【気候シリーズ】風が吹くのはなんで?①~風には3つの力が作用する~
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気象を追求するにあたって、基本的な気象現象を理解するために、それぞれの構成要素を連載形式で取り上げ行きたいと思います。
前回より
雲ができる基本的な仕組みを地表面からうまれるストームのと上昇気流、という大気の断面的側面から追求してきましたが、雲の生成には大陸と海洋の違いや、緯度の違いといった平面的な差異によってもつくられます。次回は、もう少し大きな気象の仕組みに迫ってみたいと思います。
と書いたように、気象では断面的考察だけではなく、平面的な空気の移動をみていくことが重要です。
そこで今回は、「風が生じるのはなんで?」というテーマで、空気の上下方向・水平方向の動きを追求していきたいと思います。
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「風」は私たちの生活に大きな影響を与えています。
夏の暑い日にス~と吹いてくる気持ちのいい風から、冬の日の寒い北風といった身近なものはもちろんのこと、台風やサイクロンに代表される暴風や、冬場に太平洋側で吹き降ろすフェーン現象といった季節性を伴うもの。
或いは、超上空を時速数百キロで年中吹き続けるジェット気流は、さすがに体感できないものの、航空機の飛行に利用されています。
一概に風と言っても、多種多様。
まずは風が持つ基本構造から押さえていきたいと思います
◆◆風が吹く仕組み◆◆
1.風を起こす力「気圧傾度力」
空気の流れが生じる原因として、まず押さえるべき重要な点が、「熱」です。
地球に届いた太陽の熱エネルギーは、直接空気を暖めません。まず、地表や海や湖を暖めます。
この温まった固体や液体を通じて空気(気体)が暖められ、または冷やされることで、空気に流れが生じるのです。
では、空気が暖められたり、冷やされたりすると、なぜ流れが生じるのでしょうか?
暖められた空気は、膨張して、空気中の分子密度が低くなっていきます。
密度が低く、軽くなった空気は、どんどんと上の方へ上がっていく形で上昇気流が生じます。
ここまでは前回でも扱いました。
次に、上昇気流が生じている地表付近は、空気が上空の方へと向かってしまっているため、その穴を埋めようとして、水平方向から空気が吹き込んできます。
こうして、風が生じるのです。
ここで、地表面に水平方向から生じる空気の流れを「穴を埋める」という表現で説明しました。
空気が流れる原理をより正確に掴むため、気象学の世界では、物理の気圧差(高気圧や低気圧)の概念を使います。
上記の例で考えると、熱によって暖められた地上付近では、空気が膨張して分子密度が低くなり「低気圧」状態になります。逆に冷たくなった地上付近では、空気が収縮して分子密度が高くなり「高気圧」状態になります。地上付近で異なる気圧差の空間が生じた場合、パスカルの原理が働いて、気圧が均等になろうと作用します。
引用:「ニュートン別冊 みるみる理解できる天気と気象」ニュートンプレス
従って、高気圧の空間から低気圧の空間へと空気が移動する=風が生じる、という仕組みになります。
ここで、気圧差によって生じる力を「気圧傾度力」と呼びます。
2.摩擦力
では、気圧傾度力によって生じた風は、一定の力で動き続けるでしょうか?
実際は、一旦動き出した風は、次第に弱まり、消滅していきます。
それは、風が地表面を移動することによって、摩擦力が働くからです。摩擦力は、風向きとはちょうど逆向きに働きます。
3.コリオリの力
気圧傾度力と摩擦力以外にも風には、向きを変える力が働いています。
ポイントは、地球は自転しているということです。
地球上のすべての物体は、まっすぐに運動しようとしても、それを曲げようとする「みかけの力」が働きます。例を出しながら、その働きについて見てみます。
走っている電車の中でジャンプしても元の位置に着地します。それは、電車が進んでいる方向にジャンプした自分も進んでいるからです。このように‘これまで続けていた運動を継続的におこなおうとするはたらき’を「慣性」といいます。 逆に電車が前方へ急発進すると体には後方へ倒れるような力を感じます。これも「慣性の法則」に従うからです。
では、反時計回りに回転する円盤上で、中心点Aにいるaさんから、周辺のある点Bにいるbさんへ、あるいはその逆へまっすぐボールを転がしたとして、このボールはちゃんと相手へ届くでしょうか。
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摩擦力を無視するとボールは慣性に従ってまっすぐ転がっていきますが円盤は回っているので、ポイントBは反時計回りに動いてしまっており、ボールはもとあったBの位置=B’が届いた時には、BはB’とは一致しません。従って、bさんには届かないことになります。
これを円板上の中心点Aの上に立った人の視点でみるとどう見えるでしょう?実際は、ボールは真っ直ぐ進んでいるのですが、盤が回転しているので、その軌跡は時計回りに回転しているようにみえることになります。このように回転体では慣性は、電車とは異なり、ズレを生み出してしまいます。このような回転体において、まっすぐ進んでいるはずのものが回転しているように見えるこのみかけの力を発見者にちなんで「コリオリの力」が働いていると呼びます。
そして、球体である地球上の風や海流にも「コリオリの力」は働いています。地球は北極点からみると反時計回りに回転しています。そこで北極から赤道に向けて投げた物体を北極点上からみると、地球が自転しているので右方向にズレていく、つまり、横向きの力(向きのみを変える力:転向力)が加わったように見えます。
これには緯度による自転の速さの違いが関係しています。
赤道は一周約4万kmです。赤道上は4万kmを一日で一周していることになります。言い換えれば4万km/日の速度で回転運動をしていることになります。しかし緯度が上がるにつれて回転の半径が小さいため自転速度は小さくなり、極点では回転速度は0になります。
ここで緯度の高い地点Aから緯度の低い地点Bへ真南へ飛行機を飛ばしてみます。すると地点Bの方が回転速度が速いので飛行機は真南より西にずれて着きます(右にそれる)。
逆に緯度の低い地点Bから地点Aへ真北へ飛行機を飛ばしてみます。すると飛行機は真北より東にずれて着きます。(右にそれた) 。このように、北半球での南北方向の物体の運動は、進行方向に対して右にそれるように見えます。
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このように北半球では風が南から北へ向いて吹く場合は西から吹く風になり、風が北から南に吹く場合は東から吹く風になります。尚、南半球では逆になります。
下記の図は「貿易風」や「偏西風」といった風を表しています。
地球上を年中吹いている、これらの風も、コリオリの力を受けて風向きがカーブしていることが分かります。
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4.まとめ
以上、風が吹く原理に迫ってきた結果、風には3つの力が働くことが分かりました。
風を起こす力となる「気圧傾度力」、そして、風が起こった後で働く「摩擦力」と「コリオリの力」。これらの力を整理したものが以下の図解です。
引用:「気象学入門」古川武彦・大木勇人著 講談社
今回は基本的な風の仕組みについて取り上げてきました。
その上で、実際に熱の膨張が起きる場所は、季節や地形に左右されるため、地球上には様々な季節風や土地に固有の風が存在します。
そこで次回では、日本を中心に、季節によって吹く風の特徴を調べてみたいと思います 😉
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【気候シリーズ】雲ができるのはなんで?③~宇宙線とエアロゾルが雲を形成する仕組み~
【気候シリーズ】雲ができるのはなんで?②~鍵を握っているのはエアロゾルと宇宙線~
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