【気候シリーズ】雲ができるのはなんで?③~宇宙線とエアロゾルが雲を形成する仕組み~
画像はこちらからお借りしました
こんにちは。
前回は雲の形成に大気中のチリ(正確にはエアロゾル)や宇宙線が影響を与えるという説を紹介しましたが、この説は近年大きな注目を集め、実験も進んでいるものの、その仕組みは未だ仮説の段階にとどまっています。今日は、その仕組みについて、前回よりもう少し詳しくみてみたいと思います
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雲の形成に水以外の微粒子が関係しているというのを発見したのは、今から120年前スモッグに苦しめられていたロンドンの科学者AITKENでした。フラスコ内でどうしたら水蒸気から霧ができるかを繰り返し実験し、微粒子を混ぜると霧ができるという仕組みを発見しました。
太陽活動の変化が地球の気候に影響を与えているという研究は以前から数多く行われてきましたが、最近の研究によって地球の下層大気(<3.2km)の雲量と宇宙線強度の増減に強い相関があることが判明したのです(Sventhmark and Friis-Christensen et al ; 1997)。
図1 下層雲量と宇宙線の相関図 青が下層雲量 赤が宇宙線量
宇宙線と雲の相関を説明する有力な仮説のひとつは、宇宙線の電離作用によってできたイオンを介してエアロゾルが生成され、そのエアロゾルが雲凝結核(CCN;cloud condensation neuclei )に成長して雲の種になるというものです。
図2 宇宙線の電離作用によって生じるイオンによる雲核の生成過程
もう少し、詳しく見てみましょう。
図3 イオンとエアロゾルの形成
宇宙線は、1020eV といったとてつもないエネルギーまでスペクトルをもって地球に降り注ぐ粒子群ですが、これら1次宇宙線は高層大気と衝突して種々の2次宇宙線を大気中に生成します。これらの2次宇宙線のうち主に陽子、中性子が大気の成分である窒素、酸素、アルゴン、ゼノンなどと核破砕反応や中性子捕獲反応を起こしてC―14、Be―7、Be―10、Na―22、I―129等々の同位元素を生成し、それと同時に大気のイオン化、電離作用(放射線が物質中を通過し、中性の原子や分子から電子を弾き飛ばして電離させる作用)をもたらします。
この宇宙線による大気の電離作用の結果、窒素がプラスに帯電し、酸素がマイナスに帯電します。そしてエアロゾル(その中でも主要な物質は硫酸だとされている)と結合してHSO4- 硫酸水素イオンをつくりだす。そして硫酸水素イオンが水分子と結合することでクラスターイオン化し、雲核が形成され、さらに水分子を結合させることで、雲ができあがるとう流れなのです。
ここで何故、水が硫酸水素イオンとくっつくかですが、実はそもそも水分子には極性があり、電荷や極性をもつ分子とくっつきやすい性質を持っているからなのです。
図4 極性分子と非極性分子
つまり、雲というのは、宇宙線による電離作用、大気中の微粒子が持つ帯電性、水の持つ極性といった物質の電気的特性が総合的に作用して出来上がるものなのです。気象というと、温度、湿度、気圧といった熱力学的な世界だけで理解できると思っていましたが、そこは大間違いであり、もうひとつの物理学領域=電磁気学を理解しないと気象は理解できないということです。
図5 宇宙線がもたらす電離作用とエアロゾルから雲ができる全体図解
しかし、それが理解できれば、HAARPなどの気象兵器の理解も深まります。難解ですが引き続き追求していきたいと思います
以下、引用文献等
雲核としての有機エアロゾル研究の現状
宇宙線と雲核生成及び地球環境との関連性についての研究
名古屋における雲核生成実験の現状
負イオン研究の歴史と現状
Ⅱエアロゾル基礎
第29回宇宙線国際会議報告・超高エネルギー宇宙線
バックナンバーはこちら
【気候シリーズ】雲ができるのはなんで?②~鍵を握っているのはエアロゾルと宇宙線~
【気候シリーズ】雲ができるのはなんで?①~地表面でつくられる熱だまりから雲は生まれる~
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【気候シリーズ】人工気象操作技術(ケムトレイル)に迫る
【気候シリーズ】自然の摂理から‘気候’を考える(後編)
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グルコサミン | 2012.08.29 10:31
初めまして
かなり詳しく書いてありますね。
参考になります。