オーロラの出現は、地球にも大きく影響する太陽の活動の変化が関係しています。
今回は、オーロラの仕組みを押さえ、地球に対する太陽の影響力を考えていきたいと思います。
●そもそもオーロラとは?
ローマ神話に登場するアウロラ(オーロラ)は、ばら色の指を持ち、太陽神ヘリオスの先駆けとして2頭立ての馬車に乗って夜明けを告げる女神。その名を踏襲するオーロラは高緯度地方の夜空に現れる超高層大気の発光現象です。発光原理は、なんと蛍光灯やネオンサインも同じだそうです!
●オーロラはなぜ高緯度地方で光るのか。
オーロラは高緯度地方に現れると書いてますが、実際には南極点・北極点の上空には現れません。
一般低には、地球の磁極を取り巻く緯度が65度から80度のドーナツ状のオーロラオーバル と呼ばれる地域で現れます。
大気圏外から降下してきた電子(太陽風=プラズマ)が高層大気の気体にぶつかる事によってオーロラは発光 しています。
地球には絶えず、太陽からの太陽風が吹きこんでいるので、地球上ではどこでもオーロラが見えてもいいはずですが、一般的には高緯度地方(オーロラオーバルと呼ばれる地域)に限られているのはなぜでしょうか?
この理由は、地球は一つの巨大な磁石のように、磁力に包まれており、磁力の力が及ぶ空間である「磁場」が形成 されているからなのです。
吹き込んできた太陽風は、この地球の磁場によって地球に届くことができず、磁力線に沿って極地へと運ばれていきます。極地まで運ばれた太陽風は、磁極に吸い込まれてく磁力線に沿いながら、円を描くように地表に近付いていき、大気中にある原子に衝突し、オーロラが発生 するのです。
つまり、地球の磁場は宇宙に飛び交う高エネルギー粒子から守ると同時に、そこで作られたスキマにオーロラを作り出しているのです。
<図:地球の磁気圏と太陽風の関係>
では、このスキマはどのようにできるのでしょうか。
太陽風に運ばれる太陽の磁場と、地球の磁場が接触することによって、スキマが生まれるのです。
太陽の磁場と地球の磁場が接触する様子を見てみましょう。
イメージはこちらの動画を参照してください。
古代から人々を魅了し、現代の情報通信が発達した社会では大きな問題も含まれているオーロラの不思議を解明したいと思います。
●なぜ発光するのか?
オーロラは『太陽風に含まれる電子=プラズマ』が地球の大気内の分子に衝突し、『高エネルギー状態(励起状態)になった分子』が、余計なエネルギーを発散する際に発光します。
次は、『プラズマ』と『励起状態』 について詳しく見ていきましょう。
プラズマは、気体を構成する分子が電離し、陽イオンと電子に別れて自由に運動している状態のもの。固体、液体、気体とも異なり、物質の第四態といわれています。
<図:プラズマ>
そして地球の大気を構成している窒素や酸素などは、原子核とその周りをまわる電子から構成されています。
プラズマが、これらの空気分子の電子と衝突した際、空気分子の電子にエネルギーを与えることによって、空気分子の電子は、これまでの軌道より外側をまわる状態(回転半径が大きくなる)になります。
この状態を励起状態といいます。
<図:励起状態への変化>
この励起状態は分子にとって不安定なので、時間がたつと自然に元の軌道に戻ろうとします。このとき、元の軌道に戻るエネルギー分、光を出すのです。
<図:電子が軌道に戻って発光する図>
●なぜ低緯度でオーロラが見えるのか?
昨年見えたアメリカのアラバマ州のオーロラは赤色だったといわれています。また、北海道でも10年に1回観測されるオーロラも赤色です。
このように低緯度でみえるオーロラは赤色という共通点 があります。
高緯度地方で見えるオーロラは虹のように様々な色が見えるのに、なぜ、低緯度で見えるオーロラは赤色なのでしょうか?
高度500kmぐらいの高い高度では、酸素原子の密度が高いので、赤色が発光しやすく、中間の高度には酸素と窒素が発光した赤と青と緑が混じり、緑白色に。高度100km付近では大気中の分子の密度が高すぎて酸素が発光できず、窒素が発光する青と赤が混じったピンク色や紫色となります。
<図:大気の層とオーロラの色の図>
オーロラの色は大気の組成によって変わり、赤色は高度500kmというオーロラの中でも一番地球から遠い位置 に見えることが分かります。
つまり、低緯度でみえるオーロラは、下の図のように高緯度地域で出現したオーロラの上方が見えるということのようです。
<図:低緯度オーロラが見える理由(コチラよりお借りしました)>
次に、オーロラが低緯度でも見えるような大きなオーロラが出現したのはなぜでしょうか?
低緯度でオーロラが見えたのは、太陽活動が活発化 しているからだといわれています。
実際、今年2012年は11年周期で活動する太陽のピークの年となるため、オーロラが良く見える年だそうです。
太陽活動が活発化すると太陽風に含まれるプラズマの量が増えます。その結果、地球に向かう磁力線に沿ってたくさんのプラズマが蓄積され、普段はプラズマのない内側の磁力線にもプラズマが蓄積 されます。
オーロラはプラズマシートの電子が磁力線に沿って地球の大気に降り注ぐことによって生じるので、プラズマシートが地球に近くなれば、オーロラはより低緯度で光るようになります。
<図:通常のオーロラ発生時(コチラよりお借りしました。)>
<図:低緯度オーロラ発生時(コチラよりお借りしました。)>
これまでで分かってきたのは、オーロラは地球の磁場の変化と太陽活動が密接に絡み合って生み出している現象 だということが分かりました。
一方で、まだまだ疑問もたくさんあります。
長期的なスパンで見ると太陽活動は停滞期に突入しているという説は本当か?
太陽風にはなぜプラズマが含まれているのか?
地球の磁場の変化はなぜ起こるのか?
磁気嵐の通信社会への影響はどの程度か?
ひきつづき、太陽の活動と地球の関係を明らかにするために、宇宙天気=宇宙の電気現象に焦点を当てて追求していきたいと思います☆
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